私にとって川島よしおは『グルームパーティー』を描いていた人という印象が強く、ちょっと癖のある絵や露骨な割にあんまりいやらしく感じない下ネタ、シュールなねたが合わさって、他のどこにもない独特な印象を醸し出していました。私が『グルームパーティ』を読んでいたのは、単行本ではなく職場に置き去りにされた共有雑誌なので、今遡って読むことはできないのですが、機会があるならまた読んでみたいものだと思っていて、それはつまり面白かったといっています。さて、そんな私が今読んでいる川島よしおものといえば『PEACH!!』、部活で温泉旅館をやっている女子高生の漫画ですが、これでは下ネタを封印しているから、ちょっとあたりが違います。対して今回とりあげる『くじごじ』、これは下ネタ全開、実にらしい仕上がりとなっております。
しかし、下ネタ全開でもあんまりいやらしく感じないというのは、この漫画においても同様で、割と露骨というかあからさまなものも多いというのに、絵柄のためなのか、それともエロかつナンセンスだからなのか、いやらしさがない。湿っぽく見せて、からっとしてる。そうしたところに私はこの人のらしさを感じます。舞台は丸の内のオフィス街、メインを張るのは一癖も二癖もあるOLたちで、しかしそうしたOLの筆頭格、OL課長花田の正体が46歳の冴えない中年男というのはなんだかすごいな。しかも変装でもなく女装でもなく、変身だというのがナンセンス極まるところで、花田は女性となった自分の体に欲情し、興奮し、しかし実際はおっさんに過ぎないという現実に打ちひしがれ、それがもう侘びしくも悲しい。おかしくも切ない。ほんと、この感情はなんだろう。
『くじごじ』を読んでみて、一番気に入ったのがOL課長で、しかしそれが本当はおっさんという悲哀。こうしたネタに、目に見えるものとその実質の差ってなんだろうなんて思ったのです。人間は見た目じゃないだなんて人は時々口にするけど、しかし美しいOLと思って好きになったら、実はおっさんでした。あり得ないことです。あり得ないことですが、もしこういうことがあり得るとしたら、私は実際どうするのでしょう。花田キヨテルよろしく幻滅とともに嘔吐するのか、はたして、はたして!? まあ、こんなこと普通は考えないものだと思いますが、けれど愛に一貫性を求めるならば、そして誠実なふりをするならば、46歳花田キヨテルをも愛せるといわねばならんのでしょう。 — ごめん、無理。
この人の描く下ネタは、男の女性に対する幻想をあからさまに口にしつつ、それが幻想に過ぎないということもあからさまにするという、そういうところが味になっているように思います。OL課長花田のネタなんかもそうで、若く色っぽい女の体に興奮するのは実際だけど、それが幻想なら実体に対しては幻滅するしかないんね。この人のネタは、そうした幻想がはげ落ちるかどうかという、ぎりぎりあたりをつくから、ああ、そうだそうだと納得させられるし、ああそうだそうなんだよねと笑ってしまうのだと思うのですね。幻想にすぎないことを知りつつも、それが晴れてしまうことは望まない。そうした暗黙の諒解ごとを根っこに持って、多面多様なネタの展開をしてくれる、その展開のやりようが実にうまいと思います。
ところで、この漫画に出てきたブラのホックの留め方外し方ですが、私が習ったやり方は、ストラップをかけてから背側で留めるではなく、胸側で留めて背に回し、最後にストラップをかけるです。手を背に回して留めるというのはやりにくく思うんですが、特に私みたいに体がかたかったりするとこのやり方きついんですが、一般的にはどちらが主流なんでしょうね。
なおフロントホックは直角でスライドさせて留めてからまっすぐ伸ばすが正解です。以前、わからないとおっしゃっていた方、どうぞ参考になさってください。
- 川島よしお『くじごじ』(ジェッツコミックス) 東京:白泉社,2004年。
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