2008年6月11日水曜日

妹本

 曙はるとむんこの同人誌が商業出版されました。その名も『妹本』。兄のある妹の話であるのですが、読んでみて思ったというのが、こりゃあ『妹本』ってより『兄本』だあなあっていうものでした。いやさ、だってね、この漫画は妹の視線で兄を見ている。特にそれはむんこの側『○○コンプレックス』、『ぴたんと』に顕著だったと思うのですが、それは著者が女性だからか、あるいは実際に妹であるのか、それとも読んでいる私が弟だから、どうしても下の子目線で見てしまうのか。この本には、年の離れた妹にめろめろにされていく兄(曙はる『fairy land』)や妹を見守る優しい兄(むんこ『○○コンプレックス』)、そして大切は大切なんだろうけど、ちょっと意地悪、粗雑に妹を扱って面白がっている兄(むんこ『ぴたんと』)が出てきます。ああ、私にとっての兄観とはこの一番最後のやつだ。なんか兄貴って、変に下に威張ってて、家来扱いするというか、そんなとこありますよね。まあ、なんかあったら守ってやるぜ、ってことなんかも知れませんが、けど実は私、そういう兄タイプってどうもそりが合わないみたいなんです。

けど、じゃあ、自問自答、なぜ弟を下僕扱いする姉タイプは大丈夫なんだろう……。うう、多分それは、俺のものは俺のもの、お前のものも俺のもの的な傾向が少ないからじゃないのかなあと思うのですが、まあ姉の話はどうでもいいや。兄です、兄。じゃないよ。妹でした。

嫌いなものは兄タイプ、なんていってましたが、結構自然体と感じられる『ぴたんと』、面白かったです。むしろ、理想というのでしょうか、そうしたものの感じられる『○○コンプレックス』の理想的の部分、それが自分にはちょいと厳しかったので、『ぴたんと』でだいぶ和らげられた感じです。もちろん、世の中は広いから、妹大好きで、妹の良き理解者で保護者で、というような兄もいるんだろうとは思いますが、それはけれどやっぱり妹の側から見た兄の理想型であって、兄としてはそういう視線、重荷に感じたりはしないんだろうか。だから、そんな重圧なんて存在しない『ぴたんと』の兄、妹をおもちゃにして泣かしちゃうような、そんな兄の方がみていて安心できるみたいです。

さて、『fairy land』もまた兄と妹ものですが、これは兄と妹が19歳差という特殊事情が手伝って、なんせ兄は大人ですから、成人してますから、妹にわずらわしさを感じつつもそのわずらわしく感じる原因に気付き、自分の問題として受け止め、流してしまってからのラブラブ状況。ああ、あり得るかもねえと思うんですね。年の離れた子っていうのはやっぱりかわいいものだと思いますよ。なんのかんのいって私も姪に絵本とか買ってやってるわけです。だから、わからんでもない。それにここの妹はまだ五歳だから、かわいい盛りじゃないですか。うちの姪はまだ二歳だからよくわからないけど。けどまあ、小さな妹にすっかりやられちゃってる兄貴がむしろかわいいなあって感じで、かわいい妹に萌えつつ、実際は兄貴の兄バカっぷりに萌える、そんな仕掛けじゃないのんか。兄貴、いくら妹がかわいいったって、そりゃやりすぎだろー、ってつっこみながら、そんな兄貴をニヤニヤあたたかく眺める。そんな漫画だと思います。

だから、やっぱり『兄本』なのかなあって思うんですね。実際、妹に嫌われたくなくって一生懸命の兄っていうのは、かわいいものなのかも知れません。現実にそんなこといってる兄が存在したら、わあ、勘弁してって思うのかも知れませんけど。姉持ちの意見としては、フィクションに出てくるような弟ラブラブな姉、ああいうの受け付けない、そんな風な勘弁して感がします。ほんと、あんな違和感見せられるくらいなら、妹ラブラブ兄貴の方がずっと萌えると断言します。

  • 曙はる,むんこ『妹本』(まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2008年。

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