2008年6月3日火曜日

そこはぼくらの問題ですから

 近況です。バーコード読み取りのできる携帯電話があるという話題から、バーコードファイター、ヒロインが男と話題が飛んで、そして最後に行き着いたのは『はなマルッ!』というゲームでした。これ、ヒロインのひとりが男ということから物議を醸したというんだそうですね。私はその方面には疎いもので、まったく知らずにいたのですが、しかしその男ヒロインについては絵で知っていました。どこだったか画像掲示板に貼り付けられていたのを見て、こ、これはなんなんだ!? 女の子じゃないのか!? ひとしきり混乱して、結果記憶に焼き付くことになって、そしてやっと出会った! とはいえ、今日は『はなマルッ!』で書くつもりはありません。今日の漫画は『そこはぼくらの問題ですから』であります。

帯にいわく、美形変態 VS 女子高生。この変態という文言が私をしたたかに打ったのですね。なんせ女装美少年に強烈なアトラクション感じてしまっている変態ですから、私は。帯裏表紙側を見れば、なにやら変態に愛される女子高生ヤエコが超絶美形にして変態の六朗と同居する羽目になってしまったとかありまして、加えてドS、幼女趣味ロリコン美少年信奉者ショタコンの表記も。わお、こりゃすごいコンプレックス複合体だな。気に入った。ドSというのは少々気掛かりだけれども、ロリコンとショタコンの複合は非常に興味深い。といったわけで、買ってみたのでした。

やられました。ドSとロリコンとショタコンがそれぞれいるのね……。それに、あれ別にサディスティックとは思わないし、だって自分の欲望を遂げるために刃物で脅すのは嗜虐趣味とは違うよ。ただの自制心のないサイコパスだ。でも、この人はまあ変態といってもいいと思う。レズビアンだからじゃなくて、嗜虐性もってるからでも、フェティシストの嫌いがあるからでもなくて、その欲望を抑え適切に処理できないという点において異常性欲の持ち主といっていいんじゃないかと。じゃああとのロリコン、ショタコンはどうかというと、あれくらいだったら普通ですよね。かわいく着飾った少女が好きな男、金髪の美少年が好きな女、別になんもおかしくない。自らの欲望を満足させるために、他人を踏みにじることに躊躇がないようなソシオパスならともかくですよ、これくらいの傾きなら社会は許容するでしょう。それに、自分の性質を理解し、変態であると自覚したうえで、法に抵触するような可能性を極力排除しようというのなら、むしろ安全じゃないか。

じゃあ、この本において危ないやつとは誰かといえば、ひとつは前述の、自分の欲望にブレーキがついていないやつ。そしてひとつは、相手をいったん変態と認識すれば、ありもしない妄想で現実を覆い隠し、相手の人格を否定しないではおられないやつ。そう、ヒロインです。いくら幼少期からのトラウマがあるとはいえ、思い込みから傷害に及ぶは、自分から提示した補償であるのにあたかも無理矢理やらされているかのようなことをいうは、なにもしていない、なにをしようともしていない人間にありもしない罪を着せようとするは。これほど共感できないヒロインも珍しい。そんな風に思います。

だから、多分このヒロインが変態、おおっときちっと区別しておこう、自身の欲望を抑えられないタイプの人間を引きつけるのは、ひとえに同類だからなんですよ。類は友を呼ぶといいます。この人の、自己中心的で相手をまっすぐ見られないところ、自己中心的なのに自分自身も見つめられないところ、自分の現実、思っていることやあるいはコンプレックスを受け止めることができず、ちょっとしたことで過剰な反応を見せる、そうした要素がアクティブな同類を引きつけてしまうとしか思えず、だからこんな女に関わりを持った六朗さんは不幸だなあと心の底から思います。けれど、どうやら愛というのは不条理、不合理、理不尽にできているらしく、思い違い、勘違い、思い込みから、六朗は、よりにもよってこんなヒロインに惚れてしまうときた。なんでやねん!

でも結局は愛というのは理屈じゃないんだろうなあ。この漫画読んで、本当にそう思いました。私もちょっとはわかるんですよ。昔、人を好きになったことがあって、結局どうともならなかったんだけれど、それどころか、思いもかけない邪魔が入って、介入してきた女ともどもその好きだと思っていた人を切り捨てざるを得なくなって、あん時には荒れました。まわりに当たり散らしたりはしなかったけれど、喪失感やストレスから過食におちいり、その後数年引き摺りました。だから、ちょっとわかるんだと思います。気持ちを持て余してしまうってことや、一度好きになれば相手がどんなであっても、自分の本来の対象とは違っていたとしても、かまわなくなるってことなどなど。まあ、そうした気持ちが純粋な愛とか恋などいうものなのか、それともただの思い込みなのかは知りません。でも、そういう状況にはまってしまうと、人間は自分の気持ちすら制御できなくなるのね。極端から極端、多幸感から不安までの落差をいったりきたりする。そんな気持ちの激しく揺れ動く様子なんかは、この漫画の落ち着きなくばたばたとした表現に、また思った以上に暴力的なギャグ表現によく表れていて、ああ、愛だとか恋だとかは、つくづく一大イベントだと思います。けど、当事者にはそれでいいのかも知れないけど、はた迷惑なもんではありますな。けど、それがどんなにいびつでも、できあがった二人にはそれでいいのです。とりあえず冷めるまでは。

しかし、この変態にトラウマありといって異様にかたくなであったヒロインは、結局は美形の前に敗れ去ったわけだな。と、こんなにヒロインに対していけずな私は、つまりは六朗さんに同情しているからで、だって、彼なにも悪いことしていない。困っているヒロインを助けにいったら割れたガラス瓶で切りつけられて、治るまで世話をするといって押し掛けられた上に、あれこれ難癖つけられて、大切なものも壊されて、でもまあ勘違いから好きになっちゃったんだ、円満解決だよね、ってだからこれは冷めるまでだって! この愛の命は短いよ、などと執拗に言い募る私は、どうやらヤエコに嫉妬しているみたいです。

ろ、六朗さんは、あんたなんかには渡さないんだからねっ!

引用

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