絶版書籍、廃盤商品の復刊復刻を実現させたい! といった思いを抱いたことがあるという人は少なくないと思うんですが、そんな時に力になってくれるのが、いわずと知れたたのみこむ、そして復刊ドットコムであります。本が好きという人なら一度や二度くらいはかかわり合いになったことがあるんじゃないかと思うんですが、思い出の本、漫画をもう一度読みたい。絶版になってるレコードをもう一度手にしたいなど、これらサイトを通じて、そうした欲求を満足させた人も多いと思います。そして私もそうしたうちの一人でありまして、復刊なった書籍を手にしたこともあらば、リリースされる日などこないと思われたアニメのDVD化など、その恩恵にあずかること一度や二度ではありません。こうした経験を持つ人は、これらサイトにひとかたならぬ恩を感じたりしているんじゃないかと思います。けど、私は恩を感じながらも、これらサイトにはあまり立ち寄らないようにしています。というのもですね、魅力的なものが多すぎるんですよ。ああ、懐かしい、また読みたいねと思うようなリクエストを見付けたら、思わず投票してしまいますわね。で、実現した暁には買うわけですよ。また、すでに復刊したものも危険で、ええ、買っちゃうんですね。そうなんです。『バーコードファイター』もそんないつものパターンで購入にいたったもののひとつです。
『バーコードファイター』は、懐かしの玩具バーコードバトラーにタイアップするかたちでコロコロコミック誌上で連載された漫画であります(ミニ四駆漫画とかありましたよね、あんな感じです)。けど、なんで私がこの漫画に興味を示すというんでしょう。そもそも私はバーコードバトラー世代ではないし、それにコロコロコミックを購読していたわけでもない。それ以前の問題としてこの漫画が連載されていた頃って私はすでに高校生、コロコロやボンボンといった小学生対象の漫画雑誌を読むというのは、さすがにありませんでした。なのに、なぜ買ったというんでしょう。
一部有名な話なんですが『バーコードファイター』にはちょっとした逸話があるんです。それはなにかといいますと、ヒロインが男というものなんですが、そう、ブッキング版表紙にばーんっとクローズアップされた黒髪赤ボディスーツの女の子が実は男の子。この事実でもって『バーコードファイター』はバーコードバトラー世代以外にも訴える漫画となっているのです。いや、これ半分本当、というか半分以上本当だと思うんだけど、どうでしょう……。
漫画の基本は、バーコードによりパラメータが決まるというバーコードバトラーの設定を踏襲した、ロボットアクションものです。仮想的にロボットに乗り込んで対戦するという、現実のおもちゃを媒介として、子供たちの想像の中でのごっこを大きく膨らませて見せた漫画です。そういえば『プラモ狂四郎』なんかもそんな感じでしたけど、こと少年向けの漫画においてはこうした形式がよくよく使われるようですね。
以上のような関係で、当初には現実の玩具バーコードバトラーにまつわるTipsも多く掲載されていて、どういうバーコードが強いのか、見分け方などがヒロインさくらによって解説されたりしまして、なんでなんでしょうね、こういう解説があるとふんふんと素直に読んでしまったりして、バーコードバトラーもないのに? そもそもバーコードバトラー目当てで買ったわけでもないのに? いや、しゃあないんですよ。攻略情報があると、攻略対象がなくても読んでしまうのは、すべての少年だった人のさがであるんです(本当?)。でも、こういった攻略情報は徐々に背後に押しやられていって、かわりに現れてくるのは世界人類を洗脳し支配下に置こうという敵であったりしまして、こういうのもまた少年向け漫画の王道ですかね。ファミコンものの漫画でも、ファミコンで世界を征服するんだ(どうやって?)っていう組織が出てきたりする。こういう、大風呂敷といえば大風呂敷、雄大というか誇大というか、そういう展開を臆面もなくやれるのは少年漫画のいいところなんじゃないかと思います。いやね、読んでみると結構面白いですよ。リアリティとかなんだとか、こざかしいごちゃごちゃを捨て去ってしまえば、漫画の持つ荒唐無稽の面白さがダイレクトに伝わってくるようで、正直こういう読み方を私が今またするとは、自分自身意外でありました。
以上。これからは余談ですので、読む必要はございません。
で、お目当ての女装少年であるわけですが、有栖川さくら、いくらお目当てといっても、ヒロインが男というだけで漫画を買うほど私も酔狂ではありません。じゃあなんで買ったのかというと、それはこの作者にあります。小野敏洋という人は別の名前でも活動されていて、その名は上連雀三平、ある方面で非常な高名を博している漫画家です。ある方面というのはエロ漫画なんですけどね、なんというか独特のジャンルを形成している人で、まあなんというか、女装少年とかがオンパレードな作風なんです。で、恐ろしいことに私その一冊を持っているのです。
昔、図書館勤めしていた時に、新刊の発売日を案内する冊子なんかを貰えたんですが、そいつを頭っから最後まで読むのを月一の楽しみにしていたんですが、そうしたら成年向けってタイトルが振るっているのが多くてですね、同時多発テロが問題になった時期に『同時多発エロ』なんてのがあったりして(Amazonで調べたら2冊も出てきた! 1冊目、2冊目)、最低だ、その上不謹慎、よくもまあこんなタイトルを思いついたもんだみたいなのがとにかくずらずらと並んでいるのが圧巻。それで友人と一緒に、その月に出るものの中で一番馬鹿なタイトルを選出して遊んでいたんです。その時に出会ったのが先ほどの上連雀作品、もちろん馬鹿タイトル of the Month、内容がわかんないよって、いったいどんななんだって、タイトルだけでこちらの理解の範疇を超えていますからね、もうダントツでありましたよ。
悪いことにですね、当時利用していた書店に、この漫画が置いてあったんですよ。で、買っちゃったわけですよ、それで私は内容のあまりの飛びっぷりにノックダウンされて、それで件の友人にこれを見せて、欲しかったあげるよといったら、その人もノックダウンされたようで、いらないです — 、以上のような経緯で私のうちに上連雀作品があったというわけでした。
話に聞きますと、『バーコードファイター』の有栖川さくらがこれら作品にも出ているんだそうですね。なので、引っ張り出してきて確認してみました。わお、先生やってるんだ。ええ、確かに関わっていました。この一点を確認できただけでも満足です。
蛇足
久しぶりに見た上連雀作品、恐ろしいことに、以前ほどに異常さを感じなくなっていて、というかむしろ感動作? 知らないうちに私の受容の幅は広がっている模様です。確かに、『バーコードファイター』読んで、ヒロインが男ということを知ったうえで最後まで読んで、それでもやっぱりヒロインは可愛いわけで、実際現実問題として、こうした人が身近にあったとしても普通に受容するだろうなと思ってたりするから、まあ確かに私は受け入れ幅が広がっているんでしょう。いい傾向? だと思います。
- 小野敏洋『バーコードファイター』上 東京:ブッキング,2004年。
- 小野敏洋『バーコードファイター』下 東京:ブッキング,2004年。
- 小野敏洋『バーコードファイター』第1巻 (てんとう虫コミックス) 東京:小学館,1992年。
- 小野敏洋『バーコードファイター』第2巻 (てんとう虫コミックス) 東京:小学館,1993年。
- 小野敏洋『バーコードファイター』第3巻 (てんとう虫コミックス) 東京:小学館,1993年。
- 小野敏洋『バーコードファイター』第4巻 (てんとう虫コミックス) 東京:小学館,1994年。
- 小野敏洋『バーコードファイター』第5巻 (てんとう虫コミックス) 東京:小学館,1994年。
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