2007年6月12日火曜日

ことはの王子様

  web拍手見てたらですね、「ことは〜」はお買いにならなかったのでしょうかとの問い合わせがありまして、このことは〜というのは、このBlogの読者さんには説明せずともおわかりだろうと思うのですが、渡辺純子さんの『ことはの王子様』でありますね。それも、つい先月の末に発売された第2巻をさしていることも明白でしょう。ええ、ええ、買っておりますよ。買わないわけがないじゃありませんか。けど、じゃあ、なんで記事として取り上げなかったのか。これにはちょっとだけ理由があります。

こととねお試しBlogには取り上げる基準ないしは優先順位というのがありまして、それはどんなかといいますと、

  1. 好きなもの
  2. 語りたいもの
  3. 今、自分の中でホットなもの
  4. 今の時期を逃すと取り上げる機会のなさそうなもの
  5. これまでに取り上げられていないもの

だいたいこんな感じかと思います。で、先月末に取り上げましたまんがタイムKRコミックス四タイトルに関してはどういう基準が適用されたかといいますと、だいたいこんな感じ:

雅さんちの戦闘事情
第1巻であり新鮮だった
最初はともかく今は結構好き
ビジュアル探偵明智クン!!
最終巻でありこれを逃すともう機会がなさそう
意外にもこれまで取り上げられていなかった
ワンダフルデイズ
今、自分の中では結構ホットな漫画
その上、意外にもこれまで取り上げられていなかった
ひめくらす
今、この作家は旬だと思う
さらに加えて、意外にもこれまで取り上げられていなかった

そうなんですよ。『ことはの王子様』は5月発売のKRコミックスにおいて唯一過去に取り上げたことのある漫画だったのです。いや、そうじゃないよ。『ROM-レス。』も取り上げてたわ。もちろんこの本も買ってます。しかし、今回完結の『ROM-レス。』を取り上げなかったのは、『みなむーん』の時点で四コマでこんなに引っ張るのもどうだろうと思ったからで、一応ひとつのカテゴリに偏りすぎないように気は使ってるんですよ。そうは見えないとは思いますし、そもそももう手遅れという感じもするんですが。

というわけで、『ことはの王子様』第2巻。第2巻読んでから第1巻読み返すと、そのあまりの雰囲気の違いに驚かされるというか、なんというか割合みんなおとなしくてですね、いやちとせは最初から変態ですけど。それにせのお様は時折にまゆかさんのことを思い出してみたりして、その度にことはの胸中はざわめくのでありました。なんていうような展開もあったりして、そしてそれが基調のカラーになっていたんだなあと思うんです。ですが、今やせのお様とことはの仲はほぼまあ確定ですから、そうした思いのすれ違いというような見せ方はなくなってですね、かわりにメイド連中の暴走ぶりを楽しむという、まあ主にちとせが暴れるんですが、そういう感じです。でも、ちとせのこういう役割が確定するまでは、執事の小清水さんが無茶な案件を持ち込むことが多くてですね、けれど最近、小清水さんってあんまり出てませんよね。それこそ、その他大勢の背景レベルにまで後退してしまって、栄枯盛衰、黄色い悲鳴をあげる役目が関の山という侘びしさです。

漫画の雰囲気が結構変わったというのには、やっぱりせのお様のまゆか熱がお冷めになったことが大きいのではないかと思います。もともとは恋心のすれ違い、ことはの気になるご主人様はことはではない別の人を思っていて、けれどそれでもせのお様は意識しないまでもことはを特別に思っていることは明らかで。こういう、ぱっとは燃え上がらない、穏やかに切ない恋心がドラマの軸だったんですよね。けれど、せのお様は今ではまゆかさんを思い出すことはなくなって、いわば中心となる軸が失われてしまったわけで、そしてその後新たな軸として見出されたのが、暴走するメイドたち、まあ大抵はちとせなんですが、マニアックな趣向でもって状況のかき回される様がメインになったというのでしょう。

けど、それでも当初の軸を継承しているところはあって、例えばそれはせのお様の従姉である秋緒と秋緒付のメイドであるリナなんだろうと思います。秋緒はせのお様を思っていて、しかしリナは秋緒を思っていて、もちろん秋緒はリナを嫌ってなどはいない。この関係は当初のまゆか、せのお、ことはのそれに同じです。けれど、彼女らはかなりメインよりのキャラクターであるけれども、それでも完全にメインにはなり切れないという微妙な位置で、やっぱりメインはせのお様とことはなんですね。だからリナの報われない思いの行方は、ことはの思いに比べ深く取り上げられることは少なく、だからこうした穏やかにして切ない胸中の嵐という要素は第2巻あたりではずいぶん薄れてしまっています。

今の状況は、微妙に迷走しているのかも知れません。第二の軸であった暴走メイドから、新たな軸に移行しようとしている時期なのかも知れません。今はまだその方向は見えませんが、この時期を超えたら新たな着地地点も見つかるのではないかな、なんて私は思っています。私自身、なにを書こうにも、書こうとするもの、いいたいことが見つからないなんてことはありますが、けれどそういう時期を抜ければ、また先に進めるものですから。

というようなわけで、そろそろ原点回帰的な動きがあるのではないかと思っています。

  • 渡辺純子『ことはの王子様』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2006年。
  • 渡辺純子『ことはの王子様』第2巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2007年。
  • 以下続刊

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