2006年12月14日木曜日

まゆかのダーリン

   こうして1から3巻の表紙が居並ぶと、なかなかに壮観でありますね。『まゆかのダーリン』は、今や渡辺純子という作家の代表作になったといっても過言ではありません。小さな姪っ子まゆかちゃんのラブラブ攻勢に翻弄される高校生の嬉し恥ずかし右往左往を見て楽しむ漫画だったはずが、いつしかまゆかとりょうおにいちゃんのラブラブ生活ぶりを生暖かく見守る漫画になってしまって久しく、そのラブラブっぷりはというとクラスメイトの谷本くんをしてわかっててやってるだろ…と突っ込まずにおられないほど。そういえば、クラスメイトといえば新田さんという人がいましたね。新田さん、当初わりと普通だったのに、今やずいぶん変わっちまったなあ……。

新田さんの変貌は、まゆかとりょうの関係の変化に伴ってのものなんでしょうね。第1巻時点では、ふたりのことを面白がりはしてもそんなに過激なチャレンジはしていなかった彼女です。ですが第3巻ともなると、あなたいったいどうしたの!? っていうくらいにアグレッシブです。攻める攻める。りょうの母(まゆかの祖母)と結託し、多角的に情報を入手しカメラ片手に二人に迫る! その勢い、その情熱はもはやストーカーあるいは怪人の域に達しているのではないかというほどです。

これ、まゆかに対しりょうが戸惑ってみせるという当初の図式が崩れたための措置なんでしょうね。初期こそは、新田さんも普通にりょうの戸惑いを面白がっている風であっただけなのに、ふたりの仲が落ち着き、ラブラブ状態に安定していくに従って過激さを増した。放っておけばそのまま落ち着いていしまいかねない状況に果敢に飛び込み、かき回し、拡大し、確定し、あからさまにしてしまうことで面白みを出す、そういう機能を担うキャラクターに育ってしまったということなんでしょう(そう考えると不敏な娘だな)。

おそらく2巻あたりでそうした状況を動かす役割を担ったのは、まゆかに恋慕するせのお様であったのでしょう。ですがせのお様は『ことはの王子様』にお移りあそばして『まゆかのダーリン』からは姿を消してしまわれた。そのため新たな動因となる人が求められて、結果的にその任についたのが新田さんだった。そういえば、『ことはの王子様』にも似たような役割を持った人がいましたね。そう、ちとせさんですな。そのかき回し方こそ違いますが、方や新田さんがまゆか・りょうのマニアであらば、ちとせさんはメイド分百合分というマニア向けネタの実践者というべきで、ですがこの二人はともすれば落ち着いてしまいかねない主役ふたりを取り巻く状況に波乱を投げ込み、弾みをつけさせる台風の目のような重要な位置にあるのです。

というわけで、『まゆかのダーリン』で一番好きなのは新田さんだったりします。いやあ、あのアグレッシブぶりは最高です。あるいは大人になれば大きくなると思ったら大間違いと力説する、そういうところがよいのかも知れません。

蛇足

上述↑。

  • 渡辺純子『まゆかのダーリン』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2005年。
  • 渡辺純子『まゆかのダーリン』第2巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2005年。
  • 渡辺純子『まゆかのダーリン』第3巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2006年。
  • 以下続刊

引用

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