2006年12月5日火曜日

姉妹の方程式

 私は野々原ちきが好きです。儚さと繊細、細やかな絵のいとおしさにいけずさが加わって、このギャップが実にいい感じです。実際、この人の漫画からは実にいけずな感じがしましてね、だからというわけでもないと思うのですが、私はとても好き。いけずといっても、ただただ意地悪だったりするとかだったらこんなに好きになったりはしないと思うんです。登場人物に対する愛があって、けどその裏腹にいけずがあるという、一見矛盾に思える感情や行動がしみるのだと思っています。家族や友人、気の置けない間になってはじめて見せるような意地悪さってありますよね。もちろん嫌って意地悪するんじゃない。それもまた愛情表現なんです。そういう微妙な愛情の距離感がうまく表現されているのがこの人の漫画の魅力であると思います。

そんなわけで、『姉妹の方程式』もついに第3巻ですね。ええと、私、以前こんなこといってましたっけ。十子ちゃんが好きです。十子さんというのは第3巻の表紙の娘さんで、さっぱりもの、しっかりもの、素敵! てなわけで、私はもうこの表紙だけで満足なのじゃよー、と思っていたら、単行本書き下ろしの漫画が! 漫画が! 中学時分の、まだ髪も少し長くセーラー服着ていた時分の十子さんが! あーもーどーしたらえーねん! と、第3巻では記事の内容がまともにならないことがわかっていたので、書こうかどうか迷ったんです。でも書きました。書かずにはおられなかった。

『姉妹の方程式』のよいところというのは、シンプル、スタンダードであるところだと思っています。奇をてらわず、設定の特異さに逃げることなく、台詞に頼りすぎるでなく、また絵ばかりに偏るでもなく、話もクールであったりドライであったり、でもどこかに必ず姉妹の絆、仲のよさを思わせるコマも挿入されて、このバランスのよさというのは随一です。ナンセンスに常識を拮抗させて、コンパクトながらも毎回をひとつのテーマでまとめるというそつのなさ。人によったら物足りないと思うんでしょうね。けど、私にはそのこぢんまりとした世界がたまらなくいとおしく感じられて、だから好き。地味で損しているタイプの漫画だなあと思いながらも、心ある漫画読みならこのよさに気付くはずと信じています。

蛇足

十子さんが好きです、てのはまあいいとして、第3巻では脱げ!足を開け!!てのがどえらく面白かった。とにかく、本誌連載時から気に入ってる話であります。

  • 野々原ちき『姉妹の方程式』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2004年。
  • 野々原ちき『姉妹の方程式』第2巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2005年。
  • 野々原ちき『姉妹の方程式』第3巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2006年。
  • 以下続刊

引用

0 件のコメント: