2006年12月12日火曜日

正義警官モンジュ

   なんかポップな感じの表紙に興味を引かれた第3巻。その店ではたまたま中身を確認できたので、ちょろっと読んでみたら割りと面白そうな感じ。ちょっと揃えて読んでみよっかなあと思ったら、1巻から揃えておいてる店がなくって — 、なかなか買えませんでした。『百合星人ナオコサン』買いにいった日、その本屋ならきっとある、揃ってると踏んだのですが、ドンピシャ、しっかり既刊揃えていましたね。なので一緒に買ってきて、その日は『ナオコサン』読んで『モンジュ』読んで、そういうだらっとしてなんだか仕合せな感じの午後を過ごしたのでした。

寝っ転がって、暗くなりゆく夕刻でした。私は気がついたら涙を流していて、驚きましたよ。必要以上に涙もろくなってるなあ。慟哭するとか嗚咽を漏らすとか、そういうことはまったくなく、本当に普通どおりに漫画を読んでいるつもりだったんですが、涙が次から次に出てきて、いったいこりゃあなんなんでしょう。実際この漫画には驚かされます。ロボット警官もの、ギャグの要素も多い漫画で、泣かそう泣かそうとするようなあざとさは感じられないんだけど、ここというポイントを突いて情に働き掛けるコマを台詞を投げ込んでくる。これがもうストライクですよ。読んでいる私は、少なくとも頭は筋を台詞を追っていて、感動に意識を振り向ける気なんてないというのに、心がしっかり反応している。気付いたら涙が流れている。いや、いい漫画だなと思います。

ロボがいいよ。変に人間くさくって、もうそれはあり得ないほどに人間くさくって、けどそれがいいんです。同僚の山岸巡査とモンジュ、なんか変な友情というか、あるいは兄弟みたいというか、そういう不思議な繋がりというのが感じられて、欠陥もいっぱいあるんだけど、ここというときに退かない。真っ向からおまえを受け止めてやるというその姿勢がいい。青春漫画かすわ浪花節か、ぐぐっと堪えますね。気がついたら蛙だか兎だかわからんような顔つきしてるモンジュがかわいくってしかたがなくなっている。ああ、もうしょうがねえなあ、ほらほら、なんて感じでほっとけないようなそんなロボなんです。

そんな、そんなかわいいロボットが自分自身でも制御できないような部分を抱え持て余しているという設定が、むやみに切なくていやですね。本当に人間くさいじゃありませんか。だって私たち人もですよ、平時には理性やなんかで抑えているけれど、時に暴発して抑えの利かなくなるようなことってあるでしょう。モンジュのそれは私ら人間の感情とは違うのだけれども、けど彼のああした部分は人間の不完全さ、脆さ、あやうさを彷彿とさせて、すごく胸に迫る。モンジュは自分自身を悩み、迷い、まわりの人間たちはそんなモンジュを支え、力になろうとする。ここにモンジュはロボットと描かれているけれども、この根本にある心情というのは人間同士のそれとなんら変わるところがありません。けど、もしこれを人間同士のドラマとして描けば、ここまで鮮烈に現れ出たでしょうか。私は、こうした要素をあえてロボットに担わせることで、しかもあまりにも危険すぎるかたちでもって背負わせることで、より深く、より強く打ち出すことに成功していると思うのです。

この漫画、モンジュの設定はあまりに不自然で、正直あり得ない、突っ込みどころいっぱいで、そもそも警察の所属であるモンジュが兵器とされているのはいくらなんでもいけません(だって日本には兵器は存在しないのよ、軍隊ないから)。けど、そんなところ、私にはまったく気になりません。ギャグの要素が強いから? 考証を必要とするようなリアルな話じゃないから? そうかも知れません。けど、きっとそうではないのです。私はこの話を読んで、なによりモンジュとモンジュを取り巻く人たちの間に流れる感情に解け落ちてしまって、その途端、設定やらなんやらいう瑣末なことはどうでもよくなったのです。よく練られた話、充分な説得力を備えた漫画表現、そしてリアルを超えてアクチュアルな情動。この漫画はいい漫画です。出会えてよかった。これだから漫画はやめられないと思った。ええ、本当にいい漫画です。

蛇足

神谷さんについて一言も触れることができませんでした。だって、モンジュの方がずっとかわいいんだから仕方ありません。

  • 宮下裕樹『正義警官モンジュ』第1巻 (サンデーGXコミックス) 東京:小学館,2005年。
  • 宮下裕樹『正義警官モンジュ』第2巻 (サンデーGXコミックス) 東京:小学館,2006年。
  • 宮下裕樹『正義警官モンジュ』第3巻 (サンデーGXコミックス) 東京:小学館,2006年。
  • 以下続刊

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