まんがタイムKRコミックス買いに書店に行ったらば、松山花子の新刊を発見。タイトルこそは『普通の人々』とあるけれど、表紙を見るかぎりあんまり普通とは思えません。こりゃ、きっとこの人特有の皮肉やなんかが満載された漫画なんだろうなと思って、即購入を決定。私、この人独特のシニカルなギャグが好きなのですよ。男尊女卑、マッチョに対するからかいがあったかと思えば、返す刀でフェミニズムにも一太刀浴びせるというような、どちらの価値にも足をとらわれない絶妙の立ち位置。理屈としておかしい事物、傍から見てこっけいなプライドやなんかを片っ端から笑っていく、そんな松山花子の漫画を面白いと思うようなのが私です。
で、実際に読んでみた『普通の人々』、マイナーな人ばかりで構成される社会に投げ込まれた普通標準大衆迎合的主人公一家が、その普通であるということをもって責められ追われ苦しめられるという漫画、なのですが、まあ基本ギャグ漫画ですから、そんなに責め方が苛酷というようなことはありません。
この漫画読んで、私は、そう、そうなんだよ、って思った。なんで普通の連中は、自分が多数派に属しているということだけを理由に、少数派を等閑視できるんだろうって、いつも思っている疑問に対するひとつの答えがここにあると思ったのです。まあ、マイナー同士が身を寄せあえば、そこに生まれるのはメジャーへの怨みつらみ鬱憤であって、そういう意味では私はこの漫画でもって少しばかり溜飲を下げたといってもいい。そう、この漫画を読んで面白いと思えるのは、これまで少数派に属してきた人なんじゃないかと思います。逆に、多数派から見たら一体なにがこんなにまでいわれなければならないのか、わからないんじゃないかと思います。
でも、このマイナー集団である地方都市において多数派少数派が逆転したことが、また問題を面白くしているんじゃないかなと思うのです。一般社会における多数派が少数派に追いやられて、そうなれば今度は結託した少数者による多数派疎外がはじまって、しかもその少数者のマイナー志向があんまりに極端なもんだから、ほのかに少数者の自分のこだわりに引っ込みたがるような頑なさなんかも揶揄されているようで、面白いなと。結局は多数だ少数だじゃなくて、人それぞれの違いを認識してやっていくのがいいんですね、とそんな感じだったのが松山花子の良心みたいでいい落とし所だったと思ったのでした。
けど、この漫画、ちょっと理詰めに走りすぎているようなところがあって、そこが残念なところだと思います。いつも読んでる四コマなんかでもそういう嫌いはあるのですが、四コマではそんなに理屈をがっつり展開するだけの余地がないから、いい具合にとどまっていたのかなとそんな感想も持ちました。ちょっと台詞がね、読んでて素直に流れないんです。これがいつもの四コマの程度ならアクセントとして効果的なんでしょうが、ちょっと多すぎてくだくだしかった。だから、この漫画、松山花子を知らない人には勧めにくい漫画だと思います。松山花子が好きな人でも、受け付けにくいと感じる人も多いんじゃないかと思うくらいでしたから。
- 松山花子『普通の人々』(バーズコミックス) 東京:幻冬舎,2006年。
0 件のコメント:
コメントを投稿