2008年6月18日水曜日

キモチとキッカケ

 昨日取り上げました『純愛ストリップ』。これは、蔵書構成を考えて、今まで持っていない類いの本を、つまりバランスよい書棚を作るべく購入されたのでありますが、その二年前に購入された『キモチとキッカケ』、これはTLと呼ばれるものらしいのですが、これに関してはまったくの表紙買いでありました。私にとっては初のTLであったわけですが、男性向けのものとはまた違う感触に、け、結構いいじゃんかと思ったものです。購入は2003年ですね。実は、この時ちょっとこのジャンルにはまろうかと思ったんですが、なにしろ今ほどインターネットが繁盛している時代じゃなかったから、情報とかなかなか入手できなくてですね、それで留保されたのです。けれど、これが強い印象を残したことは事実です。この時のTL体験がなければ、私は少コミ系に手を出そうとは思わなかったことでしょう。それくらいに、決定的でありました。

(画像は雪村理子『あなたが特別!』祥伝社)

なにがよかったかといわれると、それは結局は全体に感じられる雰囲気なのかなと思うのですが、少女漫画タッチの繊細な絵。綺麗で華やかで、そしてあんまり肉感的でない — 、そこが私には重要でありました。これはTLで、だから当然セックスも描かれるのでありますが、さすがにそこは見せ場であるだけ、しっかりと、少女コミックよりも突っ込んだ描写があって、肉感的でないとは口が裂けてもいえません。でも、それでも男性向けのものとは違うんですね。一番の違いはなんなんだろう。それは、例えば行為の最中、男性がリードすることがあったとしても、基本身勝手ではないというそこが大きいのかと。そう考えると、強引に迫る男の多いと感じた少コミ『純愛ストリップ』より、こちら、TL『キモチとキッカケ』の方がいいと感じるのも自然だったように思います。

男が強引な理由は、和久井香菜子がマイコミジャーナルに連載している少女漫画に学ぶ[ヲトメ心とレンアイ学](これがまあめちゃくちゃ面白い、本になったら絶対買う)によれば、どうも女がセックスに甘んじるには、言い訳が必要だかららしい。強引に迫られたから、そしてそこに一途な愛があったから、このふたつがあるとベターらしい。この二点に関しては『純愛ストリップ』は完璧でした。けど私は、このファンタジーの理由については納得したけれど、じゃあそれじゃあ女の方はどうなのよ。取り柄らしいものもなにもなくとも、いい男が、それこそ誘蛾灯にひかれる夜の蝶(蛾ですな)のように寄ってきて、強引に求めて — 。このプロットに乗り切れなかったのは、ひとえに私が男で、いうならば迫る側で、迫られるものの心理にのっかっていなかったからだと思うんですね。やっぱり女性側にも、これという魅力が欲しい。ただ眼鏡でボブでかわいいというだけでなく、他の誰でもないこの娘がよいのだという、納得できるポイントが欲しかったんだと思うのですね。

『キモチとキッカケ』ではそのへんがクリアされていて、付き合っている男に対し、不安から策略を仕掛けるヒロインですから、むしろ強引さを持って迫るのはヒロインの方、けれど二人の気持ちが同じということがわかればまったく違った描かれ方になって、ああこれはまた違った意味での「セックスがこんなにいいものだったらいいのになあ」という願望なのかなと、今の私ならわかります。ちょっと乙女チックなんだけれども、ただやるだけではなくて、気持ちの繋がるセックスをしたいという、そういう願望が私にもあるってことなんでしょう。

けど、『キモチとキッカケ』に収録の全編がそういう願望を満足させてくれるわけではなくて、やっぱりこういうのを描こうとすれば紙数が必要なんでしょう、読み切りものとなると割と強引さが出て、やっぱりちょっと物足りない。そんなわけで私の好みは、長くってもいいから、気持ち重視であるようです。ヒロインの揺れる気持ちがしっかり出ていて、ただ待つだけでないしゃんとした姿勢が見えて、そして愛し愛される理由が欲しい。男女双方の、この人でないといやだという気持ちが、読み手である私にも伝わってきて欲しいのです。そんなことをいっている私は、TLを経由した後、BL/MLに傾きを見せていくのでありますが、けどTLもまた読んでみたい。おすすめがあれば知りたいです。

引用

0 件のコメント: