2009年3月8日日曜日

はっぴぃママレード。

 私はこの漫画を見るときにはいつでもこんなことを思うのです。日本では確かに女子高生であるということは価値であるのかも知れないけれど、少なくとも私にとっては、36歳主婦であるときの相羽さなえの方がずっと魅力的です。いや、眼鏡だからじゃないよ。エプロンだからでもないよ。あの微妙に地味で、微妙にもっさりしたビジュアルが好きなんです。けど本人はじめ、さなえの夫丈史なんかも女子高生さなえの方が好みであるみたいで — 、ここでも私は少数派の模様です。でもいいんです。マイナーでも日陰者でも、強く生きていくって決めたんだ。などと馬鹿なこと思いながら読んでいる『はっぴぃママレード。』。主婦モード多めの回がくると、地味に喜びます。

けれど、メインはやっぱり女子高生モード。だって、まあ、この人から女子高生という属性を取っ払ってしまったら、ただの可愛い主婦になってしまいます。あくまでも相羽さなえ36歳主婦が、制服着込んで女子高生として高校生活を送っているという、その様子こそが漫画の肝で、そしてちょっと36歳とは思われない若作り — 、魅惑の女子高生そのもののさなえが振り回す息子武史とその周辺。べたにして王道のどたばた学園&ファミリーコメディ。学園ものでありかつ母子ものでもあるという、両要素がオーバーラップするところに、この漫画の味があるのです。

さなえに振り回される人、その筆頭はなんといっても息子武史であるのでしょうが、決して優秀な学生とはいえないさなえに対し、保護者のように振る舞う武史。テストの結果がまずければ勉強を見る、暴走するようであればつっこみを入れて落ち着かせる。あれこれ心配しつつ、世話を焼きつつ、けれど結局はつきあいのいい、理想の息子、そんなところに落ち着いていて、その仲良い母子の姿は見ていてほのぼのとさせるところがあります。私なんかも、わりと母子仲がいいんですが、それでもさなえ武史のようにはいきません。武史の、あきらかにマザコンではなく、けれど母によく付き合ってくれるというところなどは、世のお母様がたの理想なのではないかなあ。

そう考えると、武史に思いを寄せる茉莉花なども、理想的息子の嫁として捉えられるのか? いやいや、そう簡単にはいきますまい。

けれど、この漫画においては、武史、茉莉花の仲がうまくいって、茉莉花の兄が泣いて、という結末が非常にしっくりといきそうな、そんな雰囲気をかもし出していて、クラスメイトであるさなえと茉莉花。ふたりの仲はよく、そしてさなえはあくまでも惚れた男の母。制服さなえだと自然に、けれどエプロンさなえだと緊張して、こうした見た目の変化に微妙に影響される関係というのもまた面白さの一要素です。見た目に惑わされ、勘違いとともに妄想は暴走する。けれどそうした茉莉花は、きっとさなえとうまくやっていけるだろうなと思う。そうした、息子とその嫁ともいうべき関係も内包している漫画です。

そういえば、あとがきにおいて描かれなかったさなえ、そして武史の表情を見るに、ああ世の母というものは、息子に惚れられたいとさえ思うものなのかも知れない、そんなこと思いました。もちろんそれは、息子にとっての理想の女性像、それが私ならどんなにか素敵だろう、そうした願望であって、それ以上ではないとわかっているのですが、けれどそうした願望のあるがために息子の嫁には嫉妬ないまぜの厳しい視線を送る。というのが相場であれば、茉莉花という存在は、その相場どおりの敵対感情を回避しうる、ひとつの希望であるのかも知れません。

などと、まあ、馬鹿なことばかり考えながら読んでます。

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