2009年3月13日金曜日

魔法少女いすずさんフルスロットル

 コミックエール!』は好きな雑誌であっただけに、終わってしまうというのは残念です。怖いもの見たさで買った第1号は、想像していたほどに奇天烈でもなければ突飛でもなく、少々落ち着かないながらも、なかなかによい雰囲気をかもし出していました。それは、掲載されている漫画、それが実に私に向いていたからであろうと思います。そんな中に、『魔法少女いすずさんフルスロットル』もあったのでした。強い印象を残すようなことはなかったように思うのだけれど、単行本になって、読み返してみれば、確かに記憶に残るエピソード。派手ではない、ぎらぎらしていない、けどちょっと狙ってるな、そんなところもあって、けど全般にはしっとりとして穏かな印象を残す漫画です。

狙っているところ、それはまずヒロインに接近してくる美少女、それが魔法少女であるということ。彼女はまた犬耳で、犬しっぽで、スク水だったり、ぱんつはいてなかったり、メイドだったり、だぶだぶだったり、ええと、あとはなんだ。列挙してみると結構あるもんですね。それこそ、毎回、なにかしらのギミックは仕込まれているようで、けれど私にはわからないネタも多かったみたいで、私より最近の漫画やアニメに詳しい人なら、もっと楽しめるところは多いかも、そう思うようなところもちょこちょこありました。

けれど、そうした要素を抜きにしても楽しいと思える漫画でした。主要登場人物は女性ばかりで、魔法少女であるいすずさんの可愛さにうっとりと見惚れてしまうようなヒロインは通称メガネちゃん。つうか、名前わかんないぞ。それもまたネタなのか? ともあれ、平々凡々を旨とする、そんなヒロインは、当初、非常識な存在である魔法少女に距離を置こうとしていたのだけど、だんだんにほだされて、仲良くなっていって。そうした過程の丁寧に描かれて、しっとりと落ち着いているところなどは、大変によかったのでした。全体にスロー、ちょこちょこギャグやアクション? 盛り上げの要素がはいるのだけれど、それはエピソード中の小エピソードといった感触で、流れがそうした方面に向かうということは少なかった。あくまでも軸は、メガネちゃんといすずさんの関係の、少し歩みよるごとに仕合せ、そうしたところにあったのだと思います。

しかしこの作者は、穏かさの中に感情の流れを作るのがうまいなとつくづく思います。斬新かといわれると、そうではないと思う。けれど、共有されるイメージ、そうしたものをうまく取り扱って、効果的に紙面に落とし込み、引き込む。それは、ああ、なんかいいな、こういうの、そういう感じをもたらして、そしてあの最終回に、いや違う、終わってないから。けど、あれはすごくうまかったと思うのよ。これでもかこれでもか、散々ひっぱって、しんみりとさせて、ああ、もう、思いが溢れた、その時に、ささやかに仕掛けられる、その効果たるやただものではなかった。うまいなあ、すっかりやられた。あの感動と微笑ましさの波、あれがこの人の面目躍如であるのかと思いました、思いましたよ。

0 件のコメント: