『まんがタイムきららキャラット』5月号、発売です。表紙はきゆづきさとこの『GA — 芸術科アートデザインクラス』。でもって、これがまたすごくいい表紙です。背景の白がすごく効果的。上から雑誌タイトルロゴ、イラスト、収録作のタイトル群、すっきりとしてよくまとまった三つ割り構成になっています。イラストは中央に如月、背後一歩引いた位置に残る四人が横一列に並んでいるのですが、ここにもまた水平が強く感じられるものだから、全体に強い安定感をもたらしています。かつ後ろの四人の頭の配置が、中央に向かうV字の線をかたち作っているために、自然真ん中の如月に視線は集まるようになっている。如月のいる中央にしっかりとした重心が作られているから、こんな空白の目立つ隙々な表紙なのに、ちっともぼやけた感じがない。むしろ、これを埋めたら息苦しい表紙になったはずで、キャラクター、イラストの重さと背景の抜けた軽さがうまくバランスをとって、ひとつの空間を、表紙からはみ出してなお広がる伸びやかな空間を感じさせて、いや、本当にいい表紙。明るくてすがしくて、鮮やかで、はなやかで、染谷洋平って人が構成したのか。覚えておこう。これは本当にいい仕事だと思います。
で、もうひとつ仕掛けがあって、それもうまいなと思わせるものでした。表紙には春。
の文字をあしらって、そして口絵には夏!?
と来る。それもほぼ同構図で、で、口絵のイラストはアニメ絵なのか。最初見た時、気付かなかったよ。表紙は静的なまとまり重視、口絵はそこに動きがともなって、文字のレイアウト、そして黒の強さでしょうか。黒が静けさをどんとやぶって、向こうから迫ってくるよう。あらためて黒という色の魅力に感じ入りました。
『GA』がアニメ化されるという話ですが、その暁には、きっと表紙などなど纏めた画集が出るんだろうなと予想されますが(そしてそれは『GA集』なのではないかと予想しますが)、その時にはこの表紙のギミックは消えてしまうはずで、それはちょっと惜しいなあ、なんて思います。再現は無理でも、コメンタリーかなんかで触れて欲しいなあと思います。そして、できれば『とらだよ。』にて連載されていた『GA材置き場』もまとめてください。いや、あれは本当によくできた連載でした。美術やデザインに関する知識が楽しく学べて面白い。そのまま消えてしまうには、あまりに惜しい連載です。
そして、巻頭作、『GA — 芸術科アートデザインクラス』も面白かった。この人はイラストレーションもうまいけど、物語の構成もまたうまい。それは今号でも遺憾無く発揮されていて、キャラクターの個性、魅力はいうにおよばず、美術科というちょっと馴染みの薄い世界を魅力的に伝えて、そしてコミカルな展開も楽しかった。人違いをキーにして、学年を超えた登場人物を繋いでしまう。それは勘違いの面白さであり、人間関係の面白さであり、そしてあーさんは今日も可愛かった。私はあんまりこういうのいうのは好きではないのだけど、きゆづきさとこという人は、格別の人だと思っています。多様他面な才能を持った人だと思っていて、その才能は今は漫画にそそがれている。その漫画を読める、それはすごくありがたく、素敵なことだと思っています。
そういえば、ずっと前にタイピング練習ソフトを作ったことがあったんですけど、そこにマザーグース(『月曜日の子供』と『誰がこまどりを殺したの?』)を収録したのは、きゆづきさとこリスペクトだったからだったりします。だったら『男の子はなにでできてるの?』も入れとけよ、って話ですが、これは確かインデントが表現できないから断念したんですよね。久しぶりに『月曜日の子供』をやってみたら、1分をきれませんでした。1分7秒。残念です。
困ったな、これから別連載にも触れるのか。ものすごくアンバランスだぞ(私には構成の才能はありません)。
実をいいますと、きらら三誌のうちで一番好きなのが『キャラット』なんですよ。基本的に嫌いな漫画はない。実際、今月もみな面白かった。それを前提にしまして……。
『とらぶるクリック!!』は回想回。感動の激動ストーリーが語られるかと思ったら、思いっ切り肩透かしをくらいましたよ。けど、いいお姉ちゃんだなあ。それに、茉莉もいい娘。今回は茉莉のよさが際立った回でした。いい話でした、そして柚は今日も可愛かった。
『キルミーベイベー』、もう大好き。はじめっからおわりまで、人をくった忍者のそのひょうひょうとした様。振り回されるやすな、そのやすなに振り回されるソーニャちゃん。テンポもいいし、展開の先はちょっと読めないしで、すごく面白かった。そしてソーニャちゃんは今日も可愛かった。
『ラジオでGO!』にはモクソンが! 新人が加わって、ちょっと動きが出てきたりするのかな? そして風見Pは今日も可愛かった。
『うらバン!』、本当にコンクールに出るんだ! 小編成でも無理、せいぜいアンコンって人数なのに、コンクールかあ。無茶するなあ、っていうか、こういう無茶をきかせられるのが、この漫画の雰囲気で、またその雰囲気が楽しいんだから、これで正解なんでしょう。そして黒目先生は(略)。
『チェルシー』はなんだか妙に気にいっています。先々月でしたっけ、バッキンガム、あれは鮮やかでした。それまでは絵が、キャラクターがポップでキュートという印象だったのが、話でも見せてくれるかも知れないという期待も加わって、いまもなお注目中です。っていうか本当に絵がかわいいな。人体の描きかたが独特で、それは動きと表情の付けかたにあるのかな。溌剌として、すごく魅力的、はじけんばかりです。
『せいなるめぐみ』は荒井チェリーの新連載。最後の最後、二段ぶち抜きで登場するいい男! たしかにたまらん。シャツのラフな着こなしに、ギャルソンエプロンでいいのかな? ちょっと男っぽさもあって、けど清潔感もあって、まさか山Gのようにはならんよね。というか、この人の漫画初のまともな大人の男性なんじゃないのか。いろんな意味で衝撃でした。
『ねこみみぴんぐす』、穂咲さんはこちらでもあちらでも魅力的でやんすな。『ニコがサンタ』は最終回、いい話なんだけど、そこにシビアさをさしはさむのがらしいなあ。短い連載だったけど、好きでした。『ツバサとらいある』、さだまさし研究会は別に微妙でもなんでもないと思います。というか、みんなももっとさだまさしを好きになるといいと思うよ。それはそうと、今はバカキャラが実は成績優秀という巡りになってきてるみたいですね。次号から連載だそうですが、これはいいニュース。結構好きな漫画です。『ぴよぴよえにっき。』も連載昇格だそうですが、これもいいニュース。うちの二歳はまだこんなにしゃべらないなあ。うちの二歳は電話は切らないけど、せんせいに描いてやった絵、わざわざ完成するのを待って、かしゃんと消す、そんな悪いやつです。
『空の下屋根の中』のヒロインかなえ、彼女の悩みは私にも通ずるものがあって、なんか読んでいて苦しくなる。私はできることは多いけど、ちゃんとできることって実はないんだ。それで、なんとなく生きているんだ。仕事もなんとなくして、なんとなくお金も貰って、こうした生きかたのどこがかなえのそれと違うんだろう。空白な気持ちを抱えて生きている。これってなんなんだろう。かなえを見ていてそう思います。それはそうと、万引きの話は世知辛いなあ。これが現実か、現実だな。
『まゆかのダーリン!』、次号最終回! って、ええっー! でも、次に続くものがあるなら、それでもいいのかも知れない。応援します。
『うらがアルっ!』、穂咲さんはあちらでもこちらでも魅力的でやんすな。でも一番魅力的なのはおかーさんだと思う。けど、あのトライやるウィークみたいなのって、実際にもあるの? 生活科? は小学生か。ええと、『13歳のハローワーク』みたいな、子供のための職業体験? そういえば、去年だったか一昨年だったか、うちの職場にも高校生だったか中学生だったかがきたな。まあ、見学みたいなもので、娘一時間ほどでどっかにいっちゃったけど。学校ものはどうしても学生の生活圏に限定されてしまいがちだけど、こうした制度? イベント? をうまく使って、バラエティを持たせるのはうまいなと思いました。それから、OL風のおかーさんは素敵だと思いました。
『アットホーム・ロマンス』、ああ、私もひょうろく玉です。って、マザコンがどうこうってわけじゃなくってね。ともあれ、いよいよ動くわけですね。これはもうラストに向かうってことなのかな。で、sans retour Voyage “derniere”ってMalice Mizerなのか。without return “last” trip、ってところでしょうか、帰ることのない「最後」の旅、ですね。こうしたところにこうした引用を持ってくるところに、作者のMalice Mizerに対する愛が感じられて、そしてそれはこうして引用した以上、好きなものに対して恥じないものを描きあげようという、覇気のようなものも感じさせて、そうか、竜太朗はいよいよ人生における旅立ちを決意したってわけですね。竜太朗の決断がどういう決着に向かわせるのか、それはわからないけれど、それだけに今後の楽しみとしたいと思います。
- 『まんがタイムきららキャラット』第5巻第5号(2009年5月号)
引用
- 表紙,『まんがタイムきららキャラット』第5巻第5号(2009年5月号),1頁。
- 口絵,『まんがタイムきららキャラット』第5巻第5号(2009年5月号),3頁。
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