2008年4月16日水曜日

ほほかベーカリー

 そこのパン屋に外人の店員さんがいるらしいぜ。そんな台詞からはじまった『ほほかベーカリー』、外人の店員さんとはタイトルロールであるホホカさん。ヨーロッパはナホナ国からやってきたホホカ=チルノ=パナナ(20歳)が、町のパン屋さんベーカリーさかいにて修業しつつ、店長店員タミオさんと和気あいあいとした日常を送る、和み系の四コマ漫画です。なんで和み系かというと、ホホカさんが金髪碧眼和み系だから。金髪! いや、私は別に金髪が好きってわけじゃありませんよ、一部にそういうこという人がいるだけで。それに好き嫌いでいったら、ホホカの同僚の凛さんの方がより好みというか、また、眼鏡か! という声が上がりそうですが、いや眼鏡がいいのではなく、眼鏡だけがいいのではなく、他にも魅力的なところは多々ありますから(いいなおした、いいなおしたぞ)。と、そういうような漫画です。

以上の説明ではどういう漫画かきっとおわかりでないでしょうから、改めて説明いたしますと、いいなおした、いいなおしたぞのくだりです。台詞の端々にちょっとしたおかしみを持ち込んで、そのささやかな面白さの種を膨らまして楽しませる、そういうスタイルの漫画であるといいたかったのですね。ボケといいたいけれど、いわゆるボケではないようなことも多いです。どことなくナンセンスな印象もありますが、よくよく読めば、ナンセンスでもなんでもなく、結構普通のこといってたりもします。ちょっとずつかみ合わない会話、そういうこともありますが大抵はちゃんと成立してます。なのにおかしいのです。この作者は、彼彼女らの会話や行動、発想に、少しずつ、少しずつ、色んな味のおかしみを加えることで、全体としてはふんわりとあたたかく、そしてどことなくおかしいという、独特の風味に仕立て上げているのですね。

『ほほかベーカリー』は、そうしたやわらかさとおかしさの漫画である、そう思って読んでいたら、時折やたら胸を突くような話、心揺さぶってくれるような話も飛び込んでくるから侮れず、というか私この漫画を読む時は心を緩めていますから、無防備を攻められてひとたまりもないのですよね。ぐっときます、ぐっときますね。あれ、こんなつもりじゃなかったんだけどな、って、そんなそぶり見せなかったくせに、って、ささやかな喜び、かわいさになんだかほっとしたり、感動して泣きそうになってみたり、もういろいろです。そして、私はこうしたところも好きなんです。泣きたくて読むんじゃないし、キャラクターにドキドキ感じたくて読んでるわけでもないんですが、それでも心が動いてしまうのは仕方がないことで、そして心が動けば、そこにはやはりいいなと思えるなにかがあったということなのですから、より一層好きになれるというわけで、ええ、だから私はこの漫画が大好きです。

書店にて表紙を見た時に、キャラクターよりも大きく描かれたパンの数々、帯びもロゴも茶系で、これがまた落ち着いて暖かな印象を与えて、これはいいなあって思ったのですが、それは決して派手ではないけれど、しっかりと私の心を捉えているこの漫画の雰囲気、空気をよく表しているって思ったからなのだと思います。

そういえば、この本読むとパンを食べたくなります。特にバゲット! ホホカの焼いた最新型 (la dernière mode ?) でもきっと美味しくいただきますよ。

  • ボマーン『ほほかベーカリー』第1巻 (アクションコミックス) 東京:双葉社,2008年。
  • 以下続刊

引用

0 件のコメント: