『となりのネネコさん』を買いにいった書店でのことです。この店なら絶対入荷しているという確信をともに探索する私は、目当ての本を見付けること叶わず、新刊の積まれた平台を中心に店の中をぐるぐる回り続けることあたかも回遊魚のごとしでありました。もういい加減疲れてきて、書店員に問い合わせようだなんて思うのですが、その機会つかむことできず、またぐるぐるぐるぐる — 。そして、この回遊が危険なのです。本を見付けようという目は、簡単に目当ての本以外にも引っかかって、気付けば手に持つ本が増えている。買おうと思って買いそこねていた本から、いわゆる表紙買いまで、それこそ読むジャンルが広がるっていうのはこういう時なんですよね。というようないきさつで、買いました、麻雀漫画。多分私のはじめて買う、麻雀漫画なのではないかなと思います。
けれど、申し訳ないけれど、麻雀目当てではありませんでした。いやあ、表紙の女の子がかわいかったものだから、つい、ね。髪を眉の高さで切りそろえたつり目。もともとこちらを見つめる絵に弱い私なんですが、それに加えていつの間にかつり目好きになっていたようで、昔はそうでもなかったと思うんですが、ほんと、なにがきっかけなのやら。
内容よりもイラスト重視で買った漫画、はたして読んでみてどうだったかといいますと、そんなには悪くなかったです。なんだか家庭に問題を抱えていそうな少女、朱雀がヒロイン。雀荘経営する友人のお宅に上がり込んで、トラブルがあれば出ていって打つ。そんな感じなんですが、出てくるのが皆狙いに狙ったお約束キャラばかりだから、ほらツンデレだとかさ、そういうの。こんな麻雀漫画はじめてみたよ。ほんと、正直なところそう思います。
私はたまに麻雀を打つくらい、そんなにはやらないので、これが麻雀漫画としてはどうなのか、そういうことはわかりません。ただ、これが鉄火場であるとか勝負事の世界とか描くよりも、もっと違うところを狙っているというところはわかります。キャラクターそれぞれに設定された、打ち方の癖。毎回の山場、麻雀打つシーンでは、そうした得意を駆使しての攻防は描かれるけれど、実際に打っている時のひりひりした感じ、先を読み、仕掛けをかいくぐり勝つといった、そういうのはちょっと弱め。むしろ派手な役がバンバン出てくる、過激、華麗、そしてヒロインたちは可憐、そんなところが売りなんだろうなと思うんですね。
しかし、第一話ではそうでもなかったのに、サービス? 裸が描かれるようになって、まあそれはいいんですが、決めのシーン、大きな役で上がられた時の衝撃が裸で表現されるのはちょっと笑ってしまって、いやね、あのぱいんっ…っていう効果音、最初なにがどうなってしまってるのかと思って、笑っちゃって、なんかシリアスになり切れない、いや、これはあえてそうしてるんだろうなあ。お約束をべたべたに決めてくる、苦笑するというか、そのベタさ加減に笑ってしまう。ええ、あんまり期待してなかったんだけど、どっこい面白かった。軽く読める、ギャグなんだかどうなんだか、ほんと、楽しい漫画だと思います。
ところでヒロインの打ち方。ピンチになると泣く(ポンやチーをすることで、めそめそべそべそすることじゃありません)、そういうの、ちょっと自分に似てるかも、なんて思って、負けたくないから食らいついていくって感じですか? ええ、私はそんな打ち方するみたいなんですよ。だからでしょうか、そんなヒロイン見てて、以前打った時のこと思い出したりしましてね、ほんと、ずっと前、オンラインで麻雀打った時、最終局、それまで全然巡ってこなかったツキがきたとでもいうのか、なんとドラ12を抱えるという、ものすごい状況になっちゃったりなんかしましてね、風牌の刻子と三元牌の刻子(しかもドラ)持ってたら、人の槓で風がドラになって、さらに人の槓で枕がドラになって、しかも自分の明槓で槓の四枚がドラになってで、合計ドラ12。役は発、リーチのみなのに、ええと、数えで役満になるの? もうめちゃくちゃ。けど、順子狙いの両端二枚で待ってたのに、それでも上がれないっていうのが私なんですね。しかも河底で振り込むのが私なんですね。その上待ち牌全部、人に持たれているというのが私で、さらにもし上がってたら裏ドラがのってドラ14というもはや夢の世界!?
上がれなければ意味がないんです。けど、ヒロイン朱雀はそこで上がって見せて、しかもそれが緑一色だったりするわけさ。ああ、いっぺんくらいそんな麻雀打ってみたいですね。夢のまた夢ですけどね。ほんと、九蓮だなんだって、そんな贅沢なこといっとる場合じゃないって感じです。
- もりしげ『朱雀 — 歌舞伎町・雀姫伝』第1巻 (近代麻雀コミックス) 東京:竹書房,2008年。
- 以下続刊
0 件のコメント:
コメントを投稿