2008年4月12日土曜日

ななみまっしぐら

   ななみまっしぐら』はパチンコ店を舞台にした四コマでありながら、パチンコの知識がなくても楽しめるという、ギャンブル関連まったく興味なしの私には実にありがたい漫画であったのですが、惜しまれつつも終了、第6巻にて完結となりました。いや、実際唐突だったと思います。ええーっ、終わるのか! まさしくそんな感じで受け止めて、いや、でも6巻後書きによれば七年続いていたというのですから、これもまた頃合いであったのかも知れません。続けようと思えばまだまだいけただろうけど、それをあえてここでとどめて新しい可能性にチャレンジしようという、そういう気概を喜ぶべきなのだろうと思うのです。

しかし、七年続いて、その間面白さが変わらなかったというのは、実に大したものだと思います。基本的には見た目ちびっ子店長と個性的な店員、常連客の掛け合いどたばたで成立する面白さであるのですが、パターンとしての面白さを確立させることに関してはもう当初より長けたもので、短いスパンでのパターンがあれば、新年やクリスマス、バレンタインデーというイベントにからむ年単位で用意されるパターンもあって、七年目ともなれば描かれずともわかるネタあり、むしろさりげなく用意された細部描写から例年のパターンを思い浮かべるほどになります。おわかりでしょう? わかってますとも! の世界といってもいいかと思いますが、ああ、もしかしたらこの面白さの無言応答が深くなりすぎて、新規参入者を拒むことにもなったのかも。マニアを喜ばせつつ、ビギナーにも優しい。『ななみまっしぐら』はこの両立を達成できていたと私は思っていたのですが、なにぶん私自身がマニア側の人間ですから、正当なジャッジはできませんね。

けれど『ななみまっしぐら』の新規参入者に対する敷居は、晩年においてもむしろ低かったと思っています。キャラクターはよく整理されてわかりよく、また店員と常連という線の引かれ方にしても、制服がありますからね、やっぱりわかりやすい。当座楽しむのに必要な情報はその回だけで調達できる、そういう行き届いたわかりやすさは正直ずば抜けたものがあると思います。よく見ると、説明のための台詞とか、ちゃんとあるんですよね。けど、それが説明とは思われないさりげなさ。こういうのをもってうまいっていったらいいんだろうなって思うのですが、無駄なところはそぎ落としつつ、目立たないところまで手が入っているという、丁寧な作りが安心感を与えてくれるのかと思います。

そしてプラスアルファ、もしくは本領発揮であろうかと思うのですが、キャラクターの個性やパターンといったもろもろを諒解することで得られる面白さがあって、やはり『ななみまっしぐら』はこれらを抜きにしてはいけないとも思うんですね。なんのかんのいってもキャラクターの魅力というものは大きいわけだし、そしてよりよく積み上げられたものは物語世界を豊かにし、また表現できる幅を広げてくれるものだと思うのです。この漫画も、基本的な登場人物は変わらずにいましたが、ゲストキャラクターやセミレギュラーは増えて、それぞれの持つ背景やネタによって支えられた面白さが、重なり合い、連携して、広がっていたと思うのですね。そういったネタを知っていれば、表に現れている以上の面白さ、四コマネタを越えた面白さにたどり着けるわけで、と、そうなるとやはりマニアのための世界、シューティングでいえば弾幕系の面白さになってしまう嫌いがあったのかも知れませんね(私は弾幕系シューティングは難しすぎて遊べません)。

私が『まんがタイムジャンボ』を買いはじめた頃、右も左もわからない中、少しずつ知ってなじみになっていく漫画の筆頭に『ななみまっしぐら』があったことを思い出します。わかりやすい展開。玉を満載したドル箱の重さを支えきれず、ダイブするように転倒する店長の、その飛距離(!?)を計測するというネタが繰り返されていた頃ですね。すぐになじむことができた。新参者の私を招き入れてくれるような、そんな暖かさが嬉しかったです。

私はこの作者の前歴をいまだよく知らずにいますが、漫画を描き、アニメにも関わっていた人らしく、そうした経験がうまくいかされた結果がこの四コマなんでしょうね。わかりやすさ、伝わりのよさが工夫されており、そしてキャラクターや設定の魅力も充分で、なにより楽しく面白い。だから、はじまったばかりの新連載も、不安なくしっかりのっかって大丈夫でしょう。というわけで、私はこの作者を引き続きひいきにし続けること間違いなしと肯います。

  • みやさかたかし『ななみまっしぐら』第1巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2003年。
  • みやさかたかし『ななみまっしぐら』第2巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2004年。
  • みやさかたかし『ななみまっしぐら』第3巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2005年。
  • みやさかたかし『ななみまっしぐら』第4巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2006年。
  • みやさかたかし『ななみまっしぐら』第5巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2007年。
  • みやさかたかし『ななみまっしぐら』第6巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2008年。

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