2009年8月6日木曜日

大正野球娘。

  アニメ『けいおん!』が最終回を迎えて、次にはじまったのが『大正野球娘。』。時は大正、女学に通うお嬢さんたちが野球をやろうという、もともとは小説だったものですが、それがドラマCDになり、漫画になり、そしてアニメになり。だんだんに広がりを見せて、けど私は小説だけでいいかと思っていたんです。いやね、小説のイラストを描いている小池定路さんのファンなんです。この人の描く絵が好きで、ゲームを買ったり、ゲームを買ったり、DVD-PGも買ったりと、だから本を数冊買う程度のこと、なんてこともないのであります。

 とはいえ、買うのは遅れたんですけどね。見かけたら買おう、そう思っていたのだけれど、なかなか出会えませんで、ようやく出会えた時にはアニメ化の帯がかかっていまして、わお、アニメ化するんだ! でも、アニメのキャラクターは小池定路ベースではあるけれど、小池定路色は薄めで、がっかりとまではいわないよ。けど、ちょっと残念かなって。いや、でもいいんだ、ちゃんと小池定路さんもクレジットされてるし。

小説は軽くざっと読んだくらいなので、とても申し訳ないのですけれど、そんなにしゃべれることはないんです。ヒロインの小梅さんが思ったよりも庶民だったことに驚いたり、だってスープとるための骨をノコギリで挽いたりするんですよ。驚いた。実家が洋食屋さんなんですね。もちろんこの設定はアニメでも同様で、おお、ノコギリでごりごりやってる、とかいったりして、それで女学に向かう途中、お友達の晶子さんの車に拾われたりね、そうしたところも原作にありました。けど、メンバー集めの詳細とか、試合の詳細とかほとんど記憶になくて、最後の最後がどうなるかだけは覚えてるんですけど、でもそれはいわない約束です。

こんないい加減な読者だった私には、アニメ『大正野球娘。』、とても楽しいのであります。原作での、結構な大所帯ですからね、把握できていなかったキャラクターもわかるようになってきたし、なんてったって、小梅、お友達、川島乃枝がわかればそれでいい、ってないい加減さでしたから。いや、乃枝は素晴しいよ。とにかくキャラが立ってる。一目見れば忘れられない愛らしさだ。ってのは置いておいて、メンバー集めて、野球の会が結成されて、そうした展開に見るばたばたとした楽しさがあるかと思えば、練習試合をして、そしてその結果、その後の様子。もうね、いいアニメじゃないか。こりゃいいやと思ったわけです。

なにがいいかといっても、娘さんたちがはつらつとしているだけじゃなく、そもそも女子は男子に劣るかのようにいわれたのが悔しくてはじまった話であるわけです。そうした前提があるところに、第4話ですね、追い討ちをかけるかのような無神経な言動に気分を害する小梅、いちいち最高で、いきなり押し掛けられて、うえっ、あからさまに不機嫌。女だてらといわれた時には、はぁっ、小梅だけにとどまらず、お母さん、八重さんもご立腹だ。しかし、そうしたコミカルな表現だけが魅力なんじゃなくて、むしろシリアスこそが素晴しいのです。女だということをお笑いになるのであれば聞き捨てなりません。この台詞にはじんとした。あの、晶子さんの勢いに押されっぱなしだった小梅が、凛としてきっぱりいい放った。それは、この時代において花開いた女子の同権意識がいわせたものか。いずれにせよ、この時、小梅の意識は晶子のそれと同じになったわけです。馬鹿にされっぱなしじゃたまらない。女にだって、沽券というものがあるんです。そいつを目にもの見せてくれよう — 。そこまで剣呑じゃないですけどね。

明治を過ぎ、自由な風の吹きはじめたという大正の時代、女にも男子同様の価値があるのだと、そうした意識に目覚めた女は多かったといいます。ハイカラさんといったらよいか、すこし時代が下ればモガというのか、旧来の女のあり方から脱しようとした女たちがあって、しかしただ身形格好だけを装うだけではすまされない。そうした意識のまっすぐに伸びようという凛々しさ、そいつにちょっと憧れてしまうんですね。いや、市川ジュンの『陽の末裔』を読んで感動しちゃうような男ですから、私は。それこそ、アニメ『大正野球娘。』、これを見れば、もうただただ、男どもに吠え面かかせてやるがよいよ、そう思わないではおられなくって、それこそ小梅の意気込みに大喝采、晶子さんの暴走まがいの猛進を応援してしまうくらいであるのですね。

いや、ほんと、ただ女の子が可愛ければいいわけじゃないのよ、そんな具合でありまして、あるいはもしかしたら私は彼女ら女子に屈服させられたいのではないだろうか、そう思ってしまうほどなのであります。

コミックス

  • 伊藤伸平『大正野球娘。』第1巻 神楽坂淳原作 (リュウコミックス) 東京:徳間書店,2009年。
  • 伊藤伸平『大正野球娘。』第2巻 神楽坂淳原作 (リュウコミックス) 東京:徳間書店,2009年。
  • 以下続刊

CD

Blu-ray Disc

DVD

PSP

Goods

引用

  • 第4話「これから」,アニメ『大正野球娘。』

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