2007年1月4日木曜日

新釈ファンタジー絵巻

 本当は今日は、先達てちょっと紹介しましたゲーム『白詰草話』で書こうと思っていたのですが、えっととりあえずクリアしましたって、それから、ちょっとプラネタリウムに行きたくなりましたって。『ごんぎつね』読んでちょっとうなぎが食べたくなりましたっていうようなひでえ感想ですが、いきたくなったんだもの仕方ないじゃないか。というのは置いておいて、突発で『新釈ファンタジー絵巻』で書きたいと思います。いや、今日仕事始めでしょう、世間一般的に。それで私も街に出まして、そうなると本日発売の『まんがタイムジャンボ』を買わないわけにはいきません。と、すると、2007年開幕スペシャルと銘打って『新釈ファンタジー絵巻』がストーリーの形式で掲載されているようではありませんか。ああこれは嬉しい。だって、以前ゲストで載った羊の執事サフォークの話があんまりにもよかったもんだから、今回も期待できそうって思ったんです。

そして読んで、よかったですよ。思いがけなかった。まさかこうくるとは。確かに表紙には、本編でのヒロインであるかぐやの父母の絵があって、なるほどこうくるのはすでに予告してあったというべきでしょうか。でも、やられましたね。まさか二人の馴れ初め話とは思いませんでした。高校、でしょうね、で出会った二人の、不器用でけれどどことなくほほ笑ましさも感じられる素敵なボーイ・ミーツ・ガール・ストーリー。乱暴狼藉働くタイプのクールビューティお姉さまであるかぐや母の若かりし頃は果たしてどうだったのか、それはこれから『ジャンボ』を手に取ろうという人のために気を使って、ここでは書かないでおきたいと思います。

舞台設定がよかったんだと思います。父、ギイの所属する天文部(そう、ここで冒頭のプラネタリウムが繋がる!)、星、宇宙に対するロマンがギイの台詞の端々に感じられて、ああやっぱり! 作者ナントカのバックグラウンドに広がる素養というのが腑に落ちた気がしました。これまでもあったのですよ。地球の海をはじめてみた月面人が驚いて叫んだ台詞、海が水没してる!!? もう大爆笑。これって、月の海っていうのを知らないとわからないネタだと思うんですが、こういうのが出てくるところ、ただ者じゃあない。科学的な視野がある。その傾向は天文から生物、そしてちょっとオカルトにも向かっていて、どことなくSF者の匂いがするんですがどうでしょう。おじいさま、おばあさま、かぐや、そして最近ではミニの四人家族がほのぼのとしているだけの漫画ではない、その裏に広がる広範な視野にロマン。四コマ誌では異色だと思います。けどその毛色が面白い。ほのぼの科学もの(ちょっとオカルトでシニカル)が好きなものはきっと気に入るはずだと断言してしまいます。

この人がストーリースタイルで描くと、ちょっとしんみりもさせて、ちょっといい話にもして、けどその随所随所には件のナントカらしさも忘れずに、それはこの人には珍しいちょいラヴストーリーであった今月掲載作にも健在です。そして果てしないロマン。自然に対するワンダー、見果てぬものへのロマン、気になる異性への視線、 — 友情! 詩的だった、素敵だった、やるじゃん! ナントカさん!! もうっ、年収三億とかになったら、絶対『ナントカ全集』出すからな、覚えとけよー!

ちょっとだけネタバレ、ごめんね。かわいい友人ウイを守る若かりし頃の母サイを評してギイは地球と月みたいだねと例えますが、これ、ウイを地球に見立ててサイがまわりを回っているという様子をだけではなく、月が盾となって隕石から地球を守っているという説をほのめかしてるんだとすると、やっぱりナントカってすごい! って思えてきて、いや、多分これ正解なんじゃないかと思うんですがどうでしょう。ああっ、もう、最高! サイちゃんったらデレのないツンデレだ!

ところで、ウイちゃん、サイちゃん、ギイ、頭をとったら、ウサギですね。これもちょっとびっくりした。

追記

地球と月の例えって、もしかしたらまわりを回りながら常に地球に向いているってこと!? ああとも思える、こうとも思える、すごくいい感じ。ナントカトーク、四時間とかいけそうな気分です。

参考

  • ナントカ『影ムチャ姫』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2005年。
  • 以下続刊

引用

  • 桑原ひひひ『きつねさんに化かされたい!』第2巻 (東京:芳文社.2005年),53頁。
  • ナントカ「新釈ファンタジー絵巻」『まんがタイムジャンボ』第12巻第9号(2006年9月号),171頁。
  • 同前,148頁。

参照

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