2007年1月17日水曜日

 私が一番児童文学に傾倒していた時期はというと、そりゃもちろん子供時分であるんですが、実はもう一時期ありまして、それは高校から大学卒業にかけての数年間。児童文学作家になりたかったのでした。一体なにが私に働き掛けたものだか、いろいろ読んで調べて、高校卒業してからお金を貯めてワープロ(シャープの書院でした)買ったら、とにかく書いては、投稿して投稿して投稿して、得られたものはというと独自の癖のタイピングだけ。力及ばずといった感じでありましたが、楽しかったといえば楽しかったのかも知れません。もしかしたら、あれが私の青春だったのかもなあ、そんな風にも思えます。投稿熱は大学が忙しくなるに従って薄れていったのですが、けど児童文学を読む楽しさは残りました。大学の図書館には福音館のシリーズがあって、次から次に読んで、その一冊が『ニワトリ号一番のり』。これにははまりました。もう、この本読むだけではおさまらず、いろいろ海事について調べはじめて、こんなにも船や海にはまってしまうだなんて、思いもしないことでした。

(画像はビジュアル博物館『難破船』)

調べるといったら基本的に図書館で、けれど私の通っていた大学は海事になんてちっとも関わっていないから、図書館に行っても資料なんてない。だから最寄りの公共図書館にいきまして、そうしたら結構あります。いろいろ読んだのですが、楽しかったのはやっぱり図鑑ですね。ビジュアルの訴える力といったらいいのでしょうか。船が、模型やなにかの写真を使って説明されていて、細かなところを知るのに大変役立ちました。そうだ、このときはまだ書いてました。書き上げたかどうかはさだかではないですが、一番最後に書いたのが船の話じゃなかったか? だから船についてのディテールを知りたくて、その要求によく応えてくれたのが同朋舎出版のビジュアル博物館のシリーズ『船』でありました。

ページ見開きを使って、ひとつの事柄を扱うこの本は、その真ん中に対象の写真を大きくどんと据えて、細かな部分の名称を教えてくれるところがお気に入りでした。ほら、普通知らないでしょう、船の構造なんて。船首楼とか船尾楼とか、あるいは羅針盤だとか左舷灯右舷灯、そうしたものをいろいろ教えてくれて、ま、図鑑ですからざっくりとした説明にとどまるんですが、けど見てるだけで楽しいということはやっぱりあるのですよ。私の目当ては帆船、まさしくティークリッパーだったのですが、こいつは船の花形ですからもちろん出ていて、模型をどんと置いてですね、半分に切って内部の構造もわかるようにしてくれているのが嬉しかった。船倉がどんな具合になっているかがわかります。船室がどのへんにあるかもわかります。もちろん模型で構造や名称を説明するだけじゃなくて、船をとりまく状況事情なんかも説明されていて、こういうの、眺めているだけなのになんでこんなに面白いのでしょう。そうした場に立ちあったかのような思いになるというか、空想癖ですかね、妄想癖でしょうかね。とにかく楽しかったのです。

そういえば、私は子供時分から図鑑を眺めるのが好きな子供でした。子供向けの図鑑を何度も何度も繰って見て、動物、特に魚なんか好きでした。あの図鑑は親戚の子にやっちまったんですが、今から考えるとすごく惜しいことをしたと思います。場所は塞いだかも知れませんが、今ああいうのってちょっとないんじゃないでしょうか。きっと捨てられていると思うと、ああなんであげることに同意したんだー、と子供の頃の判断の甘さに歯がみする思いです。

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