『ROM-レス。』に続く白雪しおんの単行本『にこプリトランス』。突如押しかけてきた妹弟(双子)に翻弄されるお兄さんの話、といったらなんだそりゃー、って感じにも思えますが、実はこのふたり、せすとりんすはアンドロイドだったのです。って、そりゃなんだー。なんというか、いくらなんでも狙いすぎというか、基本形すぎやしませんかみたいな気もするんですが、それがなんだか妙に気になるというか、月に三誌も出るきらら系列誌(フォワード除く)の、変に入れ替わりの激しい四コマ群に埋もれることなくきっちりと記憶に残っているのですから、やっぱりそれだけ人の興味を引きつけるなにかを持っているのだろうと思います。この感覚は『ROM-レス。』でも同じでした。また、これは連載はされていないのですが、『レンタルきゅーと』も同様で、以上をかんがみるにどうも白雪しおんという人の漫画は、私の記憶に残りやすくできているみたいと感じます。
で、買ったわけさ。改めて一話から読んでみると、どことなく微妙な感じの漫画だなあという印象がやっぱりあって、なんてったらいいんでしょう、基本に忠実すぎるギャグ、キャラ付け、それから展開も。私はKRコミックス読むときはまず表紙をはいでみるのですが、中表紙表裏に小さい文字で本編の解説がありまして、こういうところに妙に同人系のペーパー読んでるときみたいな感触を得ましてね、けどこれが悪くないんですよ。楽しんで描いてらっしゃるのだなということがひしひしと伝わっている感じ。なんか人柄から伝わってくるというか、作者も読者も一緒になってひとつの漫画の世界を軸にして楽しもうという、輪のような、独特の空間が成立してるという感じなんです。実際、この楽しいという感覚が、私をこの人の漫画に繋ぎ止めているのだと思うのです。そして、おそらくはこの楽しいという感覚が、この人の漫画に出てくる人たちを膨らませて、漫画のキャラクターという記号的な位置から浮上させている — 。ええ、読み進めてみればわかることかと思いますが、回を重ねて動き出した登場人物たちは、規定のレールをはずれたすえに独自の躍動を備えて、 — それは間違ってもどこかの誰かが作ったような感じではない — 、皆で楽しもうという雰囲気で満たしてしまうのです。
理屈やなんかで分析的に捉えようとすれば、おそらくその感じというのは散り散りに消えてしまうんじゃないかと思います。だから、私はこの漫画を理詰めでは読むことができず、ただ感じるままにほのぼのとせす、りんすの生み出す雰囲気にほだされて、にこにこと読んでしまっています。ほだされたのは多分私だけではなくて、ふたりに振り回される
蛇足
ええと、りんす、というのはあまりにも狙いすぎだと思うので、「思ったよりもできない」って言われる
ところとかも!)、なのでせす、といいたいところですが、私も狙いすぎると萌えない
口なので、特に誰というのは保留しておきたいと思います。というか、ちょっと選べません、騎士その他も含めてあまりに威力が強すぎますので……。
- 白雪しおん『にこプリトランス』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2007年。
- 以下続刊
引用
- 白雪しおん『にこプリトランス』第1巻 (東京:芳文社,2007年),26頁。
- 同前,34頁。
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