『こみっくがーるず』
ミキにとってくりすが助けや支えになってくれたらば、そう願うばかりです。
先月、そうしたことをいっていました。それだけに今回のエピソード、もう感無量でありました。
次に連載が決まらなければ漫画を描くのをやめる。背水の陣に我が身を置いたミキですが、はたしてその決意に結果はついてくるのでしょうか。もうハラハラの連続で、前髪をおろしたくりすはミキの前から姿を隠し、ひとり漫画に打ち込むもくりすの姿がないことにモヤモヤを抱えるところもあるミキの心情。これらもまたこの子たちの思いのアンビバレント思わせて魅力であったと思います。そしてついに出る結果。漫画の話づくりは評価されたけれど絵が……。
ああ、ここで本当にミキの漫画への挑戦は終わってしまうんですか!? あの見覚えのあるアンケートの様式。それだけにリアルさはいや増して、普段なんのこともなく読んでいる雑誌のその裏にある苦悩や苦さ、そうしたものに触れたかに思われて、ああ、つらいですね。そうか、でもミキはそのつらい結果を、そんなにも前向きに受け止めることができるっていうんですか。このエピソードは、成功もあれば挫折もある、そうした現実の一旦を描こうとしたものだったのかもなあ。
なんて思っていたらですよ、まさかのどんでん返しの急転直下。ほんと、この展開、見せ方、見事な手腕だったと思う。ひとつの結果にいたるまでの一進一退紆余曲折に振り回されて、けれどそれが充実感とともに心に残っている。ええ、いい読後感とはこういうものをいうのでしょう。
『私を球場に連れてって!』
おお、キャッツ、優勝ですか!? と思ったら、まさかの予行練習かよ。驚くよな、こんなことするん? この子らが特殊なだけよね? 漫画だから誇張とかなんかだよね? いや? ほんとにいるの……? いないといってほしい……。
優勝を目前としてテンションがおかしくなっている面々。猫子は変な踊りをおどっているし、さらには球場観戦できないことにゴネるゴネる。いや、なんか年相応にも思えるな、これ。どこか大人びてるこの子の子供らしいじたばた。でもなあ、その後の感想なんぞ見るに、やっぱりこの子、普通の子供じゃないっすよ。
レオナの無茶な約束に自分からのっかっていくタマも驚き。そしてキャッツはついに逆転!? と思ったら、違うんか! ほんと、このさらっと肩透かし食らわしてくれるところ。この漫画の真骨頂かと思う。でも、ちゃんと優勝の喜びに沸く三人を見せてくれたの嬉しかった。それぞれ満面の笑みでね、いやあ報われてよかったね!
そう思ってたら、ほんと、お母さんが無茶苦茶。家庭でビールかけはやめましょう? かといって、往来でビールかけ、というかビール浴び、これもほんとヤバい。いくらなんでも、こんなの現実にやる人いないよね? うん、いないといってほしい……。
『妖こそ怪異戸籍課へ』
いつぞやのフランケンさんたち再登場、というか本格登場でありますね。迷子扱いされていたシュタイン博士。見た目子供だもんなあ。睦子が身元保証してくれて、ようやく自由の身となったシュタイン博士。フランケンとともに役所にいくところだったというから、睦子とであえたのは運がよかったですね。
妖怪ながら戸籍を得ることができたふたり。そうしたら納税の義務も発生するんですね。税金をとられるだけでなく、運転免許の取得もできるようになる。いろいろ権利を得られたり制度の利用もできたりと、こうしてアクティブにいろいろやりたいという人にとっては得られるものの方が多そうかな? そして商売も始められる。ええ、シュタイン博士にフランケン、ふたりは得たものを有効に活用していく気満々で、すごいな前向き、立派です。
それで安い物件を、というのですけど、まさかの心霊物件? ここで手の目の伊織が大活躍するんですけど、いわばこの子は鑑定人というか状況? もろもろを判定する役割担っているわけですか。手の目でいろんなものが見えますよ、というので霊の状況を探ってくれた。たちの悪いポルターガイスト。シュタイン博士の命を狙うという凶悪さ見せるんだけど、フランケンが軽くいなして、かつ骨食が説き伏せてくれて……、というんですが、伊織も肝心の所有者の睦子もまるでわかってなくて、ぽやぽやしてるの最高でした。
今回みたく、怪異の存在が権利を得て、社会に根差して暮らしていこうという描写。面白いですよね。登場人物の人となりが見える。彼らの暮らす社会も見える。物語の舞台に広がり、奥行がしっかり見えてくるではありませんか。そしてフランケンが睦子や帝華からかけられた言葉に救いを感じるくだり。ああ、彼らがこれまでかこってきた不遇、向けられてきた偏見、蔑視、そうしたものも見えてくるのですよ。それだけに、この町での彼らの暮らし、そこに安寧やしあわせがあればいいなって思われてしかたなくなるんですね。
『初恋*れ〜るとりっぷ』
バレンタインは決戦日!? たきつけるとわに、そんなことないと、みんなのための友チョコだよいうそらなんだけど、いやいや、やっぱり先生用は特別に用意しているんですね。
鉄道部のガチめ部員のチョコレート、これがなかなかにすごいんですよ。みかげのチョコレート、え? それ、プラ板工作とかじゃないのん? ホワイトチョコにチョコペンで書き込んだ渾身の気仙沼↔仙台の方向板。あー、昔、列車の横っ腹につけてたやつ? いやもうこういうちょっとズレた感のある工作。すごくいいですよね。マニアこだわりの一品? とわなんて、すごいと感心しながらもあっさり食べちゃう。いや、もったいなくてちょっと食べられないよ! みたいにはならんのですか。すごいな。クールだ。
そらに対する先生の態度が意味深? 美術部でもらった箱いっぱいのチョコレートにそらも自分のを加えようと思ったら、先生が避けちゃう! なぜ? 嫌われた? 自分の気持ちが重かった? 悶々とするそらだけど、もしやそらだけ特別な事情があるのでは? とわの言葉に勇気持って先生のもとに向かったそら。そして先生の超々意味深な言葉から、そらに手渡されるチョコレート! これは!? これはーっ!?
と思ったら、いやもう、ほんとすごかった。マニア渾身の一品にして、美術教師の技術が惜しみなくそそがれたSL銀河ヘッドマークチョコ! いや、これは飾ろう。いや、そらならちゃんと飾ってくれるな!
そらの気持ちの落ち込みから安堵するまでの浮き沈み、それあってのあのラストの面白さ。ほんと、すっかり引き込まれて、楽しいおはなしでありました。恋とか愛とか、そういうのではないかも知れないけど、先生にとってちょっと特別なそらというのがわかったところも、なんかよかったなって思ったんですね。
引用