『まんがタイムきららキャラット』2021年1月号、一昨日の続きです。
『RPG不動産』
海回ですよ。皆で遊びに出掛けた海辺で出会った見知らぬ物件。最初に登記がどうなってたかって気にしちゃうのが不動産ものって感じしますよね。
この家というのが面白かった。ちょっと天井が低いんですよ。ということは小さい種族の家なのかな? とか思ってたら、島ごと移動しちゃったりして、なるほどなあ、この家のある周辺、琴音たちの暮らす島の一部じゃなかったんだ! だから物件について知らなかったのも当然。そしてこの家の建ってるのが大きな亀の甲羅の上っていうの、おおー、いい感じにファンタジー。家の住人もウサギの姿の種族で、そうか、皆戦争を忌避して、家ごと家族ごと逃げまわっていたんだ。かくして今知らされる、十年以上前に終戦しているという事実。
今回は不動産の仕事はお休みでしたけど、この世界のこと、戦争とそれをとりまく様々な思いなどなど、そういう文化社会の背景が見えたの、とてもよかったと思います。また、ただ舞台について知れただけでなく、琴音をはじめとする皆の個性、人となりにも触れることができた。ちょっとさいわいで、穏やかな一日。亀とともに移動する家というハプニングがいいスパイスになっていて、チャーミングな話になっていました。
『あやしびと』
この世界は殺人、いやさ殺妖人も場合によっては許される世界なの!? みぞれの姉、ふぶきに殺意を向けられるアヤ。いよいよ危ないとなった時に、ああ校長先生、頼りになるー! というか、どんだけ強いのか、校長。生徒の中でも一番と噂されるふぶきを一方的に制圧して見せて、かっこいいなあ校長。いやもう、この漫画でこんなバトル展開があるなんて思いもしてませんでした。ほんと、思いがけない見せ場でありました。
命の危機が去って安心したのか、アヤ、いつものペースに戻るのが笑えますよね。ふぶきに求める対価というの、エロい要求とかしれっと考えてるの、しかも校長に読まれてるの、めちゃくちゃ面白い。でも、みぞれとの仲を取り持つっていうのを選んで、これ、エゴだっていってますけど、前の世にて家族とも友人たちとも死に別れることとなった自分のこともあるのでしょう。また、姉に嫌われてると思い傷ついている友人のこと思ってという面もあるのでしょう。ええ、優しい子だと思います。
と思ったら、極端に走るふぶきのことばちんって! 完全にいつものペースだアヤ! でもそれだからこそ素晴しい。
その度を過ぎたクールさから怖れられていたふぶきも、なんだかんだでアヤのつっこみ待ちといったキャラクターになってしまって、みぞれとの対面の状況もね、アヤ、もう完全にペース掴んどるぞ。不思議とアドバンテージ感じさせるその態度がまた面白い。ええ、ふぶきがみぞれと和解する日も近い! そんな予感させられますよ。
『みこへんげっ!』
クラスメイトとのすれ違いが原因で悪鬼に巣食われてしまった黒井。まじない神子として彼女らのこじれた関係を改善し、悪鬼事案を解決に導くそのくだり、とてもよかったと思います。今回はえりかの能力ですね。問題が生じるその前に、問題の芽を摘んでしまおうという作戦。オンラインゲームでクラスメイトとは知らないまま仲よくなって、でもオフで出会ってその関係がおかしくなったのはなぜだろうというの。黒井のコンプレックスに気づいて、ちょっと悪者になってでも姫島と対話のきっかけを作ったえりかの判断。わずかな介入でその後のふたりの関係をがらりと変えるところに、物語の歯車がしっかりハマって動いていく、そんな感触あってよかったと思うのです。
過去から状況を変えてしまったために、黒井の家に招かれたという事実もなくなってしまいました。それを惜しみつつもよかったといえた彼女らの心に兆した感情、それもよかったと思うのです。仲よくなった黒井と姫島の様子を見守るえりかたち、その表情もまたよかったと思うのです。
『恋する小惑星』
のっけからスズちゃん、とばしてるな! 文化祭、皆の衣装を用意して、でもナナは可愛いのは好みじゃないみたいですね。というので、きりっと執事スタイル、かっこよくまとめてみましたというの。いいじゃないですか! と、この展開の陰でまるで希望を聞いてもらえないアオが、私もあっちがいいばかりいってたのがおかしくって、ほんと、スズさん、アオ相手だと容赦がない。
文化祭で展示する地図のいろいろを紹介してくれた今回。気象のナナは天気図を、石のチカは地質図を、天文班は星図を展示するというのを紹介する合間合間に、それら地図にまつわるトピックをちょこっと提示していったり、主題図の説明してくれたりと、ああ、やっぱり面白くてタメになる漫画ですね。こういうの大好きです。
メルカトルの宇宙図、これは知りませんでした。宇宙の地図と聞いて俄然宇宙が身近になったか、イノ先輩が食い入るように見入るの、こういう風に興味が広がるの、素晴しいなって思う。考えればこの漫画は、違う個性、違う興味が出会って、関わりあって、交差するうちに、影響し影響されて、ともに深まっていく、そういうものを描いてきていました。ええ、やはりこの漫画は、出会い、広がる、そんな関係をこそ描いているのだとあらためて思わされた回でした。
- 『まんがタイムきららキャラット』第17巻第1号(2021年1月号)
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