『まんがタイムきららMAX』2021年1月号、発売されました。表紙は『ご注文はうさぎですか?』。ここは甘兎庵? 千夜に招き入れられるその先には和装のココアとリゼがいるのですね。いつもとは違う雰囲気、とはいえ、ちょこっと舌を出してるココアとか、どうしてもいつものココア感が出てしまうわけですが、頭にあんこを乗せてるの、このへんいつもと違う感? ココアの顔を覗き込んでるみたいなあんこがおかしいですよ。おしとやかリゼとかね、髪にはティッピーのアクセサリー飾りまして、とても素敵なお嬢さんに仕上がっていますよね。
今月は新規ゲストが1本です。
『桔香ちゃんは悪役令嬢になりたい』
お、はやりの悪役令嬢もの!? と思ったら、な、なんか違うぞ……? ここは小学校。悪役令嬢を自称する桔香嬢が大見得切って登場するも、クラスはシーン、桔香はぽつん。ひとりぼっちのこの子の焦り。いったいどうしたのかと思ったら、そのキャラクター、今日からなのかい! いやもう、泣くほどならそういうのは諦めて、静かに落ち着いて地味キャラ追求していけばいいじゃないか。
クラスでも地味な少女、桃虎絃に狙いを定めて、桔香、いろいろアプローチかけていくんだけど、この空回りよ! 見ていてつらくなる! 実際、絃からも痛いといわれてしまって、うん、そうなんだよ、将来振り返った時に転げまわることになるよ、桔香さん。映画に感化されてその気になったのはわかったけれど、根の優しいあなたにはこのキャラクターは向いてない。
いや、向いてないからこそ憧れたのかも知れませんね。
自分にないものを物語の悪役令嬢に見出して、三船桔香は悪役令嬢に憧れるようになったのだ! それはかっこよさ? 自分にはなかなかできない我を押し通すこと? それらはおいおい語られるようになるのかも知れないけれど、新しい自分のありように夢見て、空回りながらも、絃にいいように使われながらも、時には威圧されながらも頑張る桔香。
うん、向いてない……、向いてないよ……。
ある意味、絃がつきあってくれるの、これ、桔香にはいいことなのかも。少なくとも絃は酷いことしなさそうだし。と、ちょっと安心しながらも、でも桔香の行く末、大丈夫なのかなって。ええ、到底悪役には向かない素直さなんですものね。
『ご注文はうさぎですか?』
学校でマヤ、メグと再会したエルにナツメ。チノとも再会すべく、チノの働く喫茶店を探っているのだけど、マヤとメグが教えてくれない! なぜ!? と思ったら、ちょっとした嫉妬心。ちょっともったいぶってるのも可愛いですよね。
今回、エルとナツメ、ふたり別行動してのチノ探し。その途上で、エルは甘兎に、ナツメはフルール・ド・ラパンに辿り着いて、思わぬ才能!? 千夜とのシンパシーを発揮させるエルとか、そして意図せずマヤを褒めまくって赤面させまくるナツメとか、このやりとりの面白さ。これは魅力的でした。
と、今回、ここに感想書こうと思ったの、落ちの威力だったんですよ。メグ、マヤからそれぞれラビットハウスの情報を得たふたりが来店したらば、そこはまさかのバータイム!
チノとの再会!? と思ったところからの、静かにパタンと間違えましたの展開、落差にもう笑いがこみあげてしかたありませんでした。
この誤解。次回には解消されるのかな? だとしたら感動の再会は次回におあずけですね。
『こみっくがーるず』
今回はミキの心情にこれでもかと迫って、その気持ちの揺れ動き、ついに到達した結論にクローズアップしていくその際の、丁寧に、ほんの小さな心の震えもとりこぼすまいとするかのような繊細な筆致に引き込まれるようにして読みました。
ミキが描かれる時は、いつだって繊細だと思う。しかも今回は、怒りんぼのミキがくりすのいってること、おべんちゃらでも気休めでもない、本当の本気でミキのこといいっていってくれてたんだって理解して、素直に自分の気持ちをあらわしていくでしょう。そのために、よりいっそうに繊細さを増して、その表情のひとつひとつが、目の運び、眉の動き、ほんのささやかな手の表情にいたるまでが、ミキの思いをつぶさに描いて、伝えてくる。
翼のミキへのアドバイス。主人公の気持ちにどうよりそうか。ミキについての幸せと最悪の展開というもの、それがここにまざまざと描き出されていたと思うのです。今のミキは、この子の決意したそれは、作者にとって自分のことのようによりそった結果なのでしょうか。それはわからない。ミキの思いのいろいろは押し付けがましく迫ってくるようなものではなく、そのそばに、そっと読者もともによりそうことのできる、そんな余白を置いてくれているでしょう?
多くの人がミキのことを思って、自分のことみたいによりそえる、そんなエピソードでした。静かに、けれど圧巻でした。
それだけに、くりすの狼狽、これに助けられました。この子にちょっと引き戻してもらえた気がします。でも、ほんと、ぢょきん! って! この狼藉、この騒動、どうなっちゃうのか。どんな結果になったとしても、ミキにとってくりすが助けや支えになってくれたらば、そう願うばかりです。
- 『まんがタイムきららMAX』第18巻第1号(2021年1月号)
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