『まんがタウン』2020年12月号、昨日の続きです。
『君と銀木犀に』
もう子供でなく、まだ大人でもない、そんな年齢だからこその悩みといっていいのでしょうか。母との口論。いや、口論というよりも子供らしいわがままと、シビアな現実に直面せざるを得ない母との見解の相違。いや、ただ単にこづかい増額を求めてるだけなんですけど、母はつらいよね。あげられるもんならあげたいけれど、できることにはおのずと限界がある。泉は、まだそうしたことを聞き分けられるほどに成熟はしていなかったか。けれど、だからといって母を傷つけるようなことをいってしまったこと、そのことに自身も傷ついてしまって……。
葉介との会話のさなか、突然に母とのことがリフレインして、唐突に涙をこぼしはじめた泉の姿。理由もいわない泉に戸惑いながらも、精一杯の声をかけ続ける葉介、響きますよね。これ、きっと泉にも響いていたんだと思う。とか思ってたら、さらなる精一杯を見せてくれた葉介。これ、泣けるよな。具体的なことはなにもわからないはずなのに、それでもわかってるんだっていうそのことが、葉介もきっとこうしたこと思った日があったんだ。そうしたこと思わせるんですね。
葉介の言葉が響いたのは、自分にもこうした日があったからなのでしょう。きっと誰もに響きうる。そんな言葉であると思うのです。
『立ち呑み布袋でもう一杯』
今日は無口なお客さん、熊田氏が話題となったのですが、クール? ハードボイルド? 一言も発することなくひとり静かに飲んで去っていく。とはいうけど、なにもいわないでもビールが出てくるとかじゃなく、筆談でちゃんと注文するんだね。こうしたところにナンセンスが滲んでるなあ、なんて思ったら、話が進むにしたがって、どんどんいろいろ見えてくる熊田氏の真実。SNSアカウント、把握されてるんだ! しかも可愛いクマキャラで可愛いtweetしちゃうんだ! このギャップ!
店では寡黙でクール。きっとそういう人なんだろうなと思ったら、実は違うんですよっていうのが面白い。人というのは、単純に一面的に捉えられないものなんだなっての体現しているかのよう。それこそ、誰しも表向きにしていない顔がある、みたいに思ってもいいのかな? これきっと誰もがそう。表の顔と個人の世界。その違いがあること。また表の顔もひとりひとりそれぞれということ。その多様性に多面性が描かれて、ああ、この漫画のテーマは人なんだなあってあらためて思わせてくれる、そんなよさがありました。
熊田さん、また出てくるかな? 無口のままでいいから、なんらかまた関わってきてくれると嬉しいかも。そんな独特の魅力ある人であります。
- 『まんがタウン』第21巻第12号(2020年12月号)
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