『ご注文はうさぎですか?』
ティッピーの体を借りていたおじいちゃんが去ってしまいました。それでこの漫画の読み方、読まれ方もまた違ってしまうのではないか。そのようなことを考えていて、というのも私がこの漫画を読んでいる時、読者の代理人としての役割を担っているのが他ならぬティッピー、すなわちおじいちゃんだったからです。
おじいちゃんの退場したことで、物語中における視点、気持ちの寄せどころを失う読者もいるのではないかと感じているのです。
中高生女子の交流を描いているこの漫画において、どこに気持ちを寄せていくのか、どのポジションに自分を置くのかは、時と場合によってもちろん変わるものの、気づけばティッピーの、祖父の視点だったという人はそれなりにいるのではないかと思うのです。
時ににぎやかで、華やかさ、愛らしさふりまくこの漫画ですが、成長途中の子らの不安や苦手に直面する様子も描かれてきたのもまたこの漫画でした。また大人であっても迷い、思い悩むことがあると描かれることもありました。
そうした時に彼女らを近くで見守ってきたのは、他ならぬティッピー、おじいちゃんでありました。
心配しながらも距離を保ち、しかし時にそっと助言をする。その距離感は親のそれとも違い、友人のそれともまた違う、近すぎもせず、けれど遠くもない、独特のものがあったと感じています。見守るという言葉がおそらくはもっともしっくりとくる、そんなポジションで、そしてそのスタンスは基本彼女らの問題に介入することのできない読者のそれにも近しかった。
ただただ見守り、うまく事態の推移することを願う。読者のそうした視点をティッピーが導いてくれていた。しあわせに、すこやかに成長していって欲しいと思う気持ちが、おじいちゃんの思いに重ねられていた。そう思うことがしばしばあって、だからこそおじいちゃんの助言は、なにもできない読者としての私にかわって彼女たちの世界に働きかけてくれる、見守るものたちが託した希望でもあったように感じていました。
そのおじいちゃんが去ってしまって、読者としての私の気持ちの置きどころは変わっていくのだろうか。それはこの先を読んでみないことにはわからない。けれど、確かにあった共感のようなものは、おじいちゃんと一緒により遠くへと去ってしまい、その遠くかなたから見守るという感覚のより強くなるだろうことを予感させています。
『瑠東さんには敵いません!』
夏休みに入ってやる気が消え失せたという和村ちゃん。いや、そこまでなんもせんってことある? ただソファーに横になってるだけって、どえらい時間の浪費やな。妹百々からも、漫画全巻一気読みするっていってなかったかと問われるも、まるでやる気の出ない和村。
これ、一冊でもいいから手にして開いてみたらきっと変わるんだろうな。なにかやりださないことにはやる気は出ないようにできている。ゲームでもテレビ番組でも、気合い入れる必要ないから適当に触れてみれば、そのゆるみきったやる気も少しは回復するのでは?
と思っていたところに瑠東からメッセージ。いろいろ駆け引き考えて、返事を遅らせている和村だけど、遅らせたら遅らせたでめんどくさいやつやぞ。で、メッセージ開いてみたらなにやら緊急事態という。死んでしまうとか物騒なこといっていて、いったいなにごとかと思ったら、あー、和村ちゃんが足りないのか。ほんと、瑠東は和村のことが好きなんだね。でもって、取り乱した和村の返信見て、なんか大切に思われてること実感しちゃってる。だからって、あんまり和村のことからかいすぎたらこじれそうだから、ほどほどにしないといけないやつですよ。
ここからのふたりのやり取り。瑠東が写真を送ってくるんだけど、ああ、和村とは全然タイプが違うよね。毎日、誰かしらとどこかしらいってる。そんな写真に和村ったら圧倒されちゃって、でもそんな楽しい時間を過ごしながらも、瑠東は和村を求めてしまわずにはおられない。和村、それほどに愛されてるんですね。
和村の写真欲しさに、ひとつ引っ掛けを仕掛ける瑠東。写真を送ってくれないならと、電話をかけてビデオ通話、その画面に写った瞬間の和村をスクリーンショット! こういう手があるんだ。
和村は見事にしてやられてますけど、なんかこういうやり取り、いちゃいちゃしてますよね。ほんと、ふたりの関係、もっと互いに素直になればまた違った局面も見えてくるのに、って思う距離感。ちょっといろいろがもどかしいやつです。
『SAN値直葬!闇バイト』
ほんとにヤバい漫画だよなあ。ビジュアルがヤバい。きらら系がいうDOKIDOKI☆VISUALのドキドキって、こういうドキドキではなかった気がする。
夜な夜な悪夢にうなされるこよ。まがまがしいなにかが自分を探しうごめいている。夢だというのに具体的な身の危険を感じるこよが考える原因は、闇バイト。うん、絶対そうだと思う。で、店長に相談すべく店にいくんだけど、うまいこといいくるめられて、うまいこと働かされてるやんか! こよさん、ちょろいなあ。心配になる。というか、普通の人間はこの店長を前にして優位に立てるとか、ちょっとないと思う。ということは、あかり、あいつ相当なやつなんだろうなあ。
暗黒ぬいの血抜きなんてことやらされてるこよですよ。ほっとくと力を取り戻す、つまり元通りになっちゃうというんですが、買っていかれた暗黒ぬいどもは、買われた先で復活したりせんもんなの!? いずれにしても、なんかあやしいの召喚させられて血を吸わせてるこよ。この目玉ぎょろぎょろの内臓みたいなの直視しても正気を保ててるとか、こよもずいぶん強くなりましたよね。
と、ここで突然現れた女の子。暗黒ぬいに興味を示すのですが、どう見てもあやしい。というか、この店に出入りする時点でまともな存在ではないぞこよ。気をつけろ、近づくな、と思うも、あーあー、なんか交流持っちゃった。
ほんと、この漫画、ぞっとさせる展開がうまいと思う。まさかこの子がいっていたお父さんというのが、こよが夢に見るあの黒い巨大なぐねぐねだとか思わないじゃない。夢の中で捕まえられないからと、娘? をこよのもとに派遣して、そのつながりでもって、夢の中、隠れ場所を補足させた? ほんと、迫りくる恐怖、ただものではありません。で、こよはこのピンチをひとりで切り抜けないといけないの? 無理では!? こよだよ!?
あかりが役に立たない状況で、まさかあの店長が助けにきてくれるとは思えないんですよね。となると、どうやって切り抜けることになるのか。こよ、一世一代の見せ場ですね。