2022年11月24日木曜日

『まんがタイムきららフォワード』2023年1月号

 『まんがタイムきららフォワード』2023年1月号、発売されました。表紙は『アネモネは熱を帯びる』。凪紗と茉白、ふたりの世界といった雰囲気ある表紙。これもバックハグの一種なのでしょうか。後ろから凪紗の頭を抱えるようにして頬を寄せていく茉白。それに応えるように顔を上げた凪紗の目が茉白のそれとあうのですね。互いに相手の目を覗き込むかのような見つめあい。そこにはやはりふたりの世界があるのでは。言葉ではなく、目と目で思いを通じあわせる、そうした感じがするのですね。

今月は新連載1本、新規ゲストが2本です。

『薪窯のパンドラ』

祖父から継いだパンの店。薪を起こして熱した石窯で焼くパン。効率的かといわれるとそうではないですよね。けれどこの店、パンドラはずっとそうしてきたのでしょう。祖父から学んだことを思い出しながらパンの準備を進めるものの、祖父のようにはうまくできない。悪戦苦闘しながらも、パンに、薪窯に向きあう高校2年生、蓬莱恵理と、彼女の店に突然飛び込んできた同じく高校2年生の野々宮麦。ふたりのともに店を切り盛りしていく、そんなお話であるようです。

人とのコミュニケーションが苦手な恵理。人懐こいというか空気を読まない麦という違ったキャラクターが、その異なる個性をもって互いにないものを埋めあっていくのでしょうか。

初回である今回は、恵理の焼いたバゲットが麦の空腹を埋めていましたね。

けれど麦と話していたらパン生地を発酵させすぎてしまって、大変。なかなかなんでもうまくはいかない、そんなところからのスタート。恵理の今後、いろいろと大変そうです。

『君の笑った顔がみたい』

東京でのモデルの仕事、ひいては人間関係に失敗して、祖母の暮らす田舎へと引っ越してきた女の子、渡辺沙姫。まだ人が怖い、心から信じることができないという沙姫の出会った女の子。元気で活発な、三宅あやことの交流がこの子の心の傷を癒していく。そうした関係の第一歩が描かれた掌編でありました。

三宅あやこ、みゃーこの助け船が的確でしたよね。東京からの転校生は珍しい? ぐいぐいとくるクラスメイトを前に言葉の出なくなっていく沙姫に、さっと緊張してるだけだろうっていってくれて、ここからもマイペースながら屈託なく笑みを注いでくれるみゃーこの存在感。不思議と押しつけがましくなく、むしろ沙姫がひとりでいる時間、ひとりでいられる場所をも作ってくれている、そうしたところにみゃーこの優しさのようなもの、感じたように思いました。

みゃーこのよさは屈託のなさですよね。裏表もないように思える、その人柄が沙姫を安心させてくれたのかも。そうした気持ちの近づいて、やわらいでいく様子など大変よかったです。

『散歩名人』

不思議な漫画だ!

主人公琴葉が師匠と仰ぐ散歩名人。なんと登場が側溝に胸までハマった姿というのですが、一種の妖怪かなにかかと思わせるこのインパクト。けれど散歩を楽しむことにかけては抜群の才能? を持っていて、そんな師匠と一緒にする散歩が琴葉にとっては大切な時間となっているんですね。

さて、散歩名人にバトル発生。競歩名人のサヤがバトルを申し込んできた! って、マジか。競歩名人がもうわからんのだが、この町一番の競歩の達人に駅前までの勝負を申し込まれて、散歩と競歩なら散歩が不利では!? 心配する琴葉を尻目に、散歩名人、その勝負を受けるのですね。

しかしここからの勝負、目的地は決まっているけれどルートは自由なんですね。他人の家の敷地を通ってる? からの塀の上を歩いて、茂みを通り、草にまみれながらも自由闊達に駅への近道を楽しんでいる散歩名人。

やってることは普通に駅に向かってるだけなんですけど、それでも不思議な味わいのある漫画でした。

しかも最後に競歩名人とも和解。一緒にクレープ食べつつ散歩で終えるという、そのほほえましさ、おかしみをくすぐる落着につりこまれて思わず笑みが出てしまう。そんなよさありました。

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