2020年11月2日月曜日

『まんがホーム』2020年12月号

 『まんがホーム』2020年12月号、発売されました。表紙は『らいか・デイズ』らいかが赤頭巾の姿で登場です。今回のテーマはおとぎ話、童話、昔話なんですね。かくしてらいかは真っ赤な頭巾をかぶりまして、手には赤頭巾の童話の本でしょうか。『孔明のヨメ。』は孔明、月英夫妻が白いわんこと一緒に小判をざくざく、正直じいさん掘ったれば、でありますね。『天下分け目の小早川くん』は熊、鬼、そして金太郎。ええ、もういうまでもない、坂田金時の大江山の鬼退治でありますね。

『恋はリベンジのあとで』

今回は石田サイドの事情がメインに描かれましたね。婚約者? 恋人とのすれ違い。部屋の収納にポカンと空いたスペース。恋人、愛実の雑誌があった場所、少し前に処分したというんですが、それをえらいと石田がいったら愛実の見せた悲しそうな、困ったような表情。いったいなにごと? その理由、後からわかるんですね。

ずっと節約をしていたという愛実のちょっとした生活の変化。そうしたことの理由もわかったように思う。自分の結婚式への憧れ、それを石田に否定されたように感じた。それからじわじわと気持ちが冷めてきている? 石田と会う機会も減らしているの、ああ、石田との結婚を考えなおしているのか。

愛実の処分した雑誌、それは結婚情報誌。というか、石田が決定的に対話不足なんだと思う。本題を本代と聞き違えた時の反応もそうだけど、すぐに感情的に反応する。自分の考え優先で、相手の心情汲もうとしない。これ、愛実に対してもそうだけど、専務がらみでの泉とのやりとりにしても同じように思う。泉にあうかは別として、愛実にこの人はあわないと思う。以前からずっといってましたけど、今回のエピソード、決定的にそれを感じさせてきましたよ。

『ちくちく推して』

えりかの集中力のなさ! 漫画のプロット作らないといけないのに、衣装作ろうと買ってきた布が気になってしかたない。で、気づいたら生地を掛布団がわりにして寝ちゃってるというのね、難儀な性分だなあとは思うけど、しかたない、気持ちが好きなこと、興味あることに引っ張られるの、それはしょうがない。とは思うけど、この人はちょっとその気持ちが強すぎるのかも。妹が部屋にくるたびに、生地を抱いて、羽織って寝ているというの。うん、まずは寝ちゃって、気分を完全に切り替えた方がいいんじゃないかな。

今回よかったなあって思うの、妹からの結構辛辣な指摘を受けて、一瞬気色ばむも素直に受け入れて一緒にプロット完成させたくだりでしたよ。冷静というかきっちりしてる妹と、移り気むら気ながらもやりたいことに邁進する姉、そのふたりの個性がすごくよくマッチしてて、いいコンビなんだなって思ったのですよ。

そして知って感心したの、背の小さい姉の衣服についての苦労話。いいなと思っても着丈が長いと着られないみたいなの。へー、そうなんだー。ふーん、大変なんだなー。うなずきながら読むようなところありまして、スキニーはいたりハイウエストな服にしたりというの、ああ、確かにその意図するところ、よく理解できるし、その絵がまた可愛い。こんな小さなコマに、ちんまり描かれてるのがもったいないなあ、ってくらいチャーミングだったと思いますよ。でもって、パンツの丈にまつわる失敗。大変だな、高いヒールは足に負担かかるからそれも大変だなあって、そうしたえりかのいろいろに触れてこの人のことよくよく知ることのできたように感じたところだったから、続く妹さくらの指摘、この説得力も増したんだよなあ、そんな風に思ったんですね。

『孔明のヨメ。』

長坂の戦いの肝となるエピソード、今回、山盛りにされてきましたね。曹操の追撃から逃がれるべく、先へ先へと逃がれる劉備。対し趙雲はひとり馬を駆り、列から落伍した劉備の夫人と子の救出に向かう。このくだり、まさしくこの戦いの見せ場中の見せ場といえる。今回ともに描かれた長坂橋にて追手を迎え撃たんと立ちはだかる張飛とともに、欠くことのできないものだったと思っていたから、いつ、どのようにこれが描かれるのかと待ちに待っていた。それだけに、ついに、ついにと、思いも熱く読みましたよ。

今回、張飛の見せ場も迫力満点、力感あふれる描かれかたしていたわけですが、主となるのは趙雲の単騎駆け。甘夫人を救出し、続き糜夫人と阿斗を探し出すも、足手纏いになってはいけないと井戸に身を投げる糜夫人。このくだり、夫人の心情、切々と叙情をともに描き出して、子を思う母の姿、自身の役割に思い悩み、そしてついに決断に踏み切るまでの糜夫人の思いの移り行く様。本来求められた役割を担うことのできなかった自分が、趙雲の言葉に報われ、救われたと思ったところから、むしろ安らかな気持ちで自身の考える最善を選ぶにいたる、その様。残された趙雲の絶望感もまた色濃く、それだけに阿斗を劉備のもとに送り届けた時の彼の姿、強く心に訴えるものがあった。

作者としても、ここをひとつの山場として描こうと、かなり力を注がれたのでしょう。力感たっぷり、情感もまた深く、まさしくドラマティックな場でありました。

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