『三者三葉』の二巻が発売ですよ。
『三者三葉』は、かの一部で大注目赤丸急上昇中(といっても随分落ち着いたもんだけど)の萌え四コマ誌『まんがタイムきらら』にて連載中のタイトルで、例によって私、この漫画大好きです。いや、例によってじゃないですね。多分、私はこの漫画が、きらら連載陣の中で一番好きです。
なぜか? 実に単純な話でして、私はこの漫画を読むためにきららを買いはじめたのです。『三者三葉』がなければ、私はおそらく今もきららを講読することはなく、一部の単行本 — 例えばナントカのとか海藍とか — を単発で買うに留まったでしょう。そんな、保守的四コマ読みであった私が革新系きららに手を出して、どんどん深みにはまって……、うう、お恨み申し上げますよ……。
恨んでるなんてのはもちろん冗談ですよ。むしろ、世界が広がったと感謝するくらいであります。もし、あの時『三者三葉』の再録を後野まつりセレクションで読んでいなかったら、今私の好きな漫画群には出会えていませんでした。読んでいる四コマにしても、今の半分にも満たないはず。ということは、買う雑誌数が少ないってことだから、自室の混乱はもう少しましだったわけか……。やっぱりお恨み申し上げます……。
私がこの漫画の魅力に落ちたのは、三人がお互いにあだ名を付けあおうという話 — 実にそれは第三話であったのですが、思えばこのときの名付け話が、後々の三人の傾向を決定づけるような位置にあるのですね。三人の娘と、葉子様を慕うスーパー(元)使用人山路さんの性格やなんかがこの三回でしっかり提示されて、あとはもう転がるばかり。その転がりようが私には楽しくて、結局きらら誌を買うまでにいたったのであります。
この漫画を説明するのに一番いい表現というのは、標準的ということであると思っています。見た目には可愛いキャラクターのどたばたでありますが、基本的な部分、キャラクターの設定やプロット、話の回し方なんかには、これといって強烈な破格はありません。むしろうまく類型を利用して、話を破綻なく、そつなくまとめるのに長けた人であると感じました。
キャラにはキャラの類型があります。見せ方には見せ方の類型があって、ネタ自体も冒険するほうではないのですが、その類型の組み合わせがうまいのでしょう。奇をてらって自爆するようなことが決してないから、毎月を楽しみに待って、毎月を楽しく読める安定性が嬉しい。その安定も低位中位の安定ではなく、常に高目と来ているのですから、よほどの努力が裏にあるのだと思います。ええ、私は、スタンダードをスタンダードに見せるってのは、一番難しいことだと思っていますから。
基本的に安打型の漫画だと思っているのですが、二巻に入ればキャラクターもこなれ、また登場人物も増えて、ヒットが二塁打に、二塁打が三塁打にと、どんどん面白さが伸びています。夏の別荘編(なんと二回連続だ!)にいたっては、堂々のホームランであったと、見事なランニングホームランであったと。私は今でも、この話を読んだときのシチュエーションを、まざまざ思い出すことができるくらいで、それくらい印象が強く、現実における感覚も含めて記憶に焼き付けてしまって、こんな当りというのはそうそうあるものではありません。実に大当たりでありました。
作者は『三者三葉』以外にも連載をもってらして、そのどれもがほのぼの路線(裏には毒があるんだけどさ)の可愛くて楽しい漫画なんですね。それでもって、複数のタイトルが同一の世界を共有しているのです。私は基本的に、こういうのが表立つのは好きではないのですが、なぜか荒井さんの漫画に関しては、いやな気がしません。むしろ、すごく面白く感じるので、これは非常に私の嗜好に合った漫画であったのだなと思っています。
ここらで一応、蛇足として好きなキャラクターなぞを。
そりゃもう、誰がなんといおうと私はスーパー使用人山路さん(山G)が好きなのですが、彼が活躍する回はもう間違いなく面白いと思っているのですが、彼に関してはちょっとおいておいて、となると、主人公小田切双葉が可愛いと思います。これは実に面白いことで、私はメインの主人公には魅かれず、たいてい好きになるのは目立たないマイナーキャラと決まっているのに、この漫画に関しては主人公ですよ。ええ、実に珍しいことですよ。
えーと、双葉というのは一巻表紙では一番右、二巻では左にいる、髪の短い女の子です。ええ、一番可愛いと思います。
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