最初は四コマ専門誌の一新人に過ぎなかった人が、あれよあれよと人気になって、雑誌の看板になって、CDドラマも出て、なんだかすごいなと傍観してたら、英語版が出る運びになりました。うわあ、びっくり。欧米でジャパニーズマンガが人気というのは心底思い知っていますが、まさか今の段階で『トリコロ』翻訳が出版されるほどに広がってるとは思いませんでした。いや、あるいは出版社が売り込んだのでしょうか。
いずれにせよ、快挙であると思います。海藍さん、おめでとうございます。
この人の描く漫画は、いまのところ『トリコロ』しか単行本化されておらず、また『トリコロ』以外の連載も軒並み終了休止と、読み手としてはちょっと残念な状況になっています。私、『ママはトラブル標準装備』が好きで、特に猫としては非常に器用なうなが好きだったのですが、これはきっぱり終了して、バックナンバーで読むほかない。うーん、残念です。『トリコロ』とは違うノリがあって、海藍のプリミティブな側面も見られてすごくいい雰囲気だったのですが、まあ終わってしまったことをいつまでもくよくよいうのはよくありません。
『トリコロ』はポスト『あずまんが大王』を狙って企画された、戦略的タイトルだったんですね。女の子たちのぬるい日常と語られることの多いジャンルで、確かに『トリコロ』もそういった構図を内にはらんでいます。けれど、結果的に『トリコロ』は『あずまんが大王』とはまったく違う漫画にできあがってしまって、そしてそこが当たったんですね。
二匹目のドジョウを狙いながら、ドジョウになり得なかったところが『トリコロ』の持ち味でしょう。それは多分海藍という人が、狭い漫画の世界に埋もれて、その過去作品の断片から自作を指向するのではなく、全然違うアプローチで持って取り組んだ結果なのだと思うのです。実際、この人は担当編集者に『あずまんが大王』を求められるまで、『あずまんが大王』を知らなかったというらしいのですから。
多分この人は自分の作るものにしっかりとした世界を構築することを求める、ある種完璧主義の人で、またある意味たいへん朴訥に不器用で、なにかを真似しようとしても決まって全然違う、どうしたって自分の持ち味が出てしまうタイプの作家なのだと思います。これまでの足跡をてんてんたどってみれば、いろいろ試行錯誤しながら進んでこられたことは明らかで、だからこの先もうまく、楽しみながら進んでいってくださると、読者としても嬉しいなあ。と、私はそんな風に思うのです。
- Hai-ran Tori Koro : Tri Color. vol. 1. California : ComicsOne, 2005.
- Hai-ran Tori Koro : Tri Color. vol. 2. Diamond Comic Distributors, 2005.
- 海藍『トリコロ』第1巻 (まんがタイムきららコミックス) 東京:芳文社,2003年。
- 海藍『トリコロ』第2巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2004年。
- 以下続刊
- 海藍『トリコロプレミアム』(まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2004年。
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