2004年11月11日木曜日

グラン・ブルー

 私はこの映画でジャン・レノを知って、だからこの人がどんな役をやったとしても、どこかにエンゾを見ようとしてしまうんですね。しかし本来脇役であるはずのエンゾの魅力的なことったら、主役のジャン・マルク・バール演ずるジャックを押しのけてしまっているようではないですか。いや、ジャックももちろん魅力では負けていません。ですが、確かに魅力的ではあるのですが、私には、人懐こさや悲しいまでのひた向きさが一堂に会したみたいなエンゾが主役以上に魅力的に映ったのです。

多分、こういう人ってたくさんいますよね。

さて、エンゾ好きという点では多数派に属する(のかな?)私ですが、実はこの映画でもう一点好きなところがありまして、そちらに関してはおそらく少数派です。

どんなシーン? といいますと、潜水の大会にやってきた日本人集団が、なんだか身内だけで変な盛り上がりを見せて、結局選手がプレッシャーで駄目になっちゃうというところ。私、このシーンがすごく好きです。

なんで日本人がこんなけったいな描かれ方してるのに好きなのか、それはこのシーンに日本人像がうまくでている、日本の中にいるとそれほど異質には思わない身内だけで固まる閉鎖性、変に馴れ合っている気持ち悪さが表現されていると思うからなんですね。私、この身内で凝り固まるの、大嫌いなんですよ。ほら集団が個人を包摂している感覚、そこには個人の意識よりも集団の論理が優先されていて、みんな息苦しさを感じながらけれどあえてその集団制を維持しようと努めている奇妙さ。大っ嫌いです。なので、初めてこの映画を見たのは小学生だったか中学に入っていたか、それくらいの頃だったと思いますが、よくやってくれた! と心中喝采しました。自分の中にあった日常の違和感が、見事にかたちになった瞬間だったのです。

対してジャックとエンゾはどこまでも個人で、自分の信念やプライドが大きすぎるために、他者よりもロマンを優先してしまうのですね。家族も恋人も顧みることなく、一途に自分の目標に邁進する。これ、周りの人間にすればたまらん話ですよ。けれど私は、こうした生き方に非常に共鳴してしまってしびれたのです。ああ、こんな風に生きられたらなんて素晴らしいだろうかと思ったのです。

だから、チャンスがあればエンゾやジャックみたいにしようと思ってる私です。周りには迷惑をかけるか知らないけれど、留まることで澱んでしまうのなら、私は一生流れる水でありたい。理想にまっすぐ目を向けて逸らさない意志を持ちたいと願うのです。

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