2004年11月14日日曜日

ツレちゃんのゆううつ

  『ツレちゃんのゆううつ』、好きでした。ヤングジャンプに連載されていた漫画で、けれど青年誌らしい血気盛んさとかからは無縁の穏やかな時間が流れる小品でした。ちょっと女性的な感性があって、けれど男性的な視点もあって、その中性的な感じが面白く、心地よく読めました。

もう、ツレちゃんが終わってから十年経つんですね。著者による自薦集が文庫になってるのを見て、ちょっと感慨が沸いたのでした。

この漫画の見どころといえば、もうツレちゃんでしょう。可愛いんですよ。基本的にとっても素直で、けどいつもツレちゃんを困らせるちょびっと怠惰で甘えん坊のお母さんに怒ってすねてみたりする、そうした表情仕種がすごく可愛い。けなげなツレちゃんと、ずぼらさに色気が漂うお母さんのバランスが、すごく絶妙で理想的で、ああいいなあと思う。そういう漫画でした。

思い返せば、九十年代当初はまだ癒し癒しといわれなかった時代で、それゆえツレちゃんには新鮮味がありました。それに、後の癒しブームに乗っかって出て来るのが、どこまでいってもブームの後追いでしかなかったのに比べて、ツレちゃんはすごく魅力的なんですね。ほら、なんていったらいいのかな、結局はやりにすがった亜流なんてやつはブームの終わりとともに一緒に消えていくんです。けどツレちゃんにはそんな時流にまどうところがなく、ちゃんとツレちゃんの世界をつくりあげていた。だからこそ、ちゃんと覚えている人は覚えています。懐かしく思い出す人がいます。これは、やっぱりツレちゃんとお母さんの世界が魅力的で、一過性のものではなかったという証拠なのだと思います。

  • 三島たけし『ツレちゃんのゆううつ』第1巻 (ヤングジャンプコミックスワイド版) 東京:集英社,1990年。
  • 三島たけし『ツレちゃんのゆううつ』第2巻 (ヤングジャンプコミックスワイド版) 東京:集英社,1990年。
  • 三島たけし『ツレちゃんのゆううつ』第3巻 (ヤングジャンプコミックスワイド版) 東京:集英社,1990年。
  • 三島たけし『ツレちゃんのゆううつ』第4巻 (ヤングジャンプコミックスワイド版) 東京:集英社,1991年。
  • 三島たけし『ツレちゃんのゆううつ』第5巻 (ヤングジャンプコミックスワイド版) 東京:集英社,1991年。
  • 三島たけし『ツレちゃんのゆううつ』第6巻 (ヤングジャンプコミックスワイド版) 東京:集英社,1992年。
  • 三島たけし『ツレちゃんのゆううつ』第7巻 (ヤングジャンプコミックスワイド版) 東京:集英社,1992年。
  • 三島たけし『ツレちゃんのゆううつ』第8巻 (ヤングジャンプコミックスワイド版) 東京:集英社,1992年。
  • 三島たけし『ツレちゃんのゆううつ』第9巻 (ヤングジャンプコミックスワイド版) 東京:集英社,1992年。
  • 三島たけし『ツレちゃんのゆううつ』第10巻 (ヤングジャンプコミックスワイド版) 東京:集英社,1993年。
  • 三島たけし『ツレちゃんのゆううつ』第11巻 (ヤングジャンプコミックスワイド版) 東京:集英社,1993年。
  • 三島たけし『ツレちゃんのゆううつ』第12巻 (ヤングジャンプコミックスワイド版) 東京:集英社,1993年。
  • 三島たけし『ツレちゃんのゆううつ』第13巻 (ヤングジャンプコミックスワイド版) 東京:集英社,1994年。

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