私が中国語を始めたのはこの漫画に出会ったからでして、もう何年前のことになりますか、たまたま寄った書店でちらりと見たOffice Youに掲載されていたのでした。そういえば、後日ちゃんとその掲載号を買ってまして、ええと、探してみたら1998年の10月号。うへえ、もう六年前になるんですね。こいつは驚きだ。
その回というのは「ぎょーかの逆襲 日本いかがですか?」、いや正確には「“なんだかなぁー日本 vs 中国”編」ですね。日本人が中国に対して驚くことがあるように、中国人も日本に来てみたらこんなにおかしなこといっぱいでびっくりだ、ということが紹介されてて面白かったのです。いやそれよりも、今世紀最強のイケてる中国女子大生「ぎょーか」
(当時)への興味が勝っていたような気もしないでもないのですが……
結局『中国いかがですか?』と、それから中国拳法の漫画『拳児』も手伝って、私の中で中国ブームが巻き起こったんですね。中国の雄大で大らかな部分ももちろん魅力ですが、日本とは違った異文化としての中国もまた面白く、その後学びはじめた中国語の語感、用語法もすごく興味深かった。それまではほとんど興味のなかった中国が、漫画をきっかけとして急速に身近なものとなっていって、結果的に私の視野は広がったのだと思います。
中国語を習いにいっていたのは二年間ほどでしたが、その時の老師や同学とのつきあいはまだ続いています。年に一度二度ほど集まって、老師を囲む会を開いているのですね。そして、今年の会はまさに今日行われておりまして、こうした人間関係の広がりもまた『中国いかがですか?』に導かれたものだと思うと、縁とは不思議なものでありますね。
老師を囲む会で、これが私が中国語を学ぼうと思ったきっかけですといって漫画を見せたら、老師が小田空という名前をご存じで、しかもそのプロフィールをよく知ってる。大学生として留学したのがきっかけで日本語を教えるようになり、その後教える場所を変えて云々、こうして老師が覚えていらっしゃるというのは、学生として日本にきて中国語を教えるようになったという、ある種似た足取りを経ているからなのではないかというように感じたのでした。
小田空の中国体験の面白いところは、中国の良いところだけを書くのではなくって、中国の悪いところ、遅れているところも全部含めて受け入れて、しかもその上愛しているというところなんだと思います。日本人からみればおかしな風習だと思うようなものも、明らかに政府主導が強すぎて不自然になっているところも、ちっとも信用できない公共機関や電化製品の数々も、その体験した当時にはきっと腹立たしく思ったりしただろうのに、振り返って漫画にするときにはよい思い出にしているんです。これはよっぽど中国という国にはまっていないとできないことだと思うのです。
そして、発展する中国を見て、その発展を喜んでいる小田空。私はその漫画に描かれたことを見て、同じように喜びたいと思ったのでした。一面的なイデオロギーやなんかに主導された受け取り方ではなく、地に降りて良い面も悪い面も体験し、そして大切に思う部分をしっかり抱きしめることができたからこその思いなのではないか。私なんかにしては、そういう感慨を抱けるこの人のあり方がすでにうらやましく、素敵なことだと思ったのです。
- 小田空『中国いかがですか?』(創美社コミックス) 東京:創美社,2000年。
- 小田空『中国いかがですか?』続 (創美社コミックス) 東京:創美社,2003年。
- 小田空『中国の思う壺』上 東京:旅行人,2001年。
- 小田空『中国の思う壺』下 東京:旅行人,2001年。
- 小田空『目のうろこ — 尻暗い観音ユーラシアひとり旅』(SGスペシャル) 東京:集英社,1991年。
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