2004年11月27日土曜日

ウインダリア

 昔がよかったというのは年寄りの常套句で、実際以上に過去を美化して今を顧みないという恥ずべき態度の表明、もう私は発展も変化もする余地のない、生きているだけの死人でありますよと自白するようなもので、できれば口にしたくない言葉です。ですが私はあえていいたいのです。アニメに関しては昔がよかった

そのよかった時代 — アニメが、他に頼るものもなく自ら自分の価値を確保しようと躍起で、まさに成長さなかであった時代に作られたのがこの『ウインダリア』でした。なにかこれまでになかったことをやろうという意欲にあふれて、できあがったのはこの玉のような作品だったのです。

私が『ウインダリア』をはじめて見たのは、関西ローカルの『アニメ大好き』という番組ででして、私くらいの年代のアニメ好きは皆口をそろえていうのですが、『アニメ大好き』はよかった。OVAを、高くてにわかには買えなかったOVA作品を、春夏冬といった休みの時期に、連日放送してくれるという素晴らしい番組だったのです。そこで『ウインダリア』が紹介されていて、もちろんステレオ、ノーカット(これが『アニメ大好き』のポリシー)。そして見終えて、私は泣きに泣きました。こんなに悲しい話があろうか、胸を締めつけて涙を絞りましたね。

このアニメの素晴らしいところは、その叙情性であったと思います。今歳をとってから見れば性急にも感じられる展開ですが、しかし登場人物の思いは丁寧に描かれていて、伏線の用意もその処理もきっちりと余すことなく、すべてはラストに向かって織り上げられてゆくのです。テーマは、口にするとどこか気恥ずかしさに身悶えしてしまいますが、ですね。信じること、信じて待つこと、そして裏切ったことへの後悔—。

物語はシンプルで、「童話めいた戦史」というサブタイトルも示すように、どことなく民話的でもあるのですが、ところが全編みずみずしく新鮮さにあふれています。これは、勃興するジャンルの躍動感に裏打ちされたためかも知れません。ひとつのテーマにすべてが集約する瞬間、一気に世界が展開し、物語内の感情は私たちの心に移って現実の思いに重なるんです。こういったカタルシスを得ることは、最近少なくなりました。それは私が老いたためかも知れません。ですがそれだけではないと私は思うのです。

余談ですが、『ウインダリア』には小説版もありまして、こちらは『ウィンダリア』、イが小さいんです。小説も素晴らしくよかったんです。ですが私は買わずにすましてしまった。これは後悔です。

ちょっと身近に探してみようかと思います。通販で買ってもいいんですけどね。

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