2004年11月13日土曜日

下弦の月

   書店で愛蔵版がでてるのを見て、懐かしくなりまでした。私はこの漫画が好きで、どういう風に話が展開していくのか、毎月毎月楽しみに読んでいたのです。小学生四人組の、いじらしくも前向きな姿やほのかに揺れる恋心がすごく美しくて、もう大切な大切な、宝物みたいな話だと思っています。

映画になったのだそうですね。ですが、おそらく私は見ないでしょう。

キャストを見ると、小学生四人組が中学生二人組に変えられていて、年齢が上がったのはわかります。あまりに大人びた感情の動きを実写で表現するには、やはり中学生であるほうが自然という判断だったのでしょう。けれど四人が二人になったのはやっぱり寂しい。映像であの込み入ったストーリーを追う関係上、人を減らして見通しのよさを得る以外になかったのだとは思いますが、この物語は白石蛍と香山沙絵のさざめく恋心も大切な軸であったと考える私にとっては、やっぱり寂しく思えるのです。子供たちが蛍を思いやり、その思いやりに蛍が応えたいと願う気持ちが描かれることと対照されることで、美月サイドの裏切りと逃避の物語が際立つように思えるのです。

けれども、美月サイドの視点から物語を追ってみたいという気持ちもあるんですね。裏切って傷つけてしまった人が昏睡状態であるという状況下で繰り広げられる心理劇、そこへ飛び込んでくる不思議な小学生たち! ヒューッ、なんかわくわくさせるじゃないですか。漫画が詳細にサスペンスを追いそこに仄かな恋愛劇を描いたのなら、どろどろの愛憎劇に吹き込んでくるミステリアスな子供たちというのもいけると思うのです。

映画は美月サイドを主人公にしているみたいなので、もしかしたら私の見たいと思っているものに近いのかも知れません。だから見れば結構いいと思いそうな気もするんですね(でも私は多分見ない)。

ところで、原作に見るアダムのギターは、多分オベーションがモデル(カスタムレジェンドあたりですね)。他にも、20th Anniversary Macintosh Spartacusが出て来るところもいかす!

そういった方面をご存じの方にも充分訴える、名作ですよ。

  • 矢沢あい『下弦の月』第1巻 (りぼんマスコットコミックス) 東京:集英社,1998年。
  • 矢沢あい『下弦の月』第2巻 (りぼんマスコットコミックス) 東京:集英社,1999年。
  • 矢沢あい『下弦の月』第3巻 (りぼんマスコットコミックス) 東京:集英社,1999年。
  • 矢沢あい『下弦の月 — Last quarter』上 (愛蔵版コミックス) 東京:集英社,2004年。
  • 矢沢あい『下弦の月 — Last quarter』下 (愛蔵版コミックス) 東京:集英社,2004年。

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