ポップスやなんかではベストアルバムをよく買っている私ですが、クラシックに関しては別。ベスト盤とかオムニバスとかは基本的に避けていて、というのもですね、抜粋されてるのが嫌いなんですよ。オペラとかオラトリオとかバレエ音楽とか劇付随音楽ならまだ我慢もしますけど、なんで全部聞いても二十分かからないようなソナタやなんかまで抜粋で聞きたがるのか。まとめて聞こうよ。と、こんな考えでいる私ですから、『G線上のアリア』とか大っ嫌いです(でもバッハの『管弦楽組曲 第3番 BWV1068』の「エア」は好き、いうまでもなく)。
つまり、なにがいいたいかといいますと、クラシックの抜粋オムニバスというのは、おいしいどこどりみたいに感じさせて、実際にはおいしい部分を捨ててしまってるといいたいんです。ソナタというのは、組曲というのは、まとめて聴いてよし、ばらして聴いてよし。でもその色々な聞き方ができる音楽を、お仕着せのオムニバスでしか知らないのはもったいないといいたいんですよ。
とかいいながら、私は『Sony Classical: Great Performances, 1903-1998』買っちゃってるんですよね。なんでだろ? なんでなんでしょう。
『Sony Classical: Great Performances, 1903-1998』は、その名のとおり、ソニークラシカルの名演を収録したアルバムでして、四枚組のボリュームが実に素敵。しかし本当に素敵なのは、その収録曲なのですよ。
なんというか、いかにも有名曲ばかり揃えました、って感じじゃないんですよ。もう聴き手に挑戦しているとしか思えないような曲も入っていて、Claude Bollingの『Suite for Flute and Jazz Piano: Baroque and Blue』なんて、どう聴いてもジャズ。まあ演奏してるんはランパルなので、クラシックといってもいいのかな(この考え方は間違ってるぞ!)。Eubie Blakeの自演による『Eubie's Classical Rag』てのも、クラシックじゃないよなあ。
けど、こうしたのりもよくハッピーな演奏が、いわゆるクラシック音楽の間に所々顔を出して、いやあ、本当にクラシックというのは幅の広いジャンルであるのだなと実感させてくれたものでした。
超有名曲も収録されていまして、聴いたことのある曲が聴きたいのっ、という要望にもお応えできるのも嬉しい点かと思います。例えば、ベートーヴェンの『エリーゼのために』。わたし、この曲、このアルバムでしか持ってません。そしてジョン・ウィリアムズ自演の『スター・ウォーズのテーマ』! いや、私、これもこのアルバムでしか持っていません。ジョン・ウィリアムズ作品は他にも『サモン・ザ・ヒーロー』が入っていて、これアトランタオリンピックのテーマ曲でした。
いやあ、実にクラシックというのは懐が深く、エンタテイメント性に富む音楽というのがわかるアルバムです。多分私、安売りかなんかで、なんか面白そうじゃんとかそんなのりで気軽に買ったんだと思うんですが、もう大当たりでした。何度聴いても楽しくて、何度聴いても飽きなくて、七面倒くさい顔して聴くばかりがクラシックじゃないぞ、と心から思った。
けれど、そう思えたのは、このアルバムの選曲が実に本気の選曲だったからですよ。クラシック入門だとかなんとかのための名曲集だとか、そんなおざなりアルバムとは一線を画す、まさにSony Classicalのプライドを持って編まれたものであろうかと思います。
いや、本当に名盤。このシリーズで、ジャズとかロックとかのアルバムもあるんですが、実は欲しいんですよね。クラシックでこの広がりなら、他のジャンルのもきっと満足させてくれるに違いありません。ええ、そういう気にさせてくれる、気合いのこもった最高のアルバムなのです。
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