2005年3月9日水曜日

カルミナ・ブラーナ

  『カルミナ・ブラーナ』といえば、今ではカール・オルフ作曲のものがあまりに有名でありますが、本来は中世の世俗歌曲だったりします。世俗歌曲は記録されることもなく、その時代時代に生まれ歌われ消えていく。そういう儚い一生をたどるものが一般的なのでありますが、ボイレンのベネディクト修道院で世俗歌曲を書き写した写本が発見されて、今も当時、十世紀ごろのヨーロッパで歌われていた世俗の響きを耳にすることができると、そういうわけなのですね。

『カルミナ・ブラーナ』というのは、ボイレンの歌曲集という意味のラテン語で、最近ではこの写本はボイレン由来ではないとかかんとかいうんだそうですが、そういうややこしいことは知りません。『カルミナ・ブラーナ』で覚えて問題ないです。

『カルミナ・ブラーナ』の主役はどういった人であるかといいますと、聖職者や学者、教師になるべく大学に学んだけれど、途中で嫌んなって飛び出してしまった、そういう人たち — ゴリアールと呼ばれる遍歴学生であったといいます。大学で学んだものだから知識や教養はあるし、自由大好きで権威大嫌いだから、酒や賭博、恋愛の歌を陽気に作ったかと思えば、やたら批判的なプロテストソングなんかも作っちゃう。日本でもフォーク・ムーブメントが盛り上がったときなんかは、そんな雰囲気でした。大学には入ったけど、ギターを弾いて仲間でわいわい騒いで、かといえば権力におもねることを好まず、プロテストソングを作っては歌う。

歌とその周辺というものは、時代を問わず同じなのかも知れないと思います。ゴリアールたちは、ヒッピーでロッカーでメタルでラッパーみたいな存在だったのでしょう、きっと。

一般的に知られた『カルミナ・ブラーナ』はカール・オルフ作だということはいいましたが、これは近代の作曲で、多分耳にすれば知ってるという人は多いかと思います。それくらい有名で、テレビとかでもよく使われてるんですね。かっこいい曲ですよ。

けど、実は私は大学に入るまでオルフの『カルミナ・ブラーナ』を知らなかったんです。大学にはいって、所属していたサクソフォンオーケストラの演奏会曲目を決めようというときに、『カルミナ・ブラーナ』を編曲してやったらどうだろう、きっとかっこいいよね、みたいな話が出たんですが、その時の私の頭にあったのはオルフじゃなくて中世のカルミナだったから、あの世俗曲をサックスでやるの??? とまったくわけがわからず、いやあ、恥ずかしいというか知識が偏っているというか、マイナー好みというのは昔からだというのがよくわかるエピソードです。

私が持っている『カルミナ・ブラーナ』のアルバムは、オワゾリールから出てたフィリップ・ピケットの抜粋版なのですが、本当は4枚組のほうが欲しかったんですね。けど4枚組はやっぱり高くて手が出なくて、そうしたら市場からは消えたんでしょうか、買えないみたいですね。すごくショックです。無理して買っとけばよかった。

買いそびれて悔しいってことは何度もありましたが、ピケットの『カルミナ・ブラーナ』も本当にそうでした。けれど、探せば買えるかも知れない。ちょっと本気で探してみようかな、どうしようかな。迷っています。

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