2004年12月27日月曜日

影ムチャ姫

 いや、嬉しや。待ちに待ったナントカの単行本がやっとの刊行です。実は私、あんまりこの本が待ち遠しかったもんだから発売日を一ヶ月勘違いしてしまいましてね、先月に紀伊国屋にいっちゃったんですよ。そしたら当然本は見つかるはずもないわけで、それで思い余って店員に聞いたんです。

— ナントカという人の『影ムチャ姫』は入荷してますか?

— え? すいません、もう一度お願いします。

— いや、ナントカの『影ムチャ姫』なんですが。

— 『ナントカの影ムチャ姫』ですか?

いや、ちょっと違う……。えーっと、ナントカというのは作者の名前でして、ちょっとわかりにくいですかね……。

この人は、ちょっと地味で損をしている人なんだと思うんですよ。というのはですね、結構長く連載している漫画があるにもかかわらず、一向に単行本化する気配がないんですね。その漫画というのは竹取物語のパロディでして、月世界から追放されたうさ耳のかぐや姫が、優しいおじいさま、おばあさまに大切に育てられるという、実に心温まる四コマ、—けどネタは結構ブラックです。

モチーフはおとぎ話のくせして、平気で時事ネタとか盛り込んでくるし、MJ12とかも考証無視で出て来るし、月のお母様は侵略だとかなんとかとにかく物騒だしで、もう私、大好きです。

『新釈ファンタジー絵巻』という漫画です。皆さん、覚えておいてください。テストにはでませんが、単行本がでたら私は買います。よければ、皆さんも買ってください。

さて、このナントカさんの単行本がついに発売の運びとなりました。タイトルは『影ムチャ姫』。昨年くらいからちょっとしたムーブメントになっている萌え四コマ誌『まんがタイムきらら』にて大好評連載中です。

なあんだ萌えかよと思ったあなたは脱落です。というのも、作者はどうもへそ曲がりのたちであるようで、雑誌が萌えに向かえば流れに逆らうかのように忍者コメディを追求し、かといってその独自路線が売りになれば、あえて萌えをネタにしてみる。けど、そうしたいろいろをやってみても、しっかりナントカ色がでているのはすごいことですよ。

まず、ネタがしっかりしている。よく練られた上、落とし所がうまいんですね。ちょっといい話風に落としてみたかと思えば、やっぱりブラックなネタも盛りだくさんで、もう私、大好きです。

さらに、キャラクターが実に魅力的。結構たくさん出て来るんですが、そのひとりひとりがよくキャラ立ちしてるから、見分けがつかなくてややこしいなんてことは皆無。しかも、よく動くんですよ。縦横無尽という感じがして、読んでて実に楽しい。しかもこれでいやな奴というのがいない。もう私、毎月が楽しみで仕方がないですね。

と、こんな感じで、ナントカはネタ、キャラ揃った地力のある作家だと思っているのですが、残念ながら地味なんでしょうかね、結構好きといってる人はいるみたいなのに、単行本化とかがまったくされてなかったんですよ。あるいは『影ムチャ姫』も単行本化されないんじゃないかと、私はひそかに危ぶんでいたくらいでした。

でも、その単行本がついに発売となって、やれ、嬉しや。後はこれが売れてくれさえすれば、続刊も確定、『新釈ファンタジー絵巻』も刊行という運びになるに違いなくって、そしたら私なんかは、もううはうはですよ。なので、この本が売れて、ナントカもちょっとした売れっ子になってくれたりしたら、どんなにか嬉しいだろうと思います。いや真面目な話、こうした中堅どころを支える実力者に日があたらないでは、漫画は駄目になってしまうと思うんです。こうした人らが報われないようじゃ、どの口で漫画は文化だとかほざきやがるかと、わたしゃ思わず毒づいちまいますよ。

  • ナントカ『影ムチャ姫』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2005年。
  • 以下続刊

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