2007年11月9日金曜日

ひいばぁチャチャチャ!

 久保田順子は『おこしやす』以来、いい風を捉えていらっしゃるようですね。『おこしやす』が受けたのは、京都という土地に残る風物やしきたりの向こうに、最近では感じにくくなった昔ながらの関係を見付けてしまうからかなって、いわば京都という異郷にノスタルジーを感じるからだと思うのですが、だとすれば『ひいばぁチャチャチャ!』の魅力というのはなんでしょう。曾祖母とひ孫の女ふたりの暮らしの景色を描いた漫画です。派手さはなく、むしろ穏やかな時間の流れを楽しむような漫画で、けれどただ穏やかというだけではないと思います。

それは、曾祖母とひ孫が互いに思いあっている暖かさのためかなと思うのです。ひいおばあちゃんはやっぱりひ孫のさゆりが可愛くて、さゆりのためにといろいろしてくれる。そして、さゆりもひいおばあちゃんが大好きで、時には心配し、時には助けになりたいと思って — 、こういう肉親の情というものがベースにあるから安心できる、そしてそうした暖かさが穏やかさに相まって、この漫画を読んでいる私を嬉しくさせるのだと思います。

これがベースだとすれば、表にはひいおばあちゃんとさゆりのジェネレーションギャップのおかしみがあって、けど世代の違いがただ提示されておかしいというのではなく、意外に気の若く、いろいろと新しいことにチャレンジし、さらにはさゆりの彼氏にも接近してしまっているようなひいおばあちゃんが可愛くて面白いんですね。しゃんとして、いろいろ知っていて、そして優しいおばあちゃん。私の祖母はもう亡くなってしまいましたが、子供時分、祖母に会うときはいつも嬉しかったなと思い出して、そういう懐かしさが再生されるようなのです。

思い出がこの漫画の価値を決めるのかといわれれば、そういうわけではないと答えます。けれど、少なくともこんなだったらいいなと思うような理想の関係があって、そうしたよい関係が紡ぐ暮らしの楽しさがなんだかすごく心地いいのです。

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