本日、タイトルこそは『銀河鉄道の夜』ですが、実質『DS文学全集』の続きと捉えていただくのがいいのではないかと思います。いやね、面白そうというのなら、口先だけじゃなくて実際に触れてみなよ、っていう声が聞こえたような気がしまして、それで電器店に顔を出してみたんです。買ったのか!? というとそうではなく、ほら、店頭にDSステーションってのが置いてあるでしょう。そう、DSダウンロードサービスですよ。今一押しの『DS文学全集』なら、きっと体験版が用意されてるはずだって思ったんですね。そしたら、ドンピシャ。ありましたよ、ありましたね。『DS文学全集』から4タイトル、ダウンロード可能になっていたのでありました。
して、そのタイトルとはなんだったかといいますと、芥川龍之介『羅生門』、太宰治『人間失格』、樋口一葉『たけくらべ』、宮澤賢治『銀河鉄道の夜』であります。なんと、全部持ってるよ。参ったな。『羅生門』なんて、あの下人が門に上がろうとするとき、太刀が鞘走らないよう押さえて云々というくだり、諳んじるほど読んだものよのう。樋口一葉読んだのは、大学生の頃でしたか。あの連綿の文字の流れる様を思わせる文使い、ありゃあ美しかった。とここまで書いて、『人間失格』は読むには読んだけど、あんまり覚えていないな。大宰にかぶれた時期があったんでこざんすよう。そんときに、文庫手当たり次第に買ってきて、片っ端から読んだら、中身がいまいち区別できなくなってしまって、ああ、また読もう。近々読もうと思います。
今回、私のダウンロードしてきたのは、宮澤賢治の『銀河鉄道の夜』であります。今更説明する必要もないほどのタイトルでしょう。私はこれを、子供向けのなんかで読んで、その後新潮文庫を手に入れて読んで、ついには全集に手を出して読んで、そんだけ読んでてまだ読み足りないんだ。いや、足りないってことはないですけど、でもね、本って読んだらそれで足りるってもんじゃないでしょう? 特に、宮澤賢治みたいなものはなおさらで、読めば充足します。けれどまた時に触れたくなる。本にせよ、なににせよ、素晴らしいものっていうのはそんなもんじゃありませんか。ええ、なにか機会があれば触れたくなる、そんな魅力があるんです。
『DS文学全集』は、思っていたよりも好感触でした。読み込まれたデータを開くと、左側に文庫を思わせる表紙が写って、そこには帯までついている。笑っちゃうのは、その帯なんですが、表紙めくったら、ちゃんとカバーと帯の折り返しがあるんですよ。なにこの凝りよう。くすっと笑ったけど、これって、DSをただの電子ブックリーダーにするんじゃなくて、なるたけ本の本らしさを残そうとしてのことですよね。正直、好感触でした。表紙めくってのタイトルページも凝ってて、実に文庫らしさ感じさせる趣です。『銀河鉄道の夜』は『DS文学全集』の第89巻なんですね。それに、文庫のマークが桐でして、ほら花札の。任天堂っていったら昔は花札やらトランプ作ってたメーカーで、桐の札にはメーカーの名前が入ってるのが常だから、任天堂、花札とくれば、桐が思い浮かぶというもんです。いかすわあ。こういうちょっとした遊びを忍ばせてくれてるところ、小憎らしくていいですね。
読んでみた感触は、悪くないです。もっとレスポンス悪いかと思ってた。それこそ、うまくページをめくれない私の乾いた指先を思うと、確実に一ページずつ繰れるこちらの方がいいのかも知れない。ページめくるのに十字キーが使えるから、片手でホールドして、そのまま読める。満員電車で片手は吊り革つかんでみたいなシチュエーションだと、絶対こちらの方が読みやすいと思います。文字も見やすいし、ルビもよく配慮されているし、ちょっと一行あたりの文字数が少ないという嫌いはありますが、これに関しては仕方がないでしょう。そりよりも、ゲーム機で、あの液晶のサイズで、読書しているという感覚をようも出したもんだと、そこに感心したいと思います。
あと、『DS文学全集』は、ちょっと高齢の人にもいいかも知れません。文字サイズを大きくできるんです。大活字本とか、あるにはありますが、探すの大変だし、すべての本にあるわけでもないし、けど、『DS文学全集』ならとりあえず100冊+サプリメントに関しては大活字で読めるわけで、これは悪くないなと思います。
コンピュータに長けた人なら、好みのビューアで青空文庫を読むというのもいいでしょう。文字の大きさ自在だし、タイトル数も段違いだし、書見台気分でゆっくり吟味しながら読書というのは贅沢な体験でしょう。でも、誰もがコンピュータ使うわけでないし、となると、DSのようなプラットフォームの優位、利点が出てくるのかなと。DSに詰めて帰ってきた『銀河鉄道の夜』に興味を示した母を見て、そんな風にも思ったのでした。
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