なんか今日は憑物が落ちたように穏やかな気分でして、なんでなんだろう、毎日がこんな穏やかさに包まれていたらいいのになあと、そんな風に思っています。そして、今日はなにで書こうかと、ペーパーバッグをのぞいてみれば、樹るうの『そんな2人のMyホーム』が見つかって、これ、『まんがタウン』で連載されている漫画なのですが、キャッチフレーズは有能大和撫子。天才肌の彫刻家を父に持つ舞が、そのハイパーさでもって日常を彩っていく、そんな四コマです。
その感触たるや、まるで日だまりのよう。暖かな日差しを受けながら過ごす、穏やかな時間の流れに似て、この多幸感はすごく心地がいいのです。基本的には、娘溺愛父と娘の織り成す日常どたばた系、父娘ともに、ちょっとあり得ないほどのハイパーさで、普通のことでさえも極めて高いレベルでこなしてしまいます。でも、本当ならそういう大げさを楽しむものであろう漫画が、控えめな和装の美女とストイックな芸術家というキャラクター造形も手伝ってか、あんまりどたばたした印象はないのです。むしろあとに残るのは、今の日常をよりよく生きようという朗らかさ、そしてその明るさの向こうにある切なさの影なのだと思います。
切なさというのは、これが父一人子一人ものであるということに由来していて、亡くした妻を、母を、時に偲ぶ話があるんですね。ちょっとしんみりします。この漫画は連載でも追ってたんですが、単行本で読むと正直格別で、切ないねえ。これほどに切ない漫画だったかと、そのことに驚いています。
私は、単行本読むまで、この漫画における時間の扱いがどうであるかに気付いてなくて、その折々の情景を描くタイプの時間の経過しない漫画と思っていたら大間違い、誕生日が過ぎれば、二十歳だった舞もひとつ年をとって、そうなんですよ、時間が流れているんです。そして、この漫画には時間が凝縮されているような、そんな感覚があって、過去に流れた時間を今にしっかりと、それこそ抱き込むようにしてつなげています。そんな濃密な時間をこの父娘は寄り添うようにして生きている。今を今として精一杯に生きながら、今に過去を思う人たち。ああ、切ないね。なんでこんなことに言い知れない切なさを感じるんだろう。私はそんな自分の心の動きが不思議で、こんなに暖かで心地の良い楽しさに触れながら、しんみりとした思いの湧いてくることに、情というもののおかしさを思っています。
けど、やっぱり基本は楽しく明るい、そういう四コマです。有能だけどどこか足りない二人は、父の友人で取引先でもある丸井にサポートされたり、凶暴なチャボ、鯉に守られたりしながら、またちょっと気になる男性もあって? これら決して多くはない登場人物から、情愛といった類いの思いが導かれて、豊かな広がりをみせています。そしてここにこまやかな描写に支えられた情緒の深さが加わって — 、心地よさの源泉はこうした積み重ねのうちにあるのでしょうね。いい仕事であると思います。
- 樹るう『そんな2人のMyホーム』第1巻 (アクションコミックス) 東京:双葉社,2007年。
- 以下続刊
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