実は私『電脳コイル』を見たことがないんです。番組紹介を見て、これはいけるかもしれんとブックマーク、いたるところでいいふらしたことも懐かしい。なんだか昭和を思わせるような下町感にウェアラブルコンピュータが溶け込んでいるという、懐かしさと新技術が交じり合っている不思議な感覚。キャラクターのデザインも、絶妙のいも臭さで、さすがNHKといっていい? この狙いは確かですよ。私が子供の頃に見ていたアニメのらしさといったらわかってくれる人いるかしら。これは、いけると思ったんです。
けど、第1話を見逃したんですね。ぐわあ、見忘れた。もう駄目だ、悶絶してたら、大丈夫だ。NHKなら再放送やるから安心しろの世界だ! との心強いメッセージをいただき、さらに、電脳コイルは翌週の金曜日に再放送、との追加情報。しかしそれでも見逃すのが私という人間なのです。なので、ちゃおで連載されていた漫画版が、私のはじめての、そして唯一の『電脳コイル』体験となったのでした。
『電脳コイル』、漫画版を読みまして、想像以上にハイパーな世界で驚きました。メガネがウェアラブルコンピューティングデバイスとして普及しているというのは知っていたし、実際にこうしたデバイスがあれば、メガネの捉えたオブジェクトに関連する情報を表示したり、また操作盤を仮想的に提供したりなど、一昔前のSFが描いたようなインターフェイスが実現されることも理解していました。そして、そこに仮想ペットがいるだろうということも、決して想像できないことではなく、でもここまで魔法のようにダイナミックなものにしちゃってるのかと、そこに驚いたのです。実際アニメではどうなのかわかりませんけど、電脳世界のオブジェクトが物理的干渉をしてくる(ように見える)というのは強烈だなあと。またデバイスが脳に干渉したり、果ては仮想世界に囚われてしまうなど……、ここまできたら恐ろしい以外のなにものでもないよなあ。もし実際にここまでの働き方をするものだとしたら、こうしたデバイスは取り締まられ、実用に供されることはないだろうと思うんですね。
ちょっと余談ですが、最近よく話題にしている読書端末。私はこういうものの最終形は、電脳メガネであると思っています。実際そうしたデバイスは出現していますが、これで電子本のデータを、あたかもそこに物質としての本が存在するかのように映してやればいいんです。それを、読む。本への働きかけは、手にものの感触を伝えるバーチャルグローブ(こういうのも存在する)を介せばいい。そこにないはずのものに触れ、情報を五官をもって感じ取る。これはまさしく人間の機能拡張であり、ウェアラブルコンピューティングの目指す先にはこうした世界があるんでしょう。
さらに余談になっちゃいますけど、より高密度の情報のやり取りを欲するなら、サイボーグ化しかないんじゃないかとも思っていて、ほら、体にコンピュータと情報やり取りするための端子を付けていた人がいたじゃないですか、ああいうの(実験が終わったから、もう外したらしいですけど)。その話を聞いた時は、いつか人体にUSBが、なんていってましたけど、今なら断然Bluetoothが有望ですね。よく見ると、歯が一本青いの。それで、眼鏡やグローブと情報をやり取りして、より現実感の強いバーチャルリアリティを実現する。いや、これやると、冗談抜きで脳神経系への不正なアクセスとか、コンピュータウィルスの人体感染とかがあり得そうで、しゃれにならないような気もしますが。
ウェアラブルコンピューティングの未来を想像すれば、やはり眼鏡は有望なデバイスとして浮上してくるかと思います。現実の世界に仮想のオブジェクトを重ね合わせ、世界を拡張する。私の子供の頃を思えば、それは紛れもなく夢の未来として思い描かれた世界の姿そのもので、そしてそれは私の生きているあいだに実現するかも知れないんですね。
けど、そうした夢のような世界があったとしても、きっと私たちの一番に思い悩むことといったら、今に変わるものではないのだろうなあと。あまりにハイパーな世界を描いた漫画版『電脳コイル』ですが、テーマはまさに友達ってなんだろうっていう、素朴でけれど大きなものであり、どんなに情報機器が発達したとしても伝わらないものがある、だからそれは自分自身で伝えなければならないんだよという、そういうメッセージは読んでてちょっと染みました。全2話1冊の短い物語でしたが、それゆえにテーマが身近なものに絞られて、シンプルに伝わるものになったのだと思います。
だから、遅ればせながらもアニメも見たほうがいいのかな? つうか、まだアニメ、終わってなかったのか。つうか、メガネビームって本設定だったんだ。で、12月8日(土)から、「電脳コイル」が第1話から再放送。さあ、どうしよう。けど、絶対見られないんだよなあ。見るならDVDか。うへえ、限定盤とかあるんだ……。どうしたものか、迷います。
- 久世みずき『電脳コイル』磯光雄原作 (ちゃおコミックス) 東京:小学館,2007年。
- 宮村優子『電脳コイル』第1巻 磯光雄原作 (TOKUMA NOVELS Edge) 東京:徳間書店,2007年。
- 宮村優子『電脳コイル』第2巻 磯光雄原作 (TOKUMA NOVELS Edge) 東京:徳間書店,2007年。
- 宮村優子『電脳コイル』第3巻 磯光雄原作 (TOKUMA NOVELS Edge) 東京:徳間書店,2007年。
- 『電脳コイル アクセスガイドBOOK』東京:徳間書店,2007年。
- 『電脳コイル キャラクターブック』(キッズ・ポケット・ブックス) 東京:小学館,2007年。
- 『ふしぎ電脳コイルシール ― よむ みる はれる』東京:徳間書店,2007年。
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