2007年11月20日火曜日

Kindle: Amazon's New Wireless Reading Device

 先日、読書端末としてのNintendo DSについて触れました。実際に一冊読んでみた感触はというと、悪くなかった、思ったよりもずっと読みやすかったし、反応もクイックだった。もちろん文句がないわけでもないけど — 、例えば目次がないとか、読み終えたとき、もちろん裏表紙があるものと思っていたらなかった(体験版だから?)、その上ファンファーレまで鳴った(体験版だから?)とか。けど本を読むという体験をエミュレートすべく用意されたインターフェイスの数々、そしてそうした遊びを残しながら読書端末としての最低限をしっかり押さえたところなど、結構好感の持てるものであったと、そういうふうに思っています。だから、私はあれを見て、そう遠くないうちに冊子としての本の優位を揺らがせるようなデバイスが出るんじゃないか、なんていっていたのでした。

そして、本日、Amazonから新しい読書端末がリリースされました。その名はKindle。いくつかのニュースサイトがそのリリースについて報じています。

ざっとまとめると、Amazon.comが電子本リーダーをリリースするとともに電子本販売を始めましたよ、ってことですね。で、話題の中心にその電子本リーダーがあるという構図です。

この電子本リーダー、ざっと仕様を見ますと、電子ペーパーを使ったスクリーンはモノクロ4階調で167ppi、バックライトはないけれど晴天下でも問題なく読めることを売りにしています。重量は292g、ペーパーバックより軽いのだそうで、バッテリーは数日持つらしい。そして、これが最大の売りであると思われますが、携帯電話のデータ通信網を利用するためPC不要。それこそKindle単体で完結するといってもいい仕組みであるわけです。

この端末が399ドル。これを高いと見るか安いと見るか、それは電子本をどれだけ利用するかで変わってくるのでしょうね。約四万円の端末で、冊子で買えば二千円程度の本を千円で読める。ということは、40冊も読めばペイしますね。あるいは新聞の購読なんてのも魅力かも知れません。The Irish Timesが月5.99ドル、一般的な新聞なら、ひと月千円以下で読めるわけですよ(さすがに全記事じゃないとは思うけどさ)。The New York Timesはちょっと高めで、13.99ドル。海外に目を向ければ、仏紙Le Mondeならびに独紙Frankfurter Allgemeineが14.99ドル。果たして将来的にKindleが日本にやってくるかはわかりませんけど、もし上陸して、Le Mondeを千五百円程度で購読できるようになったらですよ、それこそ二三ヶ月くらいでペイしませんか? まあ、そんなの購読しないけどさ、日本語の新聞だって読み切れてないのに、ここに外国語の新聞なんてきたら、あっという間に破綻すること請け合いです。

書籍だけでなく、新聞や雑誌まで扱うKindle Storeですが、これは資源保護の問題からしてもいいんじゃないかななんて思うんです。基本読み捨てにするのなら、それらの紙が無駄になりません。まさに、情報そのものを買うという感じといったらいいのでしょうか。梱包時や爪を切るときなんかに困るかも知れませんけど、無駄にゴミが出ない、かさばらないというのはよいことだと思います。このかさばらないという利点は本においても同様で、たくさん読みたいがもう収納が限界だという人には理想的です。ただ、この場合、その人が物質としての本に魂を引かれているかどうかが大きな分かれ目になりますね。断言しますが、マニアというのは一種の病気だから、本なら本、物質としてのそれをしっかり残したいという人もあって、そういう人だと電子本を買いつつ冊子も買う、もちろん両方残すなんてケースもあるかも知れません。おおおお、恐ろしい話だ。

本当の理想というのは、完全に電子媒体に移行してしまうことかも知れません。データオンリー。それを、好みの読書端末で読めるというのがきっと一番よさそうで、高精細なデータをストレージに保管して、好きなときに引き出して読めたりすると最高だと思います。もちろん冊子としては流通してないから、かさばるばかりの紙の束に悩まされることなんてありません。だから、こうした端末が行き渡ったら、出版と流通というものは様変わりするでしょう。

けど、それでも冊子としての本を所有したいんだという人には、オンデマンド出版で対応するというのがよさそうです。昔のヨーロッパがそうだったように、仮綴じ本を買ってきて製本屋に持ち込む感覚の復活ですよ。それこそ自分の気の済むような体裁にしてもらえる。当座読めればいいだけの仮製本から、納得のハードカバー、さらには革装幀(これ手入れが悪いとえらいことになりますけどね)に箔で押すとかさ。残すまでもないものだったら電子でいいんです。残したいけどデータとしてで充分というのも同じ。これはという思い入れがあるものだけ本にする。ちょっと趣味的ですね。けどもともと本なんてものはそういうものでした。そうした本の本来に戻る可能性が電子本にあるのだとしたら、ちょっと面白いなんて思ったのでした。

さて、Kindleが日本に上陸の暁には買うかどうかですが、実はちょっと欲しい。新書とかなら、別に本として持たなくてもいいわけですから、いくらでも活躍の機会はあるでしょう。また、私はもう戻らないとは思いますが、研究者なんかには恐ろしく便利であると思います。索引がフォローしないようなものを、検索機能使ってピックアップできるのですから。修論書いてたときなんですが、この本にあったはずという記述をどうしても見付けられず、引用、参照をあきらめたものがいくつかあったんです。そういう悲劇がなくなるのは、本当に素晴らしいことだと思います。

私の購読している、四コマ誌が電子出版されて、こうした端末で読めるようになったらいいなと思います。そりゃ、冊子で読みたいですよ。ですが、好きだった漫画のために雑誌を残し続けるにも限界があるのです。単行本にならないマイナージャンルにこそ、こうした在庫を抱えないでもすむシステムは有効だと思うのです。絶版、廃盤という概念は基本的になくなり(発禁はあるけどね、いわゆる出版差し止め)、欲しい本は、電子本としてなんでも手に入る。いつでも、どこでも、電波が届きさえすれば手にして読みはじめられる。そういう現実は果たして素晴らしいのかどうか。賛否両論あろうかと思いますが、読みたい本が読めないという不幸を思うと、実現して欲しい現実であると思います。

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