2009年4月7日火曜日

おかあさんがいっしょ

 ニッポンのワカ奥さま』が売れたんですかね。木村和昭のもうひとつの連載、『おかあさんがいっしょ』も単行本化されるとなって、これは実にいい感じであります。私は、最近の四コマ漫画も好きなのですが、オーソドックスなスタイルのものも同じく好きでありまして、だから木村和昭、とても気に入っているんですね。なにがいいといっても、シンプルでわかりやすいネタの取り回し。定番ネタの繰り返しをやるかと思えば、思いがけないナンセンスな笑いなんかも飛び出してきて、そのどれもがよく練られていて面白いとくるんだから、好きにならずにいられないってなものですよ。実力のある人っていうのはすごいなと思う。抜群に安定しているから、安心して身をまかせて読めるし、またそうしてゆったりと心を落ち着かせて読むからなんでしょうか、面白さもいっそう素直に伝わってくる、そんな風であるんですね。奇を衒うことなく、おそらくは誰が読んでも通じるだろう、そんな面白さを提供できるというのは、本当にすごいことであると思うのです。

今、芳文社で連載されている二本の漫画。『ニッポンのワカ奥さま』と『おかあさんがいっしょ』。そのどちらもが、夫婦ものというのもまた面白いことだと思います。前者は夫ひとり妻ひとり、後者は夫婦と姑の同居もの。前者は有能にして粋な奥さん、後者はぐーたらな奥さん。実に対照的、まったく違った個性が与えられて、それぞれに違った面白さが引き出されていると感じられます。

後者、すなわち『おかあさんがいっしょ』においては、タイトルにもあるように、おかあさんの存在が非常に大きいと感じられて、息子の妻みい子さんに張り合うようなところ、一般にあると伝えられる嫁姑の状況を描きながらも、実のところは妙に気があうところもあって、しかもそれが大いにあって、なんのかんのいって可愛がっている、そんな様子が見えるところがいいのです。それこそ、息子の玉男よりもみい子と一緒の方が楽しそうに思える。駄目だのなんだの口ではいいながらも、いないとさみしい、駄目なところも可愛い、そんな感じでありましてね、またみい子さんにしても、おかあさんに甘えているようなところがあって、なかなかにいいコンビであるのです。

けれど、連載の始まった当初は、少し状況が違っていたといいますか、ええと、みい子さんがやたら美人、いや今が美人じゃないとはいわない、いわないけれど、どんどん子供化しているというか、すましていれば美人だったのが、今やオールタイム自然体でリラックス。悪くいえば横着ですね。けど、それはそれだけ、あの家に馴染んでいるってことなのかも知れません。でもって、おかあさんも、当初はやけにぎすぎすした風であったのが、今ではどっしりとした風貌に。まあ、どちらも描き続けているうちにこなれたってことなんでしょうけど、そのこなれたって感じがですね、描いてこなれたってだけでなく、時間がふたりの仲をこなれさせたという感じもしないでもない。そうした、だんだんに変わっていく様子というのは、意図せざる面白さ、味わいを加えるものであったようにも思うのです。

このこなれていく感じというのは、おそらくは1巻に限ったお楽しみであろうかと思われて、それは1巻後半ではもうずいぶんとこなれてしまった、関係ができあがってしまったと感じさせるほどに安定してしまっているからなんですね。いや、2巻が出て、そのころの関係を見れば、またなにか思うところもあるのかも知れない。知れないんですが、でも1巻終盤の展開は、今の流れにばっちりと繋がる、それくらいにできあがっているんです。だから、初期の関係は妙に新鮮と感じられて、貴重だなあと思ったのでした。逆にいえば、そうしたぎすぎすとした雰囲気は、今となってはもはや希少も希少、あー、そんな関係であったっけかなあ、と、思い出そうにも思い出されないほどに薄れてしまっているってことなんですね。ほんと、おかあさんとみい子さん、いい関係を築いてしまっているのです。

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