『まんがタイム』の発売日は、毎月7日です。ですが7日はまんがタイムコミックスの発売日でもあって、といったわけで一日遅れ。明日9日は『まんがタイムきらら』の発売日と、こうして雑誌の感想を書いているかぎり、毎月この数日はばたばたと立て込むのでしょうね。でもまあ、書くことがない、書きたいものがない、なにか書けそうなものはないかいなと、無駄に時間を過ごすことを思えば、こうして追い回されている方がずっといいように思います。やることが沢山ある、そんな状況で優先順を決め、次々こなしていく。予定を組み立て片付けていくというのは、また人の楽しみのひとつであると思うのです。といったわけで、今日は『まんがタイム』2009年5月号の感想を書きたいと思います。というか、私の場合、感想じゃなくて、関係ないこと書いている分量の方がはるかに多くて、読み返して苦笑するのですが、まあこのようにしか書けないもので、お読みくださってる方には本当に申し訳ない。最初に謝っておきます。
『おとぼけ課長』のモシモシ もれてますよ
というネタは、なんだかすごくわびしくて、そしてなんだか切なくて、心にひっかかりを残して、それは人の老いるということが描かれていたからなのかなあと。どうしても老いは避けられない、老いによって迷惑かけることもあろう。その迷惑かけてしまっているかもしれないということを、ことさらすまなく思う女性の心境が伝わるようで、切なかったです。そうしたものを伝えたいと思われたわけではないのだろうとは思うのですけど。
『ラディカル・ホスピタル』は爆発卵を扱って、電子レンジに卵を入れると爆発するという話ですが、あれが真に危険なのは、内圧は爆発寸前にまで高まっているのに、ぎりぎり爆発しないという状況ではないかと。『探偵ナイトスクープ』の視聴者ならご存じでしょう、爆発卵は本当にすごかった。一口かじると、熱々の卵が口中で爆発する。口から顔から、部屋中に卵がまきちらかされて、あまりの熱さにのたうちまわる男たち、あれは実に凶悪でありました。だから、卵が麻生さんの口中で爆発しなかったのは幸いなことであったのです。もし口中爆発を起こしてたら、全然違う漫画になってしまったろう。医療の病院のどうたらこうたらなんてふっとばして、阿鼻叫喚の地獄絵図が描かれたに違いあるまいと。さてさて、金属から火花が散るというのは、うちの職場の電子レンジでは起こりませんでした。石鹸がふくらむというのは知りませんでした。けど、自分で実験してみる勇気はありません。
『ニッポンのワカ奥さま』、和歌さんは今日も美しかった。『すいーとるーむ?』、ゆかりさんは今日も美しかった。さて、『ワカ奥さま』ではこの漫画最大の不思議、なぜ一郎さんが選ばれたのか? そうした疑念が提出されて、そうかやっぱりみんな不思議に思ってるんだ。和歌さんの主婦友だち、一緒にお茶したり、カラオケいったり、そうした生活における楽しみの断片がちらほら伺える、それもまた楽しいことでありました。しかし和歌さんはみんなからどう思われてるんだろう。そうした誤解も描きながら、けれどそれでもなんとなく理解されてるってのがわかるところがよかったです。マラカスの奥さんはちょっと好みです。
ゆかりさんは、常には見られない、驚いた顔、そして涙ぐんだりして、しかしそれでも強がって笑っちゃったりして、そんな表情がみられて、ちょっと得した気分になれる回でした。特異な状況が日常になっている、そんなゆかりさんの生活に、ちょっとした変化が加わって、緊急避難的生活、いつもどおりにすごせない中で、いかに時間を過ごすかという、そんなチャレンジの数々がゆかりさんのらしさを強調して面白かったです。しかし、誰も来ない部屋だから安心してたのに
ってことは、普段はあれでもちょっとは不安に思ってるのか。最後の足場、あれはまさしく職場の特徴最大限に発揮させて、しかし手際いいな、そうした設定が生きていると感じられるところ、素晴しかった。
『天子様が来る!』、共学でした
。驚愕でした。珍念さんロボは、我々の求めるロボの理想形かも知れないなんて思って、しかしこんなの用意できるんだったら、いつぞやのメイドロボ(読者投稿)にもこれ出してあげたらよかったのに! なんでもできそうなくせして、微妙に狙いをはずして応える、その微妙なはずしっぷりが面白さの要です。
『ハコニワ』、コメントするのが難しい。新しいママは死神。それはいい。美人だし可愛いし、だからそうした特異な設定も受け入れようという気持ちになれる。だって、昔は、奥様が魔女だったりするドラマが平日昼間に流れてたんだ。けどその特異さを少し持てあましているようにも思えてしまって、死神っていうのが話に関係してくるわけでないってのはまあいいとしても、調理が基本丸ごとで生ってのもいいとしても、なんかしっくりしない。こうした飛び道具をとっぱらってしまった時に、いったいなにが残るんだろうって思ってしまうんです。この人の漫画は嫌いじゃないし、『ハコニワ』もうまく馴染んでくれたらいいと思うし、私も馴染もうとしているけれど、今はまだちょっと私自身持てあましているって感じです。
『アシスタント!!』は、これまでうまくいってた体制があるんだったら、それをあえて崩さなくってもなんて思いながら読んでたんだけど、けれどやっぱり崩してよかったのか。その時々の状況で、もっともいいやり方を各人が模索して、いい結果を得られるのだったら、プロセスが違うことがあってもかまわんのだろうなと思いました。とことん合わなかったら、それまでのような気もしますけどね。『夫婦な生活』、別に平均年齢65歳のメイド喫茶があってもいいじゃないか。女性には、十代には十代の、二十代には二十代の、飛んで、六十代には六十代の花があるんですよ。美しく年をへた女性には、それまで咲かせた花の積み重なって層をなし、そしてそれらは人に深みを、さらなる魅力を与えるものなんですよ。それを理解しないだんなはまだまだだな。『ウルトラ金ちゃん』、あれはあえてあーゆーヘンテコな生き物と思わせるように描かれているんだろうけど、それにしてもニワトリとは思われなかったです。目が3の奇妙な生物かと思いました。「観察」の、コマを部屋と見立てた5コマ、すごく新鮮な感じに思えて、しかも動き展開が面白くって、銀ちゃんならずとも見入ってしまう、そんなよさがありました。
『あさぎちゃんクライシス!』は、いつもどおりというか、河野先生が変態的。制服女子をためらいなしにベロってしまえるのはさすがです。あさぎちゃんでは、先生の変さに耐性ができてしまって、ちょっとくらいめくられても動じなくなっているので、それでターゲットが変わったのか? しかし、彼はめくる、さわるのが目的ではなくて、その後ボコられるのが楽しみなのではないのか。そういう特殊な性癖ではないのか? といっているやつがすでに変態的という気もします。ああ、私もたまにはあんな娘らにボコられてみたいものだ。
『みそララ』、梨絵さんは今日も美しかった。もーこのまま印刷しちゃってよ
、感動するクライアントを前に、照れながらも呆然と、目を点にして口半開きにして、その様が最高に美しかった。しかしこの漫画は、仕事のプロセスを漫画のメインテーマにして、それを飽きさせることなく、楽しいもの、面白いものとして読ませてしまう。本当にうまい、いい漫画だと思います。仕事が楽しい、けれどそれは、ただただ楽しいだけでなく、苦しいこと、辛いこと、大変さや難しさもあるということが当然の前提としてあって、そしてこうしたいろいろを乗り越えていくから素晴しいんだといわんばかりで、もう感動するね。といっても、今号はまだプロセスの途中。はっきりしないクライアントに叩き台を提示して、そこでようやく始まったって感じ。乗り越えなければならないものはまだたくさんあって、それをどうするのか。プロとしての方法を考えよう
。いかにして彼女らは、今の与えられた状況を乗り越えるんだろう、彼女らにとってのベストの地点を見出すのだろう。もう、今から来月が楽しみというほかなくて、しかしそんなクールな梨絵さんも美しいと思ったんだ。
第3回まんがタイム新人4コマまんが大賞結果発表!! ここからの数ページは、選ばれた漫画を読むのもいいけど、植田まさしによる選評が貴重であると思います。この人はこれらの漫画をこういう風に読んでいるのか。そしてその読みかたのあたたかいこと。とても真面目に、そして好意的に読もうとするその姿勢が感動的でした。きっと、いい人なんだろうなあ。そして、辛いコメントをつけるときも、ただ辛口にするのではなく、足りないところをどう補えばよくなるか、それを考えて、よりよくなるよう、よりよいアドバイスを贈ろうとされている。そうしたところが伝わるようでよかったです。漫画については、『KY!』は最初の一本はどうだろうと思ったけど、続く二本が面白くて、これはいけるかもって感じに思いました。人情派? ツンデレの極北? 『オトメ男子』については、語るほどに変態的になりそうなので自重。『笑って!外村さん』は、怖いと誤解されている女子もの。ある程度続くと理解者が出てきて、怖さがどんどんマイルドになっていって、なんだか可愛い人になってしまって — 、そういうパターンを辿るのか辿らないのか。いずれにしても、こうした前提を持つ漫画は、ヒロインのよさを知っているのは自分だけ、そうした気持ちを読者に起こさせやすく、そしてそうした特権を得ることでなおさら好きになるタイプの読者を獲得できれば、最初の足掛りをかためられるような気がします。『できる女には秘密がある』のヒロインは、たしかに美人だ。あの扉ゴマは素晴しい。弟を振り回すお姉さんものっぽいので、ある種の性癖を持った人には効きそうな気がします。ところで、私は引っ詰めピンどめのお嬢さんは結構嫌いじゃないんだ。だからどうしたって感じですが、連載されると結構地味に好きになる、そんな漫画なんではないかと思ってます。『まかないガール』は、ああしたタイプの冷蔵室は、必ず中から開けられるようになっているもので、なんていっちゃうのは無粋ですね。苦境においても、しれっとそれを受け流す、そんな面の皮の厚さ、動じなさが魅力になればよさそうだぞと思いますが、とりあえずタイトルを見るまで彼女がヒロイン、女の子とは気付きませんでした。たしかにマイって呼ばれているものなあ。工夫されたまかない料理が魅力的に表現されたら、それも持ち味、毎回の楽しみになりそうな気もしますが、まあそれは多分ないんだろうなあ。漫画本編よりも、どんな料理が描かれるのか、そちらの方が楽しみになっている、そんな漫画は実在します。
『プチタマ』は、先月はお母さんがたくさん出ていて嬉しかった。今月はちょっとだけ。この漫画は、たまりと仲良しのゆうたが、友だちの前では照れてしまう、そんなところも可愛くて、たまりの連なる高校女子の友人層と小学生男子、それぞれのよさがあって、気にいっています。今回は、「誰?」が面白かった。よくある話で、けれどそれを独特にしてしまう。たいそうよかったです。
『天然☆無農薬一家』、いくらなんでも自分家の鶏を食べるわけがなかろう
って、じゃああれはペットなのか。きっと食用だと思ったんだけどな。『わさんぼん』はおじさんのきびしさがよろしいなあ。学校で教えられることなんて、はなっから期待していない。現場で通用するものは、現場で覚えさせる、そんなところがらしくていい。けど3年って数字は、大概昔はどこでもそんなだったらしいけど、草太が菓子作りに参加する日はくるんだろうか。洗いものから脱したとしても、次はひたすら下準備とか鍋のかきまぜとか、そんなんだったりするんだろうな。『木綿のえぷろん☆』、木綿さん… 好きです!
私はそうしたこと、わりと平気でいえちゃうタイプなので、信用されません。はきはきとして、お客さんとの距離も近いと感じられる、そんなヒロイン、木綿のキャラクターは見て読んでいて気持ちよく、そうした感じは漫画全体からも感じられて、すごく爽快な読後感が心地良いです。
『放課後のアインシュタイン』、もう大好き。理系女子だからじゃない。眼鏡だからでもない。ちょっとかわりものの先生と、先生に懐いている生徒と、その関係もなんだかよければ、皆のとりくむ理科の授業、クラブ活動のテーマ、もろもろ、とてもいい。雰囲気があるのだと思います。やわらかで優しげな雰囲気のなか、個性的な先生、生徒の立ち回る、そのやっていることがおかしい。飄々として、マイペースで、本当に理科が好きなんだなこの先生は、そんな感じが読んでて嬉しくさせてくれるのです。そうした気持ちの中には、昔親しんだ理科化学生物の知識、経験、楽しさもろもろが、懐しさとともに蘇えってくる、そんなノスタルジーめいたものもあるのかも知れません。小学中学高校と、授業、実験、観察、図鑑、学研の科学、ひみつシリーズ、などなど、好きだったものが思い出されて、そうした記憶の取り戻されるごとに、この漫画を好きになる気持ちも強くなっていく。そのように思われてなりません。
『あさかぜ君』の風船の、してやったりという表情と、納得できてるようには思われないター坊の表情と、こうしたネタはよいですね。不景気における春闘のわびしさは、社会においてもあるだろう、夢くらいは見たいものだという、そんな気分を反映させたか、そして勝手なおまけにその分給料をまけちゃう商店主、こういう話も嫌いじゃない。面白かったです。安堂友子の『生きてます日記』、すべてがそうとはいわないけれど、目次横の漫画には面白いものも多くて、ささやかな話、けどそのささやかな日常にもおかしみは溢れている、そうしたことを思い起こさせてくれるよさがあります。すごい ここまで違うとは
。人でも鳥でも、一度生活のレベルが上がってしまったら、なかなか下げられないものだと思います。しかし、仕合せそうな鳥、その姿を見ているだけで心が豊かになりそうです。
そして『PEACH!!』。巻末に、必ず面白いと思える漫画のあることは、読み手にとって重要なことです。今月も面白かった。岩井のことが大好きすぎる広能の気持ちの浮き沈みは、もう常ならぬものがあって、可愛い娘っ子よのお。気分で開いたり閉じたりするというそれは、部活でやっている旅館ならではのナンセンスかも知れません。そういえば、ついさっきですが、工夫されたまかない料理が魅力的に表現されたら、それも持ち味、毎回の楽しみになりそうな気もします
なんていっていましたが、この漫画も料理の表現が魅力のひとつでありますね。けどただ料理が美味そうに描かれているだけではなくて、美味そうな料理がある、そこに理由や工夫がある、そしてそれをどうお客、というか岩井だな、に提供するか、広能のこだわってみせるところ、時にこだわりが空振りするところ、そうしたところが面白い。この人の漫画の必ず面白いというのは、絵の魅力があって、女の子の可愛いという魅力があって、登場人物の個性的なところ、キャラクターに魅力があって、そして見せ方に魅力があって、なんだよヲイ… オレ とんでもねえこと言っちゃったか…
、狼狽する岩井も面白いけど、気を使う広能、武田、相原のかもす雰囲気がことさらに面白さを増さしめていて、こうしたところ、多様な魅力が相乗するところ、最高だと思います。ところで、この人の漫画って、女の人の一人称がオレであったりすることが多いのですが、その自然さがすごくよくって、大好きです。方言のよさなのか、自然体の勝利なのか。とにかく魅力的。身についている、そんな感じがすごくいいんですね。
- 『まんがタイム』第29巻第5号(2009年5月号)
引用
- 植田まさし「おとぼけ課長」,『まんがタイム』第29巻第5号(2009年5月号),6頁。
- 東屋めめ「すいーとるーむ?」,『まんがタイム』第29巻第5号(2009年5月号),30頁。
- 安堂友子「天子様が来る!」,『まんがタイム』第29巻第5号(2009年5月号),32頁。
- 宮原るり「みそララ」,『まんがタイム』第29巻第5号(2009年5月号),79頁。
- 同前,82頁。
- 筒井旭「天然☆無農薬一家」,『まんがタイム』第29巻第5号(2009年5月号),119頁。
- 三国桃子「木綿のえぷろん☆」,『まんがタイム』第29巻第5号(2009年5月号),119頁。
- 安堂友子「生きてます日記」,『まんがタイム』第29巻第5号(2009年5月号),194頁。
- 川島よしお「PEACH!!」,『まんがタイム』第29巻第5号(2009年5月号),198頁。
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