2009年4月10日金曜日

新校本 宮澤賢治全集

  新聞に気になる記事が載っていまして、タイトルは「宮沢賢治、地図の裏に未発表詩 三十数年ぶりの新作」。ちょいと引用しますとこんな感じ:

 今もファンの多い詩人・作家宮沢賢治(1896〜1933)が書いた未発表詩の草稿が見つかった。賢治の作品はこれまでの研究・調査でほぼ出尽くしたとされており、新たな詩が発見されたのは三十数年ぶりという。

 昨年、岩手県花巻市にある賢治の生家の蔵を解体しようとした際に、はりの上に置かれていた書類の中から見つかった。5万分の1地図の裏面に鉛筆で書かれていた。筑摩書房から刊行中の賢治の全集の編纂(へんさん)委員が確認したところ、未発表の草稿と判明した。

これは実に興味深い、そう思わせるニュースであり、しかしまた私にとってはちょっと困ったような気分にもなる、そんなニュースでした。なぜか? それは単純な話。自分の持っている全集が、ついに過去のものになったのだと思ったからでありました。

そう、無駄に全集を持っています。『宮澤賢治全集』。いったいなにがきっかけだったんだろう。もう思い出せないくらい昔のこととなってしまいました。第一回配本、第8巻の出たのは1995年5月22日。私がちょうど大学に3年次編入をはたした年ですね。はあ、もう14年にもなるのか。年いくはずだよ。

この全集が刊行されたのは、1996年という記念年、宮澤賢治生誕100年が多少とも関係していたのではないかと思われて、当時、宮澤賢治に関係する本や企画、たくさんたくさん出てきて、それで私もその気になってしまったんでしょうね。決して安くない本を、毎月毎月買おうと思ったわけです。けれど経済的な事情から途中で買えなくなってしまいまして、なんだかずっと心残りにしていたのですが、数年の後、大学を出て、図書館で働くことになって、そしたらなんと本が一割引で買えるという。今この時を逃したらもう揃わない、そう思ったものだから、外商さんにお願いして、毎月一冊二冊というペースで買って、そしてようやく揃えたんですね。

しかし、謎があったんです。索引巻が出とらんのです。第16巻下、補遺・資料には、確かに次に別巻索引を出すという案内があったのに、それが出た形跡がまったくといっていいくらいありません。なにぶん、毎回の配本をリアルタイムで追っていたわけじゃありませんからね、もう全然状況が掴めないわけです。もしかしたら、また筑摩書房が潰れたのかなあ。そこまで思った。けど、ちゃんと会社はあるみたいだからなあ。本当に謎で、企画が潰れたのか? しかしここまで出しておいて、しかもろくに売れそうになさそうな雑纂やらまで出して、最後の索引を出さないなんて話はないだろう。というか、研究者なら総索引こそを欲しているはず。しかしそれが出ていないのはなんでなのだろう。ずっと謎でした。

私にとって謎であった『新校本 宮澤賢治全集』別巻 補遺・索引、これがついに出ました。冒頭にて紹介した新聞記事、新発見の詩はこの補遺に収録されています。補遺は詩にかぎらず、書簡や雑纂、断片的な資料にも及んで、賢治全集はただ停滞していたのではなく、これら十年の研究成果を収録すべく、時を待っていたのかも知れない。実に感慨深いものがあります。全集の完結したのは2009年3月2日。私がこのことを知ったのは2009年4月9日。そして買ったのは今日、2009年4月10日。ついに完結しました。感無量です。だから、あとは読むだけ。それが一番大変で、けれど一番豊かな作業です。

  • 宮澤賢治『新校本 宮澤賢治全集』全16巻+別巻1(全19冊) 宮沢清六,天沢退二郎編集 東京:筑摩書房,2009年。

引用

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