2009年4月24日金曜日

『まんがタイムきららフォワード』2009年6月号

 『まんがタイムきららフォワード』は、誌名にまんがタイムとはあるけれど、四コマ漫画誌ではありません。ストーリー、つまりコマ割り漫画中心の雑誌。価格は450円と少々高めですが、その分ページ数も多いし、好きなら苦にならないって感じです。また、この価格のおかげでAmazon.co.jpの取り扱い雑誌粛清にも生き残り、こうして表紙を掲載することができました。ありがたいことです。っていうか、できれば『まんがタイム』系、『きらら』系も残して欲しかったなあ。こうして雑誌感想を書くようになって、なおさらそのように思います。

『夢喰いメリー』が表紙、巻頭を飾って、きっと人気あるんだろうなあ。私も結構気になっている、気にいっている漫画であるのですが、なんのはずみかで1巻を買い逃してしまって、今からでも買おうかなと思い続けているところです。夢の世界から現実に夢魔がやってくる、その理由がはっきりとして、メリーの個人的な戦いが世界の存続と繋がりを持って、こういうのはやっぱりちょっと盛り上がります。しかし、メリーの殴りっぷりはよい、実に爽快な殴りっぷりです。

S線上のテナ』は、テナ、アルンの恭介争奪競争の様相を呈して、けれどこうしたコメディ色を全面に出して、後半を湿っぽくまとめて、悪くない感じであったと思います。けど、Gコードのくだりにはちょっとうっと立ち止まった感じになって、いやいいんです、わかってます、これは音楽漫画じゃないから。でも、それでも、いや、いいんです、わかってます。

『少女素数』は長月みそかの新連載。海辺の町の、造形作家が主人公? おじさん主人公がきたのは意外だったけれど、それでも普通に、特になんの疑問もなしに受け入れてしまうのは、描かれる町の情景が、こうした人たちの暮らす場として立ち上がってくるような存在感、現実感を持っているからなんだと思います。私はこの人の描く人の心の揺れ動きも、またそうした人たちの造形も好きなのだけれど、それと同じくらいにこの人の描く世界が好きなのだと思う。物語内の世界の空気は濃密で、港町、潮の匂いさえ感じさせそうに確かで、そこに美人で双子の妹、美少女ふたりがぱっと灯りをともすかのように鮮かに華やかに息衝いて、その周辺だけは現実的の地平を蹴って違う世界に引き上げられたというような感覚をもって描かれて、その世界のつくりあげようはすごいな。そう思います。

当然物語はまだまだ序盤で、これが今後どのように動いていくのか、それはわからないのですけど、ニンフェットもの? あの独白には、気恥かしさを感じる以前に、なにか遠くの過去に置いてきた、そして遥か手の届かない未来に大切に取り置かれている、ノスタルジアやセンチメント、憧れ、なにかそういったもののないまぜになったような感情が溢れるように思います。しかしこの人の漫画は、これまでは美少女といえばそうだけど、あからさまな美少女が出てくることは少なかったように思うのだけど、それが真っ向から美少女、しかも対照的な見た目、性格の双子で打ち出してくるというのは、おじさん主人公以上に驚いたことでした。でもって、露骨に煽情するようなところはないのに、仕草が、ちょっとした表情がすごく訴えるっていうね。これは、まいった。露骨なほうがずっとましだと思いました。

『トランジスタティーセット — 電気街路図』は劇中劇から始まって、幕末好きの人からクレームがくるような、幕末モチーフの美少女バトルもの。そういえば、パソコン通信全盛のころに出た幕末モチーフの美少女バトルもの? のゲームにはクレームついたんだっけかなあ。新撰組モチーフのアダルトゲームは、クレーム覚悟だったところが、意外と好評だったらしいですけど。漫画に戻って、コスプレするしないをめぐっての攻防から、定番匂わせる展開をほのめかして、そしてラストで落とす。あの流れは、きっとくるぞ、こうくるぞと思わせるものでしたが、その期待を正面から受け止めてみせて、それが面白かった。単純に素直にすとんと落ちて、そのあまりのあっさりとした終わりかたもよかったです。余韻じょうじょうたなびくかのごとく、味わいあるラストでした。

天秤は花と遊ぶ』は、ちょっと私のマニアックな嗜好、上から見下ろす構図を満足させてくれて、たとえばそれは163ページ、追いかける?の構図。あれはいいですね。思えば第1回にも真上からの見下ろし構図があって、あれも素晴しく素敵でした。あのスカートの裾の花のようにふわりと広がる、そのゆったりとして豊かなさまはよいものです。それはそうと、今回はストーリー上のひっかかりが作られていて、謡子への好意からか女子側に引っぱられる愁、しかしそれはまずいことなのか? 微妙に気にさせる要素が匂わされて、どうなるのだろう。

余談です。愁が女になるというのなら、これは女の子と女の子未満のふたりがひきあう、ひかれあう漫画として読めるし、そうではなく愁は男にならねばならないのだとしたら、これは女装美少年ものになるのか? 本当に余談でした。

『温泉惑星』は、ヒロインに恋する女性が登場。本人を前にすると素直になれない不器用さと、お嬢様的天真爛漫が売りなのか。そして話は定番の温泉になだれ込んで、また裸か! いや、裸はわるくないよ! 裸、大好きだよ。男たるもの、火照った体を夜気にさらして、全裸をしみじみと楽しみたくなることだってあるだろうよ。地位や名誉を脱ぎすてて、男一匹、ひとりの人間に戻りたくなっただけかも知れないじゃないか。それをあんなによってたかって叩くこたあないじゃんか。って、そうじゃなくて、『温泉惑星』、温泉を売りにしているだけあって、惜しげもなく裸が出てくる漫画なのですが、あ、もちろん男一匹じゃなくて(もちろん、二匹といいたいわけでもない)、女の子が裸になる、これって『フォワード』らしいっていっていいのか? いいのかも知れないけど、でもこの漫画の裸は妙に素直で、いやらしさというものを感じさせない、そんな感じです。裸だからといって、イコールわいせつじゃないんだよ、むしろファンサービスってなもんじゃないか、俺たちゃ裸がユニフォームなんだよ、ってまた話がそれたところで、次にいきましょう。

『乙女王子 — 女子高漫研ホストクラブ』は、微妙に身悶えさせるような、もにょる? そんなところのある漫画なんですが、けれどそれがいい感じで、女子高漫研が部費を稼ぐために男装ホストクラブをするっていうね、で、対立傾向だった副会長がすごく一途で、それはもう君大丈夫かと問いたくなるほど、激情にかられて思わず叫んでしまうは、頭なでられて涙ぐむは、すごいことになっています。で、次号はきっともっとすごいんだろうな。がんがんエスカレートして欲しい漫画です。

『銘高祭!』は、ちょっと読んでて辛い。生徒側のもろもろが辛い。教師の側も辛い。それが辛いと感じてしまうのは、私の中のなにかが刺激されるからなのか、あるいは劇作上の要請なのか、あるいは感情のぶつかりを描こうとして力あまっているのか。私は冷静さを欠いているので、なんともわかりません。けど、あの眼鏡は殴ってやりたくなるな。私は、女に殴られることはあっても殴らないのがポリシーだから、ちょっと、メリーさん、豪快に一発、やっちゃってくれ。

『おとめり』って二回目? 覚えてない……。でも、これで覚えた。次にきても、きっと大丈夫。

いきなり☆ねこキック』はいい感じに私の予想を外して動いていって、そして新しい人の登場が、これまでの、よくも悪くも安定していた状況を一気に動かす動因となって、この動揺は由羽にとって動かない関係を脱するチャンスになるんだろうか? これまでの流れで、由羽が一気に後景に下げられるということはないだろうし、これはやっぱり波乱の投げ込まれたってことなんでしょう。

引用

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