漫画の雑誌、買ったものの感想を書くようになって、今までは主に四コマ誌について書いてきたのですが、これは別に四コマ誌をセレクトしてきたわけでなく、それ以外に買っていないってだけの話なんです。といったわけで、月末になってようやく四コマ誌以外が登場。講談社の『月刊アフタヌーン』なのですが、これは篠房六郎目当てに買っていて、つまりは『百舌谷さん逆上する』、これ読みたさで買っているってわけです。だから、半分も読んでない。いや、読んだらいいんだけど、途中から読んでもよくわからないものも多いし、その点『ラブやん』は優秀です。タイトルだけ知っていて、内容は知らずにいたのですが、これがもう面白いのね。基本ストーリーに頼らず、キャラクターの強さで押してくる漫画だから、フサさんがロリ・オタ・プーのろくでなしであることさえわかれば、もう大丈夫、普通に読んで面白いよ! って、すごい敷居の低さ。しかし、今さら単行本を買うのはきついよ……。なお、天使長は私の好みにかなり合致しております。わ、私もしょせんろくでなしか……。
『百舌谷さん逆上する』は圧巻でした。ツンデレの病に苦しんでいる少女、小音の物語。愛すれば、愛するほどに、その気持ちとは逆の行動をとってしまう。そうした小音がいじらしく、そして第2巻から続いてきた夏休み、その終わるとともに、物語も一旦の着地を見せて、それはもう涙なみだでした。自分の病を呪い、自分自身も呪っている、そんな百舌谷さんが、ついに気持ちを通わせる。義理の母と、そして番太郎への思いをはっきりと意識して、そして自分の気持ちを受け止めて、歩きだそうという、その決意はしたたかに胸を打って、もう、本当に素晴しい。馬鹿馬鹿しい、そんなシーンを交えつつも、それでもなお胸に迫る、そんな思いが溢れんばかりで、ああ、本当にこの人の漫画に出会えてよかった、そのように思える回でありました。
物語は一旦の着地を見せた、そう、一旦の決着をつけて、ですがそれは次の段階に踏み出すまえの踏み切りでもあるのですね。まだ物語は続く。その続いていく先にあるものは、きっともっと豊かに違いない、そう予感させて、まだまだ目をはなせない、そのように思っています。
『ヴィンランド・サガ』、私はこれは途中から読んで、だからいまいちよくわかってないんですが、それでもなんだか面白い。結構楽しみにしています。ちっとも背景がわからんのですけど。『元祖ユルヴァちゃん』は、どうも『ヴィンランド・サガ』に関係してるようだというのはわかってきましたが、それでもいまいちわからなくて、そしてなんともよういわれんものがあります。でも、なんでか読んでしまう。そんな漫画。
『友達100人できるかな』。私はこれは結構好き。なんか癖のある絵、SFっぽいストーリー、そして泥臭い友情ばなし。面白いと思います。今回は本が好きで、どことなく大人っぽい、そんな友人が持っていた想像力、それにはじめて気付かされるそんな話で、ああ、確かに子供だったころは、こうしたふうに遊んでいたと思い出させてくれるものがあって、そうした懐かしさも一味そえて、面白かった。いい話だと思います。ベタというよりも、泥臭い、そうしたニュアンスで、子供の心をだんだん取り戻していこうぜって、そんなところがいい漫画です。
『いもうとデイズ』、フィリピンからやってきた妹に戸惑いながらも、だんだんに気持ちの近づいていく、不器用な兄妹ものとして面白いです。これは、妹ディアナの愛らしさというのもよさのうちなのかも知れない、そしてその健気なところ、それもよさのうちなのだと思います。しかし、この子が小学生だって、ずっと気付いてなかったよ。そうか、当然学校いくんだな、と基本的なところで私には常識が欠けています。
今回は、ずっと気丈にふるまってきた、そんなディアナが決定的に弱音を吐いて、そのつらさを感じとった兄貴が手助けをする、そして友だちもできてっていう、そうしたところがなんかじんとくるようで、よかった。いい話です。
『吉田家のちすじ』、これも敷居の低いたぐいの漫画で、おんな盛りの多香子さんに、義父、祖父、前妻の息子がむらむらときている、そんな風なところのある漫画。とにかく皆、多香子さん大好きで、息子の転勤話に、なんとか多香子さんと離れないですむにはどうしたらいいかと、自分勝手な理屈を押しとおそうとする年寄りたち。ろくでもないんだけど、そのろくでもなさが面白い。
『ラブやん』、娘との生活に憧れる気持ちは、ものすごくよくわかります。私もあんな娘欲しいよ……。私は別にトキメく系の何か
はいらないけど、パパ超キモイ
っていわれたら、そりゃきついものがあるな。私はMじゃないので、劇的な変化を遂げることはなさそうで、ちょっと一安心です。しかし、クロエのあの淡々として、そして理屈っぽいところは素晴しいな。点目最高です!
『無限の住人』、グッバイ尸良さん! いや、まさかあれで生きてるって、もうないよね。私、この人がもうどうしようもなく嫌いだったから、これで退場してくれるなら、もう本当に願ったり叶ったりなんですけど。
『カブのイサキ』、先月まで読んでなかったので、全然背景はわからんのですけど、面白かった。『ヨコハマ買い出し紀行』の人なんか。振り返って、読んでいってみようかな。
『謎の彼女X』は、なんかとんでもない感じにぶっとんでて、けど読んでる、面白い。今号は裸対決が決着して、しかし妙な傾きのある漫画だと思う。単行本買おうか迷うけど、なんか素直に買おうとは思えない、なんか抵抗してしまっていて、それは多分卜部が可愛いからだと思う。今月はいっそうに可愛かった。
『ベントラーベントラー』、いまいちわからないんだけど、読んでる。面白い? うん、多分面白い。
『DoLL』、これも変態的な趣向のある漫画で、面白いかといわれれば、うん、多分面白い。でも、これまで先生? と泉のふたりだけの閉じた世界で展開されてきたのが、なんか外部から少年たちがからんできて、ちょっといやかなって思っている。そんな回でした。泉は可愛い女性だけれども、それは多分眼鏡だから、ではないと信じたい。
『世界に羽ばたけ轟先生!』、この主人公もまたろくでもないおっさんで、好きかと問われれば首を縦に振りたくはないのだけれども、なんでか毎号読んでしまっているからには、多分好きなんでしょう。コメントは、どうしたらいいかわかりません。
『スピリット魂』は四コマ漫画で、けれど私の普段読んでいる漫画とは全然テイストが違っています。バイク好きの娘さんたちの漫画なんですが、絵といい、展開といい、密度が高めで、読んでてしんどい。でも、多分こうした四コマを一般の人は読んでいて、だから『まんがタイムきらら』なんかに掲載されている四コマを見れば、さぞ薄く見えるんだろうなというのはわかる話で、けど私はそっちの世界の濃さがしんどくなったから、四コマ誌に逃げてきたんだよ。だから、『きらら』がゆるいだ、どれ読んでも同じだ、萌えキャラだけで中身がない、なんていう人は、どうぞ海で泳いでいてくれればいい。わざわざ淡水にまでやってきて、塩が足りてないというのはやめて欲しい。淡水には淡水のよさがあるのであって、そしてそれは私みたいな、海水中では泳げないものには必要なのですよ。海の魚は海で、川の魚は川で、それぞれ泳いでいればいい。深海魚だっているわな、沼に住むのだっているよ、それぞれ自分にあった漫画、面白いと思う漫画の世界、ジャンルに棲み分ければいいって話だと思います。
けど『スピリット魂』はわりと好き。一気には読みとおせないこともあるんだけど、面白い漫画だと思います。
- 『月刊アフタヌーン』第23巻第8号(2009年6月号)
引用
- 田丸浩史「ラブやん」,『月刊アフタヌーン』第23巻第8号(2009年6月号),553頁。
- 同前,557頁。
0 件のコメント:
コメントを投稿