2008年1月26日土曜日

月刊アフタヌーン

 昨日いっていました、ささやかながらもめでたいと思える出来事、それは — 、もったいぶらずに端的に書いてしまいましょう。私のひいきにしている漫画家である篠房六郎氏の新連載が、昨日始まったのです。掲載誌は『月刊アフタヌーン』。朝、コンビニ兼書店に『アフタヌーン』を探して、めでたく発見。職場について、朝一番に漫画読みはじめるというのも問題があるから昼まで我慢。読んだのは昼休みのこと、いの一番に篠房六郎の名前を探して、見付けた、『百舌谷さん逆上する』。雑誌中程の掲載、センターカラー、読んで素直に面白かったといえる出来。途中何度か笑いを誘われながら、見事にからみとられていく、そんな実感を得たのでありました。

『百舌谷さん』のために買った『アフタヌーン』。この四十ページのために660円払ってんだ! というのもあんまりですね。実は『アフタヌーン』掲載の漫画には結構楽しみにしているのもあって、ちょっとあげてみましょうか。

意外と少ないな。もっとありそうに思ったんだけどな。ともあれ、楽しみに単行本を買っていた漫画を、連載ペースで読めるようになりました。これはちょっと嬉しいことだなあ。それに、今はよく知らない漫画であっても、いずれ馴染んでいくだろう。そうしたなかに、好きだといえる漫画も現れるだろう、そうしたことを期待しているところであります。

さて、『百舌谷さん』。まずもってツンデレに驚きです。こうきたか! 巻末の作者インタビューでは「今更ツンデレなんて」みたいなこと、いや、みたいじゃないか、あからさまに「今更ツンデレ」などと書かれてしまって、おー、なんということ。確かにツンデレはブームとしては終わったというか沈静化したというか、今やメインストリームではなくなりました。けど私には『百舌谷さん』におけるツンデレという設定、どう見ても偽装としか思われないのです。

表向きには、ツンデレという萌えの一表現様式を採用したこの漫画、しかしその実を見てみれば、コミュニケーションに困難さを持つ少女を取り巻く劇でしかなく、そんな彼女が他者あるいは普通の人の社会にどのように関わろうとするか、そこが焦点となろうことが予感されます。そして私にはこの漫画が、『ナツノクモ』で篠房が描こうとしていたものに通底するテーマを持っているようにしか思えないのです。『ナツノクモ』では、仮想世界において、どこか病んだ人たちが自分たちの居場所を守ろうと奮闘する、そうした様を描いて、おそろしくエモーショナルでした。パーソナリティ障害やコミュニケーション障害と言い切ってよいものか迷いますが、ある種そうした傾向を持つ人たちが、なんらかの救いを得ようと、ただ与えられるのを待つのではなく、自ら戦いの場に身を投じ、もがきあがいていた。その姿がとにもかくにも心を打ったのですね。

『百舌谷さん』においては、今後どういう方向に向かうか、それはもちろんまだわからんといったところなのですが、けれど第1回目を読んだかぎりでは、そうした精神面への掘り下げめいた動きがあるのではないか。ものすごく期待できる始まりでありました。ヒロイン百舌谷小音はあらゆる点で秀でた女の子です。知性においても身体においても恵まれ、その上に美しく魅力的、さらに加えて育ちまでいい? なにその完璧超人設定! であるのに、ツンデレという障碍を持っているというただ一点で、苦しみにまみれる人生を生きることを余儀なくされている。彼女のその設定は、ツンデレではないけれど脳に器質性障碍を持つ私には、またかつてこのようなことを書いた私には他人事ではありません。だからこれから百舌谷さんがどのように疾走していくのか、それが楽しみで仕方ないのです。

あ、そうそう。『ナツノクモ』第8巻は1月30日発売です。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

篠房六郎さんの新しい連載が始まるのですね、よかったなあ。もしかしてもう見れないんじゃ...。と言う不安がちょっとだけあったものですから。
私の場合、あまり連載誌までは追っかけてないので情報はありがたいです。

ナツノクモも出るんですね、うーん楽しみだなあ。終わっちゃったのは残念でもあるけど。

matsuyuki さんのコメント...

返事書いたつもりで、まだ書いてませんでした。遅れまして申し訳ないです。

情報がお役に立ちましたようでよかったです。少なくとも最後の一文は、yujirocketsさんに向けられたものでした。というわけで、発売当日になってしまいましたね。

『百舌谷さん逆上する』、いったいどういう方向に向かおうとするのか、それはまだわかりませんけれど、なんか期待してしまう、そんな感じの第一話でした。先が非常に楽しみです。