2008年1月11日金曜日

ネコ式生活

 私は猫は好きなんだけど、自分で飼おうとは思いません。だって、あいつら自分勝手そうだし、多分私の自分勝手と力いっぱいぶつかると思うんですよね。たとえばギターで爪を研いだりさ、あるいは何本となく屹立している本の塔を、牛若丸よろしく点々と飛び乗りながら次々崩していったりして、そうなると心穏やかに共存できそうにない。もう毎日が大決戦ですよ。戦いの果てに友情が芽生えるならまだしも、おそらくは余裕綽綽の奴らに歯噛みする毎日。きーっ、くやしーっ。とまあ、こんな風に心の狭い私に飼われる猫も不幸でしょう。なので私は猫を飼わないのです。でも、こういう猫漫画読んでたら、やっぱり猫がいたりすると暮しは楽しくなりそうだなあと思えてきて、危ないですね。ええ、すごく危ないです。

私は『ネコ式生活』を、はじめ実録であると勘違いしていたのです。主人公夫妻、マキちゃん、カズくんをなぜか作者夫妻と思い込んでいて、途中であれ違うのかと気付いて、けれどそんな思い違いしたのは、登場する猫三匹があんまりにも実在しそう感にあふれたナイスキャラクターだったからだと思います。

雑種のニャソさんを筆頭に、ロシアンブルーのムームーさん、アビシニアンのガッツと続く、これら個性的な猫たち。そのどれもがマイペースなのだけれど、マイペースにも質の違いがあるんだなあというのがわかるといいますか、ひたすらのんびりとしたマイペースもあれば、人の迷惑かえりみず気ままにやっちゃうマイペースもあって、そうした性格の違いがくっきりとしているところとか、そうかと思うと三匹ともに飼い主を、軽視するわけではないけれど、そっけなく扱っちゃったりするその加減がね、実際の猫を観察して描いたようにしか思えなかったわけなのですよ。

猫たちが生き生きしている、そこがいいんです。擬人化されるわけでもなく、ただただ猫であり続ける彼らの、個性際立つしぐさや性質の描写。それがもうどうしようもなく面白くて、類型の猫らしい猫を描きましたってんじゃなくて、それぞれの猫を描きました。三匹ともに変な猫です、けれどこんな猫なんです。そんな声が聞こえてくるようで、それになにより本当に彼ら三匹がこの地上のどこかで、マイペースの、のんびりであったり、むっむっむっであったり、ドドドドドであったり、そんな毎日を過ごしてるんじゃないかと思えてきて、なんか楽しい、ほほ笑ましい。会えるもんなら、こいつらに会ってみたいなあと、そんなこと考えてしまうくらい、参っています。

  • めで鯛『ネコ式生活』第1巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2008年。
  • 以下続刊

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