2007年9月14日金曜日

パニクリぐらし☆

  私はつくづく驚くのですが、このBlog、こんだけ手当たり次第に書き散らしているというのに、まだ書いてない漫画があったというのです。藤凪かおるの『パニクリぐらし☆』。『Boy’sたいむ』で書いて、『ひめくらす』でも書いて、そして『サクラ満開!!あかり組』でも書いたというのに、『パニクリぐらし☆』では書いてなかった。わお、すごく意外。なにをおいても書いてそうに思ったのですが、それをあえてしなかったのは、2巻の出るのは間違いあるまいと踏んでいたからなのかも知れません。

そして、めでたく第2巻が発売されました。『パニクリぐらし☆』は『まんがタイムラブリー』連載で、人気あるんでしょうね。表紙で、巻頭掲載で、けれどそれもさもありなんと思える内容の充実。兄一人、弟二人、妹一人、犬一匹の貧乏暮らし。そこに会社の同僚長瀬さんが加わっての、ちょい人情、ちょいどたばた、そしてちょい恋愛がにまにまと楽しい漫画です。

貧しいながらも楽しい我が家。恋愛には不器用なのに、家事節約に関してはむやみに有能な兄貴の存在が漫画の基本性格を決定している、と思うんですが — 、楠一志、派手さに欠けた男です。朴訥として真面目で善良で、家族第一の地味な男です。けどそのこつこつと家族のために働き、家事を引き受ける兄貴が、生き生きとしているのが読んでていいなあと思えます。たまには、というかわりかし失敗しているけれど、そうした完璧でないところ、むしろどことなくのんびりとして抜けているというのも長所でしょう。本当、すごくいい男。いや、二枚目っていってるんじゃなくて(二枚目は弟泰二のポジションです)、心根のいい男っていったらいいですかね、粗忽だけど。こんな男だからこそ、長瀬さんとうまくいってくれたらいいなと思うし、弟妹たちに慕われてるのもわかるわって思うわけでして、この人のよさがまったく漫画のよさに繋がっているのだと、そんなこと思うのです。

人のいい兄貴に、長瀬さんと妹みつきという魅力的な女性キャラクターが関わって、まあ弟二人は割り食わされちゃってるわけですが(征四郎とか地味に輪をかけて地味になっちゃって……)、この二人の女性がそれぞれに違ったよさを持っているのも人気の理由かなと思っています。ちょっとお姉さんで、しっかりしてるんだけど、決して理想的すぎない生身っぽさのある、ほら、長瀬さんってへそ曲げちゃったり見栄張ったりするでしょう。そういう自然なところはいいですよ。実質を見抜く落ち着きがあるといったら言い過ぎか、確かによくできたお嬢さんなんだけど、作者が女性だから? お人形さんじゃないし、女神でも天使でもない、ほんとに生身っぽさがある。まあ、いい人過ぎるとは思うんだけど、それは仕方ない。だってヒロインなんだもの。それに、長瀬さんのこうしたよさがあるから、あの苦労性の兄貴にはこの人がって思えるわけで、本当、いい感じの二人だと思うんです。

ちょっと余談だけど、長瀬さんを意識している兄貴は、みんなから鈍いだなんて思われてますけどね、もしかしたら相手の好意にもしっかり気付きながら、あえて距離おいてるのかもね。いや、作者がそう考えてるかどうかはわかんないんだけど、自分だったらそう読みたいなあなんて思う。ちょっと邪推妄想が過ぎるとは思うけど、あの兄貴ならそういう変な気のまわし方しそうな気がする、なんて思ってます。

『ひめくらす』だと、葵と直江がうまくいったりしたら終了だなんて、そんな不遇がありますけれど、この漫画に関しては、兄貴と長瀬さんがうまくいっても、それはそれでちょっと違った家族ものとして続いていけそうな気がします。兄貴と長瀬さんだけでなく、妹みつきも、それに二人の弟にしても、なんだか放っておけない感じで、だから彼らの物語があってもいいかなって。けど、今はまだ兄貴中心で読んでいきたい。兄貴と長瀬さんの、付かず離れずのそういう間柄を見ていたいだなんて思います。

  • 藤凪かおる『パニクリぐらし☆』第1巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2006年。
  • 藤凪かおる『パニクリぐらし☆』第2巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2007年。
  • 以下続刊

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